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<探索完了>

リピウスは一旦洞窟の探索を中断したが、このまま放置する訳にもいかないので、また再開する事にした。

(小会議室では内容的にヤバいな……作業場所は移動しよう)


そう考えて、メイさんとセバスがいつも作業しているネット作業用のディメンション・ルームへと機材を移動させた。そして、探索に関しては全てセバスチャンに丸投げしてしまった。


セバスチャンはリピウスの指示であるから、一も二も無く「了解しました」と引き受けると、無表情のまま機械的に洞窟探索を再開してくれた。


リピウスは、(すまんセバス! 俺のメンタルでは、この仕事は無理なんだ)と心の中でセバスを拝んでいた。


セバスチャンは早くも翌日には探索を完了させ、嘉助とリピウスに報告書を提出した。

その内容を、リピウスは嘉助の事務所で一緒に確認する事にした。


同席したのは、嘉助、杏子、清君とリピウス、ヨルダ爺の5名である。

内容は凄惨を極めるため、監視員でも限られたメンバーに限定したかった。デュークも一応参加を検討したが、ヨルダ爺が「怖がりのあ奴は止めた方が良いじょろ」と言うので外れてもらった。まあ、出たがりのジャネットを引き受けてもらう意味も少しあったのだが。


「これは……」


セバスの報告内容は、洞窟内の様子を幾つかの要素に区分けして、それぞれに対応した映像と説明書きが添えられたものであった。

拷問をして悪魔化させる人体実験、下級悪魔が死人の肉を漁っている姿……凄惨な場面が多いため、流石に霊界人でもまともには見られなかった。


他にも、魔晶石を合成する装置らしきものも映っていた。生成した魔晶石に中級悪魔らしき者達が魔力を注いでいる場面もあり、それらは恐らく魔晶石に機能を封入している様子だと思われた。


「なるほどね。ここで各種装置の心臓部である魔晶石に機能を封入する作業を行い、実際の組立工程は別の場所で行っているという事だね」

嘉助は、C国で流通している能力無効化装置や霊力探知レーダー、鑑定装置などの絡繰りも概ね把握できたようだった。


「ところで、例の魔導兵器とやらは、ここでも見つかっておらんのかな?」

ヨルダ爺は魔導兵器に関して相当気にかけているようであった。


「残念だけど兵器自体はここには無かったね。でも、大元になる魔晶石と魔力封入作業はこの施設で行っているようだから、ここを叩けば少なくとも魔導兵器の製造はストップできるかもしれないね」

リピウスの答えに、ヨルダ爺は何かを考えている様子だった。


一通り資料を見終えると、嘉助が言った。

「やあ、リピウスご苦労だったね。それにしても良くここまで調べてくれたね。これで少しはダーズリー卿達の企みにも近づけた事だろうよ」


「いやぁ〜当然の事をしたまでですよ」

リピウスは調子よく言いつつも、最後は見るに堪えずにセバスチャンに丸投げした事は黙っていた。もっとも、嘉助もヨルダ爺もその辺は察していたようであるが。


「なあ嘉助、収容所の方は、早急に救出しないと本当にヤバいのではないか?」

杏子が心配そうに訴えた。


「そうだねぇ……どうしたものかね?」

嘉助はリピウスを見つめてきた。どうやら答えをリピウスに押し付けたようだ。


(まったく食えない男だな……)

内心そう思いながらも、リピウスはやむを得ず嘉助の意図を代弁することにした。


「今救出作戦をすると、確実にダーズリー卿は姿を消してしまいますよ。と言うか、もっと不味いのはC国の施設を襲撃するという事になるから、国際問題になってかなりヤバい事になってしまいますよ」


「そうだねぇ。ダーズリー卿の件も国際問題も、我々にとっては致命的な問題だねぇ」

嘉助はリピウスが予想通りに答えてくれたので、満足そうである。


「そうか……それじゃあ、今の時点では手が出せないのだね……そうか……」

杏子は、確実に死を迎える者たちがいるのに何もできない事を、非常に悔しく感じているようだった。


(杏子は根が真面目だから、こういう展開はきついだろうな)

リピウスは辛そうな表情の杏子を見て思っていた。


「まあ杏子の気持ちは分かるけど、これだけではダーズリー卿を倒すには不十分だからね。今回の洞窟はあくまでC国用の研究施設という事で、ダーズリー卿の本拠地ではなかったという事も判明したのだから」

リピウスは杏子を励ますように声をかけながら、これからの最大の課題を示した。


「そうだったね。こんな所で悔やんでいても始まらないね」

杏子は少しリピウスの優しさを感じたようで、再び顔を上げた。


「どうなんだい? また天界の管理センターに協力してもらえば、ダーズリー卿の本拠地も突き止められないかな?」

嘉助がリピウスに問いかけた。


「う〜ん……多分無理だと思うな。管理センターの件も、もしかしたら四仙会が嗅ぎつけていて、既に何らかの手を回しているかもしれないからね」


リピウスが答えると、ヨルダ爺が補足した。

「ふむ。その点は既にリピウスから指摘されておったからの。洞窟発見後すぐに、管理センターには評議会あたりから何か言ってくるかもしれんが、できれば誤魔化しておいてほしいと頼んでおいたよ。その代わり、このような依頼は二度としないとも約束してきたがの」


「そうですね。その方が良いでしょう。四仙会の元には闇ギルドの連中が雇われているようですからね。彼らの情報網も侮れませんよ」

嘉助はヨルダ老師の素早い対応に感心しているようだ。


「ということで、これからどうしますかね?」

リピウスが嘉助に尋ねた。


「そうだねぇ。今回の件でダーズリー卿はC国に深く関わりを持ってしまっている事が確認できた訳だけど、彼自身は収容所にも洞窟の研究施設にもいなかった。やはり、彼が確実に存在している場所を特定しない限り、根本的な解決にはならないということだよね」


「もう突き止める手段は無いのかい?」

杏子が不安そうにリピウスを見つめた。


「う〜ん……難しいよね。本拠地を突き止めるなら配下の上級悪魔を追跡していくしかないけど、彼らも本拠地にはワープ移動するだろうから、単純には追跡もできないしね。当面は所在を確認済みの上級悪魔を監視して、情報収集と本拠地への手がかりを探るくらいかな?」


リピウスの言葉に、嘉助が身を乗り出した。

「え? 所在の分かっている上級悪魔がいるのかい?」


リピウスは小さく頷いて答えた。

「ああ。C国の最高指導者、梁 遠傾リョウ・エンケイ書記長の側近に、凛玲リンレイという若い女性が居るのだが、彼女は確実に上級悪魔だよ」


「え? 書記長の側近に居るのか?」

杏子も驚いている。


「ああ。俺が調べたところでは、5年前くらいから台頭してきた人らしいのだが、3年前には最も書記長に信頼された腹心として、常に行動を共にしているらしいよ」


嘉助の表情が深刻になる。

「ヤバいね。もしかしたら書記長はその女性悪魔に篭絡されて、既に操り人形になっている可能性もありそうだねぇ」


「リピウスの言う通り、当面はその側近の悪魔を徹底的にマークして、情報収集を進める以外にないじゃろうな」

ヨルダ爺の言葉に、その場にいた全員が頷いて納得した。

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