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<ジャネット三度目の来襲>

ある日、嘉助は霊界にある環境庁配下の人間界管理本部・第一人間界管理部に来ている。

突然、部長から呼び出されたのであった。


部長室に入ると、部長は明らかに愛想笑いをしながら切り出した。

「あ・あのね。人事交流の事は知っているよね」


「はっ? まあ一応はそういう制度がある事は知っていますが……」

唐突に切り出されて、嘉助も戸惑っているようだ。


「実はね、人事交流の対象者の中で、ひとり『どうしても人間界の監視員に出向したい』と言い出してね。一応、第一人間界に関しては霊界内でもそれなりに詳しい人なんだけどね」


「警備隊からの出向とかですかね?」


「うん。最初は僕もそうかと思ったんだけどね。なんか公安から是非にと言ってきてね」


「公安?」


嘉助は公安と聞いて不安がよぎった。公安で第一人間界に詳しいと言えば……例のお騒がせ人しか思い当たらない。


「そ・それって……」

と言うと、部長が満面の笑みを湛えて言葉を被せてきた。


「うん。あのジャネット君だよ」


「嘘!!!」


「あれ? 僕はてっきり喜んでもらえると思ったんだけどね。だって君は以前から人手が足りない、足りないって言ってきていたじゃないか」

部長は嘉助の表情に、意外という顔をした。


「なぜ彼女が? 公安はまだ我々を疑っているのですか?」


「ち・違うよ。ジャネット君が自ら申し出たんだよ」


「え?」


「彼女にも人事交流の話が出ていてね。それで希望を聞いたら、是非嘉助君の元へ行きたいと懇願したそうだよ」


「???」

嘉助は意味が分からず、返す言葉も見つからなかった。


部長が言うには、以前から人事交流の話が出ており、ジャネットも対象者にリストアップされていたという。

そんな時に嘉助の所で補充要員の募集が出ている事をジャネットが聞きつけ、「是非自分を人事交流で出向させてほしい」と言い出したそうだ。


「しかし彼女は一応、公安でもエリート候補なのでしょう? 監視員の経歴よりも、もっと重要な経歴を選ぶべきではないでしょうかね?」


「僕も公安の人事には同様に言ったんだよ。そしたら先方が、ジャネット曰く『現場を知らずして、将来の道は開けない』とか言い出してね。これからは人間界を知る事も公安にとっては重要だと言い張ったそうだよ」


嘉助は頭を抱えてしまった。

先日ヨルダ老師から、ダーズリー卿の狙いと対策案を聞かされ、大変なことになったと悩んでいた矢先である。そこへあのジャネットが来るのだ。絶対にただ事では済まないと、思わざるを得なかった。


その頃、嘉助の事務所では、どこに繋がっているか分からないドアが勢いよく開かれた。


「嘉助さ〜ん、杏子さ〜ん」

呑気なジャネットの声が響いた。


ちょうど杏子は嘉助の代理で事務所に詰めていたが、ジャネットの姿を見るなり、警戒して身構えた。


「あ! 杏子さん。またまたジャネット来ちゃいました〜」

満面の笑みでジャネットが杏子に駆け寄って来た。


「お・おい! 何しに来たんだよ」

杏子は完全に引いている。


「何って、監視員が不足しているって聞いたから、あたしも一緒に人間界を守ろうと思って、出向してきたんですよ」


「え? 出向?」


「そうですよ。あたしも人事交流先を探していたんですよ。監視員募集の事を知って、これはあたしが行って恩返しするべきと思ったんです」


「お・恩返し?」


「そうですよ。この前の件では、本当にご迷惑もかけましたしね。今回は恩返しも兼ねて、ジャネット頑張るつもりです」


終始ジャネットは嬉しそうに話している。対して杏子の顔はドンドンと引き攣っていった。


こうして霊界の人事交流は、混乱の渦を撒き散らしながら進められていったのである。

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