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<メイさんだけどメイさんじゃ無い>

紫音と佐藤君は真美ちゃんにも手伝ってもらい、舞とジャネットをメイさんから引き離して、コーヒーを一口飲ませたりして少し落ち着かせた。

その上で紫音は、

「さあ、これで良いでしょ。ちゃんと説明してよね」

と言ってリピウスを促した。


リピウスは首を振りながら説明を始めた。


「あのね、メイさんは元々義体だからね。家に戻れば予備機もあるから、今は予備機に入ってもらっているのだよ。あの時の義体は今も霊界で修理中でね、損傷がかなり激しかったから、まだ1ヶ月はかかりそうなんだけどね」


そこまで言うと、ジャネットが聞いてきた。


「じゃあメイさんの魂は大丈夫だったの? 私と同様に義体交換だけで、元に戻ったと言う事?」


ジャネットはこの中で唯一、メイさんがリピウスの作ったアンドロイドだということを知らなかった。

最も他の者達も、嘉助からはリピウスが作った『疑似霊魂』で義体は動いているとだけしか説明を受けていないので、正確には理解しているとは言えなかったが。


「そうか、ジャネットは聞いていなかったね。メイさんは霊界人が入っていた訳では無いからね。俺が作った『疑似霊魂』を霊魂の代わりに入れ込んで動かしているんだよ。だから、まあ義体交換だけで元に戻ると言えば、戻ると言う事なんだけどさ」


「ねえリピウス。まだ何か隠しているわよね。リピウスの今の説明の割には、メイさんの反応がおかしいのだけど……」


相変わらず紫音の指摘は鋭かった。


「ま、まあね……あー! もう説明するよ。『疑似霊魂』には記憶領域が無いのだよ。メイさんの記憶は義体に搭載したメモリーに蓄えられているんだ。だから義体の損傷が激しかったので、あの時の『疑似霊魂』と『記憶メモリー』は消えてしまったんだよ」


「え〜!!!」


「じゃあ、じゃあ、やっぱりメイさんはあの時死んでしまったの? 私達を守るために、メイさんは自分を犠牲にして死んでしまったのね……」


再び舞は泣き始めてしまった。


「嫌〜……メイさんが死んでしまったなんて……」

ジャネットも泣き出してしまった。


紫音とリピウスは顔を見合わせ、やれやれと軽く手を広げて首を振った。

実に紫音とリピウスが、珍しく同調した瞬間であった。


その後もまた少し落ち着かせる時間を置いてから、リピウスは再度説明した。


「あのね、『疑似霊魂』も『記憶メモリー』も、メイさんは毎日寝る前にバックアップしているから、一旦消去されても1日前の状態にはいつでも復帰できるのだよ。勿論同じタイプの予備の義体は必要だけどね」


「ん? 1日前の状態???」

舞とジャネットが、不思議な物を見るようにメイさんを見つめている。


「まあ正確に言うと、前の日の状態+多分あの広場が通信禁止の結界が張られる直前までの記憶の一部だね。全てでは無いけど、ある程度はセバスチャンと記憶共有をしていたから、セバスから記憶は補完させているのでね」


どうも紫音以外は、説明を聞いてもピンときていないようであった。


「ふ〜ん……。つまり、一番メイさんが酷い目に遭っていた時の記憶は無いと言う事?」

紫音がざっくりと整理した。


「そうそう。だからメイさんは、舞とジャネットに謝られても、その時点の記憶だけ消えているんだよ。うん、部分的な記憶喪失だと思って欲しいな」


リピウスは妙に嬉しそうに補足説明した。その説明を聞いて、何故か舞とジャネットは腹が立ってきたようだ。


「ちょっとリピウス。何よその言い方は。メイさんの大切な記憶が失われて、貴方は何故ヘラヘラしているのよ!」


舞が言う。その横で紫音も大きく頷いている。更には真美ちゃんも佐藤君も、ジャネットまで同意を示していた。一瞬でリピウスは全員を敵に回してしまったようだ。


「いやいやいや、別にヘラヘラした訳じゃ無いよ。紫音が適切に補足してくれたから、それが嬉しくて、つい笑顔になってしまっただけだから」


リピウスは慌てて弁解したが、それがますます火に油だったようだ。


「あら、私を巻き込まないでくれる? 私は貴方の為にみんなに説明したのよ。それをあなたの不注意な行動まで私のせいにされたんじゃ、堪らないわよ!」


紫音がいつもの通りに文句を言って来た。

(なんだよこいつ。さっきは初めて分かり合えたと思ったのに……)

と内心リピウスは思いながらも、悟られないように真剣な表情を保っていた。


「リピウスさん。あなたはメイさんの獅子奮迅の活躍を見ていないから、メイさんの献身的な行動を見ていないから、そんな事が言えるのですよデス!」


ジャネットが少し変な言葉遣いになっているが、彼女も怒っているのであろうから、ここで変な突っ込みは厳禁とリピウスは抑えた。


「だけどさ、メイさんにとっては最もつらい部分の記憶なんだぜ……。だからさ……」

そう言いながらも、メイさんの前ではそれ以上は言えないリピウスであった。


すると突然、メイさんが口を開いた。


「私は少しですが、覚えています。あの時、舞さん達を守りきれたか? ご主人様に聞くと、ご主人様は優しく私の頭を撫でて、『よく頑張ったねメイ。みんな無事に守りきれたよ』と言ってくださいました。私はその優しい言葉を生涯忘れません」


その言葉に、舞とジャネットは再び大声を出して泣き出した。

さらに真美ちゃんももらい泣きを始め、紫音までもがメイさんの言葉には感極まってしまい、珍しく少し声を上げて泣いていた。


当然、周りに流されやすい佐藤君も「グスッグスッ」と鼻をすすりながら涙を流し始めてしまった。


そしてリピウスも、流石に今のメイさんの言葉には心を打たれ、あの最後の場面を思い出しながら、薄っすらと涙を滲ませていた。

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