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<ヤバい物を見てしまった>

「さてと……。行ってみますかね」

そう言うとリピウスは、管理センターで計測した地点の座標を元に、パソコンの画面から霊力ドローンを飛ばした。


当然ながら、目的地はジャングルに囲まれた奥地。近隣都市からも遠すぎて直接飛ばす事はできないため、衛星通信経由でダイレクトに座標指定して飛ばす以外になかった。


出現した場所は、周囲をジャングルに囲まれた山岳地帯であった。

実は座標は地下にあったのだが、地下の場合は通信がいきなりは入りきれない。そのため、まずは上空へと出現させたのだ。


リピウスはドローンを下降させながら、通信状態を確認した。

鬱蒼とした木々に囲まれているせいか通信状態が悪そうだったため、リピウスは中継装置を霊力で出現させ、通信を維持できるようにした。


地表まで来るとそこにまた中継装置を設置し、本丸と言える地下へとドローンを侵入させてみた。

およそ100m程地下に降りた時点で、広い洞窟に出た。その場所でも通信状態は維持できていたため、さらに中継装置を設置して下降させると、見覚えのあるゲートが出てきた。

やはり、ワープゲートが設置された場所であった。


その周囲には誰もいないようであったが……。

何とも言えない不気味な声が聞こえてくる。


恐らく誰かが苦しみの声を上げているのだろうが、それにしても断末魔のような凄まじい叫びである。

さらに獣のような唸り声や、ギャーギャーという騒がしい声も聞こえてくる。

リピウスはその声に聞き覚えがあった。下級悪魔たちの声で間違いない。


「やっべ! ここはマジでヤバそうだな……」


そう言いながらも、様々な声が聞こえてくる方向へとドローンを飛ばしていく。

しばらく進むと、洞窟を利用した牢屋のような部屋が並ぶ通路に出た。


中を覗くと、案の定、下級悪魔らしい姿が確認できた。

中には、明らかに人間の体を食べている個体もいる。


(うげ! 見るんじゃなかったな……)

そう思いながらも、一つ一つの部屋を確認せずにはいられず、都度「ウゲッ!」と気持ち悪そうな顔をしていた。

しかし、これがほんの序の口だという事を、この時点ではまだ知らなかった。


そのままさらに奥へと進むと、凄まじい叫び声がさらに大きく響いてくる。

ヤバい、ヤバいと思いながらも、怖いもの見たさも手伝ってそろそろとドローンを進めていくと、通路の突き当たりに鉄の扉が見えた。


リピウスは恐る恐る、その鉄の扉の中にドローンを侵入させた。

その瞬間に、断末魔のような叫びが部屋中に響き渡った。


部屋の中央には人間らしき者が鎖で吊るされており、体中には酷い傷が無数に見え、そこから血が流れ出していた。


(拷問部屋……?)

既にぐったりしている吊るされた人をよく見ると、周囲に薄い膜のような物が見えた。


(あれって、一種の結界じゃないかな?)

リピウスは、恐らく死亡した場合に魂が幽界へ飛ばないよう、結界で捕獲しようとしているのではないかと考えた。

(マジ、こいつらヤバいって……)


周囲には、他にも何人もの姿が見えた。

苦しそうにもがいている者、既に事切れているのか、ピクリとも動かずに横たわっている者……まさに阿鼻叫喚の世界であった。


拷問しているのは風体からして中級悪魔のようだ。人間の体型に近いが、頭や体から角が飛び出している。


しばらく嫌々見ていると、台車を押した下級悪魔が入ってきた。

拷問役の中級悪魔が指示すると、死亡した人間を台車に乗せて運び去っていく。

(これって、さっきの牢屋に持って行って餌にしているのでは?)


もう帰りたくなってきていたが、ここがダーズリー卿の研究施設である事は確かだ。

必死で自分を励まし、探索を続けることにした。


部屋を出ようとした刹那、とんでもない光景が目に飛び込んできた。

鎖に繋がれ瀕死状態だった人間から、呪いの言葉が漏れたのだ。


「グッ……許さない。お前たちを呪ってやる……絶対にお前たちを……」


その直後、人間の体から赤黒い湯気のような物が立ち上り始めた。

体の中央が鈍い光を発し、鎖に縛られた手がズルズルと崩れ落ちる。


その姿は既に原型を失っていた。

グズグズの肉塊の中に醜い顔がついた、まさに化け物の姿。


「グォー!!!」

誕生したばかりの下級悪魔が大きく吠え、異様な魔力が部屋にほとばしった。

それは叫び声を上げながら、近くでもがいている人間に襲いかかると、瞬く間に引き裂いて食べ始めてしまった。


(これか……杏子が言っていた、誕生時に陥る悪魔の飢餓状態というのは……)


リピウスは、とんでもない場所に行き着いてしまったのだと改めて実感した。


さらに奥へと探索を進めようとしたとき、小会議室の扉が開いた。


「あら? リピウスさん来ていたのですね?」

入ってきたのは真美ちゃんであった。

彼女はリピウスが何を見ていたのか興味があるようで、近づいて画面を覗き込んできた。


リピウスは慌てて画面を切り替えた。

「駄目! この映像は真美ちゃんには刺激が強すぎる!」

そう言って、画面を体で覆い隠した。


「まあ!」

真美ちゃんはすぐに両掌で自分の口を覆った。

見ると、顔を赤らめているようだ。


「ごめんなさい。一応ノックはしたのですが……まさかリピウスさんがここで、変な映像を見ているなんて予想していなかったので……ごめんなさい!」


真美ちゃんは慌てたように、小走りで部屋を出て行ってしまった。


「ち・違う!」

叫ぶが、既に真美ちゃんはどこかへ行ってしまった。


「ふぅ〜……。まあ彼女にあそこの映像は見せられないからな……。俺も疲れたし、今日はここまでにしておくか」


リピウスは再度、洞窟の画面に戻すと、拷問部屋など数カ所に監視カメラを設置して、今日の作業を中断させた。

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