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<天界から戻って>

システム管理センターを出た後、再びワープドームに戻った3人。ヨルダはリピウスを連れて行動することを告げ、ジンと別れてワープゲートへと消えていった。


残されたジンは、一人で管理センター内でのやり取りを思い出し、感心していた。

「それにしても、リピウスという男は不思議な男だったな。どこの異世界の住人なのだろうか。老師に対して『ヨルダ爺』とタメ口を利いているのだから、余程古くからの親しい友人なのだろう。しかしシステムに関する知識は凄まじいものだった。やはり天才というものは、どこかがぶっ飛んでいるものなのだな」


その後、ふと何かを思い出したのか。

「そうだ。嘉助も心配しているだろうから、ちょっと報告でもしておくか」

そう言って、ジンもワープゲートをくぐって姿を消した。


* * *


ジンが嘉助の事務所に入ると、嘉助と杏子が待ち構えていた。

「ようジン。どうだった?」

杏子がいつもの気安い感じで、早速声をかけてきた。


「老師は一緒じゃないのかい?」

嘉助の問いに、ジンはソファーに腰を下ろしながら答える。

「ああ、向こうで別れたよ。ほら、客人も一緒だったからな」

「おっとそうだったねぇ。で、話は上手く行ったのかな?」

嘉助が一番気になっていることを尋ねた。


「うむ。200年問題の原因が人間界管理システムにありそうだというところまでは、ほぼ判明したよ」

ジンの言葉に、嘉助と杏子が身を乗り出した。

「本当かい? 問題は解決しそうなのかい?」


「いや、そこまではまだ何とも言えないね。ただ同行した老師のご友人が、管理センターのエンジニアたちを問い詰めて、最終的には自分たちの責任で原因究明を早急に行うと確約させたのだ。まあ、トドメはヨルダ老師の言葉で所長が撃沈していたがね」


ジンの言葉に、嘉助と杏子は顔を見合わせた。その表情は少し和んだようにも見える。

「嘉助! 上手く行けば、こっちで変な調査をしなくて済みそうだな」

杏子の言葉に嘉助も頷いた。


「老師のお客人というのは、それほどの大物だったのかい?」

嘉助と杏子はますます興味を惹かれたようで、再び身を乗り出してジンを見つめた。

ところがジンは何かを思い出したように、「クスッ」と笑い出すと、説明を始めた。


「いやぁ……。俺も色々な世界を見てきたけど、今日お会いした老師の友人ほど変わったお人は初めてだったよ。とにかく今まで見たこともない奇抜な『民族衣装』を着ているし、行動も読めない。何を言い出すかも見当がつかない不思議なお方なんだ」


