<リピウス再び天界へ>
その翌日に、「できればすぐに天界へ同行してほしい」とヨルダ爺から連絡が有った。
リピウスも急ぎたいと思っていたので、メイさんと共に霊体離脱を行うディメンション・ルームへと入り、ヨルダ爺から借りている義体に入って戻ってきた。
今回は前回のようなオタク系全開の容姿ではないが、最近使っているアキバ系ポッチャリデブ体形はそのままなので、恐らく天界では同一人物と認識されるだろう。
社宅の部屋に戻ると、既にヨルダ爺とデュークも来ていた。ついでにジャネットもちゃっかりと部屋に来ていた。どうやら彼女も「あわよくば自分も同行を……」と目論んだようであったが、それはアッサリとヨルダ爺に却下され、デュークと共に留守番することになった。
「それでは行くかの?」
そう言うとヨルダ爺はワープゲートを開いた。
リピウスが頷いてゲート内へ入り消えていくと、ヨルダ爺もすぐに続いて入り、ゲートは静かに消えていった。
リピウスは久しぶりに天界のワープドームへとやってきた。見ると、以前来た時よりも多くの人がワープゲートから出入りしている様子が見えた。
「今日は結構出入りしている人が多いんじゃないか?」
リピウスの疑問に、ヨルダ爺が答える。
「いや、普段からこんなものじゃよ。むしろ前回が異常に少なかったのじゃな」
そう言うと、足早にドームの出口へと進んでいった。リピウスも慌ててヨルダ爺の後を追った。
システム管理センターに着くと、すぐに所長と副所長が揃って出迎えた。
どうやら以前の封印全解除問題以来、システム管理センターはヨルダ爺に頭が上がらなくなっているようだ。そしてある意味「伝説の謎のエンジニア」として、リピウスも偉人化されてセンター内で語られていた。
ひとしきりヨルダ爺が事情を説明すると、同席していたセンターのエンジニアが頷き、該当機能に関して説明を行った。
その話を聞くと、センターで確かにワープ時の空間の歪みを捉え、ある程度の行き先を検知する事も可能ではあるという。
ただし、そのためにはワープ元の正確な座標と、ワープ先のある程度の範囲を絞らないと難しいようだ。
「つまり、行き先に関しても、大よその地域指定をしないと無理という事ですね」
リピウスが確認すると、エンジニアは大きく頷いた。
その様子を見て、暫しリピウスは考え込んでいた。リピウスには一つ行き先に心当たりが有ったのだが、もう一つに関しては、まだ全く思い当たらなかった。
「例えば、何度もターゲット範囲を変えて実行する事は可能ですか?」
リピウスの問いにエンジニアは少し考えていたが、
「そうですね。少し負荷もかかりますが……上司の承認が得られれば、1回あたり3カ所の範囲を設定し、それを数回実行する事は可能です」
と言って、所長たちの方を見て目で何かを訴えているようだった。
「も・もちろん我々でお役に立つなら、わ・私の権限で承認しますよ。しますとも!」
所長はアワアワしながら答えるも、目が少し泳いでいた。
リピウスは(結構厄介な頼み事なんだな。普通なら絶対に承認しない事項なんだろうな……)と思うと、少し気の毒に思いつつも、思わず笑いが込み上げてきて、何とか堪えきった。
「ワープは我々が行う訳ではないので、いつ発生するかは分かりませんが、ワープ元の座標は正確に把握しています。その箇所からのワープ発生時に、行き先を特定してほしいと思います。先ほど言ったように1カ所は見当が付いていますので、そちらは多分、1回発生すれば以降は監視する必要はなくなるでしょう。もう1カ所は行き先の特定が難しいので、3カ所ずつ何度かお願いするかもしれません」
リピウスが詳しい話を説明し、事前に準備しておいたワープ元座標と行き先に関する予想エリアを伝えた。
それに関しても、エンジニアは一々所長の同意を求めるように目で訴えていた。所長の目は相変わらず泳いでいたが、しっかりと承認すると言ってくれた。
「所長さんには無理を言って申し訳ないのう……。じゃが、これは人間界を救うための重要な事なのじゃよ」
そう言ってヨルダ爺は、心から所長の協力に感謝している事を伝えた。その言葉によって、所長もだいぶ救われた事であろう。
その後、リピウスとヨルダ爺は(リピウスが少しごねたが)寄り道せずに社宅へと戻った。
「お! 戻ったか。話はうまくついたのか?」
デュークは帰りを待ち遠しく思っていたようで、姿を見ると早速声をかけてきた。
「おっかえり〜! 天界の空気はいかがだったかな?」
ジャネットも一緒に待っていたようで、妙に嬉しそうに話しかけてくる。
一瞬リピウスは(お前ら暇人か?)と突っ込みたくなったが、ここは大人の対応をすることにして、愛想笑いをするにとどめた。
そして、後は天界からの連絡を待つだけになった。
もちろんその間にも施設内の監視は続けるし、最近増え続けている悪魔退治の依頼に関しても、状況によってはリピウスも駆けつけなければならない状況は変わっていない。
(とにかく今は待つしかないからな……)




