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<ダーズリー卿の誤算>

ここはダーズリー卿の本拠地。ここでも激震が走っていた。


「ダーズリー卿様! 今の気配を感じましたか?」

ティモラが慌てたように広間に入ってきた。


ダーズリー卿はその問いには答えず、鋭い怒気を含んだ眼で中空を睨みつけたまま微動だにしない。


そこにソルダーとガードナー、凛玲までやってきた。

「おいティモラ、御剣がやられたってのは本当なのか?」

訓練所でいきなりティモラが御剣の消失を言い出したため、慌ててガードナーも戻って来たのであった。


「嘘だろう? デミトリはどうしたんだよ。確か一緒だったんだろ?」

ソルダーも何かを感じ取ったようで、心配になり確認しに来たようだった。


「私には何も感じられませんでしたが、ソルダーに聞いて飛んできたんです」

凛玲も心配そうにしている。


「しっ! 静かにして。ダーズリー卿様の御前だよ」

ティモラの声に、今入ってきた3人は沈黙した。そのままじっとダーズリー卿の言葉を待っていると、彼はゆっくりと視線を戻して皆の顔を見回した。


「ふぅ~……。詳しい事は分からんが、どうやら御剣とデミトリは消滅したようだな」


静かな口調ながら、その内容は全員に衝撃を走らせた。


「ふ、二人とも消滅???」

「まさか、まさかそんな事が……」

「御剣君が消滅? いやよ、そんな事あり得ないわよ」


「静かにおし! まずはダーズリー卿様のお考えをお聞きするのだ」

再びティモラの声が皆を制した。


しばしの沈黙の後、ダーズリー卿はティモラに質問した。

「で、今回の実戦テストに関しては、どうだったのかね?」


「はっ! 今回は日本を含めて5チームを派遣して、その活動状況を確認しましたが、デミトリのチーム以外に関しては、当初の計画をも上回る成果が見られたと考えております」

ティモラはある意味、ダーズリー卿の叱責を覚悟しながら、恐る恐る報告した。


「うむ。チーム活動は上手く機能したと言う事で良いのだな?」


「はい。攪乱を目的とした場合、1チームで各国の特犯部隊だけではなく、ERIの戦力もそれぞれに分散して対処しており、しかもおおよそ8時間以上は彼らを引き付けていました。これは十分な成果と言えるかと」


ティモラの報告に、意外にもダーズリー卿は静かに頷くだけで、特に叱責の声を上げる様子はなかった。


「でだ……デミトリだな。確か悪魔チームの他、御剣と魔界衆も同行させたのだったな」


「はい。魔界衆の4人も同行しております」


「ふむ……何か途中報告はなかったのかな?」


「は、はい。一度だけ、ターゲットの舞と言う協力者の特犯チームを上手く罠に誘い込んだと連絡が有りました。ですが、それ以降は連絡は……」


「無くなったと言う事か? 魔界衆からの報告も無いのか?」


「はい」

ティモラは冷や汗が止まらなくなっている。


「では、日本で何が起こったのか、我々は何も知ることができないと言う事だな?」


ダーズリー卿の声が強くなり、その場にいた全員が緊張で縮こまってしまった。


少しの沈黙の後、ダーズリー卿は再び静かな口調に戻った。


「分かった。ティモラはご苦労だったな。今後も予定戦力の確保を急ぎなさい。そろそろ我々も本格的に仕掛ける時期に来ていると言う事だからな。できれば貴族クラスの増員が欲しいが、それは難しいかな?」


「は、はい。今色々と条件を変えて試してはおりますが、将校クラスまでは発生率をだいぶ上げられるようにはなったのですが、貴族クラスはまだ発生が見られておりません」


「良い良い。無理を承知で言っているのだよ。今までも200年に1人か2人しか生まれてこなかったのだからな。今回もすでに2人は生まれている。そうそう増えるものでも無いからな」


次にダーズリー卿はソルダーを見て問うた。

「ソルダー、魔導兵器の準備状況はどうだ?」


「は、はい。おかげさまで新たな魔界衆の合流で、魔界の良質な魔晶石も入荷しましたし、ティモラからも純度を上げた魔晶石の供給がようやく軌道に乗ってきましたので、今は量産体制に入っています」


「そうか……これからも成果を期待しているぞ」


ダーズリー卿はそこで一旦話を区切り、少し考えていたが、やがて顔を上げた。


「今回のデミトリの件は、私の方で人間界と天界から情報を集めてみようと思う。私の勘ではあるが、今回もリピウスが関与している気がするのだ」


「そうですね。元々今回のターゲットは、リピウスをおびき出して始末する事でしたからね。ただ、一番の脅威と思っていた杏子とセバスチャンと言う男は、両者ともイタリアとブラジルに分散させており、今回の日本の事件には関与していない事は確認済みです。そう考えると、この両名以外に御剣とデミトリに対応できる者が居ると言う事になってしまいますね」


「うむ。その辺も含めて探ってみる事にしよう。今後本格的に動き出すには、それらを把握しておかなくてはならないだろうからな」


そこでダーズリー卿はまた言葉を切って、テーブルの上のグラスに、お気に入りのスコッチを注ぎ飲み始めた。

これは皆に、この話は終わったと告げる所作である。その事をわきまえている4人も、それぞれ元の活動場所へと戻っていった。

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