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<リピウス、引き籠る>

例の渋谷事件から二日後。デュークとヨルダ爺がリピウスの家を訪れた。


「おーい! 来てやったぞ。今日はヨルダ爺も一緒だぞ」

相変わらず能天気な声を上げながら、デュークが入ってきた。

だが、リピウスはいつもの小机の前にはおらず、テーブルの席に座って、ぼんやりとコーヒーを眺めていた。


リピウスに代わって、メイが二人を迎え入れた。

「いらっしゃいませ。どうぞこちらへお越しください」

そう言って二人をテーブル席へと誘う間も、リピウスは生気のない目をして、ボーっとしたままである。


「おやおや、リピウスはどうしたんじゃ?」

ヨルダ爺の声にも反応しない。ヨルダ爺は怪訝に思い、メイさんの方に目を向けた。


「すみません。ご主人様は先日ショックなことがあったようで、憔悴しきっているのです」

メイさんは申し訳なさそうな表情を浮かべている。

「え? ショックなことって何なんだ?」

デュークも、いつもとは全く違う様子のリピウスに戸惑い始めた。


リピウスは、先日の渋谷での出来事から完全には立ち直れていなかった。

あの日以来、ろくに眠ることもできず、翌日になっても渋谷交差点の光景が頭にこびりついて離れない。思い出すたびに恐怖が沸き起こり、心が休まる暇がない状態だった。

疲れ切ってしまった彼は、今日になってもボーっとしたままで、メイさんが出す飲み物や軽い食事を口にするのがやっとだったのである。


流石にヨルダ爺も心配になり、デュークと二人で優しい言葉をかけながら、何があったのかを聞き出そうとした。

メイさんは二人にコーヒーとお茶菓子を出すと、邪魔にならないようにいつものディメンション・ルームへと引き上げていった。


* * *


ヨルダたちが来てから一時間近くが過ぎた頃。

ようやくリピウスが反応を見せ、先日の出来事をポツリポツリと話し始めた。


だが、話し始めるとあの時の衝撃を思い出してしまうのか、何度も身震いしては話が中断してしまう。

二人は粘り強く彼を慰めながら話を聞き出し、ようやく何が起こったのかの概略を把握した。


「なるほどのう……。異様な三人組と出会い、心が怯えて逃げ出して来たというわけじゃな?」

ヨルダ爺が念のために確認すると、リピウスは小さく頷いた。だが、すぐにまた何かを思い出すのか、自分の両手を体に巻き付けて不安そうな表情になってしまう。


リピウスはメイさんを呼び、先日渋谷でドローンが撮影した映像を二人に見せるよう頼んだ。

映像はノートPCに保存されており、三人の姿が鮮明に映し出されていた。


「へぇ~、日本人じゃないな。外国からの旅行者か?」

デュークは物珍しそうに映像を覗き込んだ。

ヨルダ爺は興味を抱いたようで、熱心に映像を見つめていたが、やがてポツリと漏らした。

「このシルクハットの男は、どこかで見たような……」

何かを必死に思い出そうとしている様子だった。


「確かに、変な感じがするな。この映像を見るだけでも、なんだか不快な感じがしてくるぜ」

映像を見ていたデュークも、徐々に顔をしかめ始めた。

リピウスは一切、映像を見ようとしない。今はとにかく、渋谷のことは忘れたかった。


ヨルダ爺がこの動画を借りたいと言うので、リピウスは動画をUSBメモリにコピーして手渡した。

その後、渋谷に関する話題を一切出さずに過ごすと、リピウスの顔にもようやく生気が戻ってきたようだった。

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