<霊界の悪巧み仲間>
学園長からの呼び出しで、早速嘉助が霊界学園内の学長室に入ると、既にメンバーが集合していた。
その顔触れは、ヨルダ老師、幽界の閻魔、霊界学園の学園長、天界評議会議員のゼルといういつものメンバーに加え、今日はハンター協会会長と霊界警備隊隊長、さらには聖騎士団団長まで揃っていた。
「よ! 人間界で大変な大演説をぶった直後に悪いな」
学園長が少し皮肉っぽい口調で嘉助に声を掛けた。
「嫌だな……。もうその話を肴にしているのですか? 全くあなた達は本当に油断も隙もありませんね」
嘉助は頭を掻きながら席に着いた。
「フォッフォッフォ。どうせ演説後にリピウスにでも手厳しくやられたのではないかの?」
ヨルダ老師はお見通しとばかりに追い打ちを掛けた。
「はいはい。全くその通りですよ。皮肉たっぷりに揶揄われましたよ。既に老師はリピウスから助言も貰っていたそうですね」
嘉助は「演説をする前に言ってほしかった」と、暗に老師に目で訴えた。
「いやいや、わしも昨日、霊界の対応状況をリピウスに話した際に、奴から指摘されたばかりでな。それで先ほど学園長にも相談したところ、こうして緊急会合を開こうという事になったんじゃよ」
ヨルダも寝耳に水の話だったと弁明した。
「まあ、それは良いのですが、これからどうするか? ですよね」
嘉助が学園長に問いかけた。
「そう。その事だが、老師から聞いた話では、嘉助は各国首脳との交渉に関して方向を変え、再度協力を依頼するだろうという事だったが、その点はどうかな?」
「はい。これは近々、再度各国に利害を説きながら、利益誘導的な方向で協力を呼び掛けるつもりです。恐らく今度は乗ってくるのではないかと思います。私の演説効果も期待できますしね。霊界が全面支援に動くなら、彼らには『美味しい話』としか聞こえなくなるでしょうからね」
嘉助はニヤリと悪い顔をして言う。
「ふん。嘉助らしくなったではないか。どうも最近は真面目過ぎて、お前らしくないと思っていたのだがね」
学園長も同様に悪い顔になってきたようだ。
「ところで、以前言っていた『ダーズリー卿が魔導兵器を導入する可能性』については、その後何か進展はあったのかな?」
閻魔が少し身を乗り出して聞いてきた。
「そうそう、それは私も気にしていたのです」
聖騎士団の団長の声に、他の者達も同意を示した。
「その点に関しては、まだ進展がないのです。C国内の軍関連施設、あるいは軍事工場などで製造しているのでは? と探ってはいるのですが、まだ存在は確認できていません」
嘉助が少し苦しそうに報告した。
「じゃが、こちらの『霊昌石』を使った防御装置などは、進展があったのでは?」
ヨルダの声に、嘉助は頷きながら報告した。
「これは以前、ジンの活躍もあって人間界で巨大な霊昌石の鉱床も見つけましたし、その後はとある国の協力から、ある程度必要量の供給も得られることになりました。防御盾の製造は既に始まっています。ただ、霊力を封入する要員が不足しているので、その辺の強化をしたいのですが……公式には募れませんからね」
「となると、やはり天界への働きかけということになるか……」
閻魔が顎髭を捻りながら考え込んだ。
「それに関してですが、老師から先ほど聞いたのですが、『四仙会の企みが3馬鹿へ伝わるようにして、3馬鹿が、下手をすると自分達の権力基盤を侵しかねないと思わせ、四仙会の動きを封じさせる』という話でしたが……」
評議会議員のゼルが皆の顔を見回し、確認するように発言した。
「リピウスは、そのように利権好きな3馬鹿を煽って、四仙会の企みを邪魔させる方向へ誘導するのが一番合理的と言っていました」
嘉助はそう言うと、老師の方を見て同意を求めた。
「その通りじゃな。じゃが、これはリピウスの話では『諸刃の剣』にもなりかねんとも言っておったよ」
「諸刃の剣ですか?」
「うむ。下手な煽り方をすると、四仙会に取って代わって、3馬鹿がダーズリー卿を利用して人間界関連の利権を独占しようと動いてしまう可能性もあるからのう」
老師の言葉に、集まった者達も唸ってしまった。誰もが「あの利権に聡い3馬鹿ならやりかねない」と思っているようだ。
「なるほど。確かに……。その点はリピウスは何か言っていましたか?」
嘉助も考え込みながら、老師に助けを請うた。
「リピウスも3馬鹿のことは、わしからの話しか知らんからのう。まあ『悪魔に支配させれば人間界は四仙会が望むようにはならず、早々にも絶滅の道へ進むだろう』と言っておったな。それは今の人間界が消滅するという事で、3馬鹿にとっては大きな利権を失いかねない事態にもなり得ると言っておったよ。わしもそれに関しては同感じゃな」
老師の言葉を、参加した全員が噛みしめながら思案していた。
「なるほどな。私はリピウスというものには会った事はないが、ジンから聞いた通りで、中々食えない策士のようだな」
ハンター協会の会長が感心したように発言した。警備隊長と聖騎士団長も頷いて同意を示す。
「ちょっとこじ付けにはなりそうですが、その辺を突くのが現実的というのは確かでしょうね」
ゼルも同意したようだ。
「そうそう、もう一つ言っておったな。今回の件で『幽界と霊界学園に貸を作れる』と言えば、それも効果的とは言っておったよ。まあ、閻魔と学園長には有難くない話じゃろうがな」
老師の言葉に、閻魔と学園長が思わず顔を見合わせた。
「う、オホン! ま、まあ面白くはないが、そんな程度で3馬鹿が動くならそれも止むを得んだろうな。のう閻魔よ」
ひとつ軽い咳払いをし、学園長は了承の意を示した。隣で閻魔も大きく頷いている。
「では一つの方向性が見えましたので、今の話を元に、再度私の方で3馬鹿へも入れ知恵をしながら、四仙会潰しの方向へ誘導を試みてみます」
ゼルは頭の中を整理するように、ゆっくりと話を結んだ。
「すまんなゼル。そして会長も隊長も団長も、事が進んだら速やかに行動できるように、今から支援体制づくりをよろしくお願いしますよ」
学園長が改めて協力を依頼した。ここにいる誰も異論はなかった。
こうして嘉助は、リピウスには揶揄われたものの、彼のおかげで例の大演説も「大嘘つき」にならずに済みそうだと、少し心も軽くなった思いだった。