「ほう。宇宙中の異世界を渡り歩いてきたジンが、見たことのない民族だと?」

「本当だね。今までだって随分と変わった連中とも関わってきたんじゃないか?」


「いや、今回のは別格だよ。ちょっと待ってろ。今、老師の友人の映像を送るから」


そう言うと、ジンはこめかみ辺りに人差し指を当てて、軽く指先を動かした。

ジンが見た映像を切り出し、そのイメージを念話で二人に送信したのだ。


二人は映像を受け取ると、同時に吹き出した。

「おいおいおい……これは民族衣装じゃないぞ!」

大笑いしながら、杏子が苦しそうにジンに言う。


「ははは! 全くだね。ジンよ、お前は老師にからかわれたんじゃないのか? しかも『へたれTシャツ』って、最高のセンスだな!」

嘉助も笑いが堪えられないようで、お腹を抱えながら話している。


「え??? 民族衣装じゃない? からかわれているって、どういう意味だい?」

ジンは意味が分からず、何を笑われているのかも見当がつかずに戸惑っている。


少しの間、嘉助と杏子は笑い続けていたが、ようやく少し落ち着いたのか、嘉助が説明しだした。

「あのなジン。老師のご友人が着ているのは民族衣装じゃなくて、日本の一部で着られている、一種のファッションなんだよ」

「え? 日本のファッション???」

「ああ。確かこれって『アキバ系オタクファッション』とか言うんじゃなかったかい?」

杏子は話しながら、再びツボにハマったのか笑い転げている。


「アキバ系……オタク……?」

まだジンは全くピンときていないようだ。

「ほら、これを見てみろよ」

嘉助はノートパソコンで検索し、その画面をジンに見せた。そこには『アキバ系オタク』の画像がいくつも並んでいた。


「あ! これだよ、これ! リピウスという老師のご友人の姿はこれだったよ!」

ジンはノートパソコンを奪うようにして、画像を見つめている。


「だろ。だけど、これで少し老師の最近の行動が分かった気がするねぇ」

嘉助が何やら思い当たる節があるのか、頷きながら説明を続けた。

「いやね、この半年くらいかな? やたらと老師が人間界に来ていたんだよね。以前は人間界になんて、余程のことがない限り来なかったんだけどさ」


「その理由がアキバ系オタクなのかい?」

杏子は合点がいかないようで聞き返した。ジンも同様だ。


「うん、多分ね。老師のご友人が、何かの理由で日本のオタク文化にハマってしまったのではないかと思うのだよ。で、流石に異世界の友人を勝手に人間界に行かせるわけにもいかないから、自分も頻繁に出入りするようになったのではないかな?」


嘉助の説明に、ジンもようやく納得がいったようで軽く頷いた。

「なるほど、なるほど。確かに老師は管理センターでも、随分とご友人を気遣うというか……いや、何かしでかさないように監視しているという感じで、気を掛けていた様子だったよ」


「ふ~ん……。でもさ、その格好で管理センターの連中をギャフンと言わせたんだろ?」

杏子の問いに、ジンは首を振りながら答えた。

「そうなんだよ。システムの話になった途端、突然人が変わったように賢者の風格を漂わせ始めてね。それ以降は、向こうのエンジニアたちの言い分を、バッサバッサと切り捨てながら理詰めで追い込んでいくのだ。それは見ていても爽快なくらいだったよ」


「ほぉ~! それは意外な展開だねぇ」

「なんか、この姿を見ると信じられないんだけどね。でもジンが言うのだから、そうなんだろうな」

嘉助と杏子も、そのギャップに驚いていた。


「ああ、そうなんだ。そして老師のトドメの一言で、管理センターは自主的に早期解決を目指してシステムチェックを開始すると約束したのだよ。速攻で同席していたエンジニアたちは、我々が帰る前に会議室を飛び出して、作業を始めたくらいだからね」


「ふ~ん……。老師がそんなことするなんて意外だねぇ。今までは何があっても、あまり関わらないようにしていたからね」

「そうだね。今回同席させてもらって、俺も老師の対応には正直驚いたよ」

「まあ、それもこれも、もしかしたらご友人の影響なのかもしれないねぇ」


「俺もね、最初はご友人を単なる奇人と思っていたのだけど……。最後はやはり老師のご友人であり、類稀な賢人なのだと納得したよ」

「ほぉ~……。ジンがそこまで感じたのなら、やはり賢人なのだろうね。いや、確かに何かに秀でたお人は、それ以外では奇行を行う変人の場合も多いからね。ご友人もシステムに関しては天才だが、それ以外の面では常識外れの変人気質があるのかもしれないねぇ」


嘉助の言葉がまとめのように響き、杏子もジンも納得の結論に至った。


* * *


その頃、リピウスを伴って戻ってきたヨルダ爺は、デュークと合流。メイが用意してくれたケーキとコーヒーを楽しみながら、管理センターでの武勇伝に花を咲かせていた。


「やっぱりリピウスは、天才的な変人だな。おいらは分かっていたけどな!」

そう言うデュークに、ヨルダ爺も心から愉快そうであった。


ちなみに、霊界へ行くために追加で借りた義体だが、「メイの予備」として引き続きリピウスが借りることになった。以前のように家の周りを少し出歩く時の「老人変身用」として、普段は老人の姿にして待機させてある。

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