<それは禁則事項です>
ERIへワープすると、すぐに嘉助は小会議室へと3人を案内し、一旦部屋を出ていった。
間もなく職員らしき人がお茶を運んできた。そしてすぐに嘉助と共に、以前リピウスの詳細鑑定を行った主任研究員のコスタも入って来た。
「やあ老師に、それとリピウス君だったよね。久しぶりです」
気さくな感じでコスタは挨拶をすると、早速具体的な要件について確認に入った。
嘉助が一通りヨルダ老師から聞いた話を説明し、コスタに訊きたいのは、霊晶石の大きさや出力パワーに関する具体的検証結果があれば知りたいと伝えた。
「それはまた興味深い話ですね……。でも、それって霊界的には禁則事項ですよ」
コスタは興味津々ではあるようだが、『禁則事項』という霊界の常套句を用いて、それ以上の説明を拒否してしまった。
嘉助は頭を掻きながら、
「まあね……。僕もその辺はよく分かるのだけどね……。なんとか話してくれないかな?」
そう頼むが、コスタは「でも決まりですからね。僕が叱られますよ」と言って、首を縦に振らない。
「なあコスタや、これは人間界消滅の危機を救うための、非常に重要な問題なのじゃよ。なので、曲げて教えてもらいたいのじゃ」
ヨルダも必死に説得にかかった。
「ヨルダ老師にお願いされたら、流石に断れませんね」
と、コスタは笑顔であっさりと了承してしまった。
聞いていたリピウスとデュークは、(これが老師パワーなのか?)と、いつも気軽に付き合ってきた自分たちを顧みて、少し寒気を感じてしまった。
その後コスタは、持っていたタブレットを操作して、
「私たちが把握している霊晶石の霊力出力値ですが、概ねこんな感じですね」
と、何やら数値が並ぶ表を示した。そこには霊晶石の大きさと霊力値の関係が示されていた。
「私たちはこの表から、目的とする霊力装置の必要パワーを元に、使う霊晶石の大きさ等を決めているのです」
コスタの説明に一同は、食い入るようにタブレット画面を見つめていた。
「これは通常使う装置類への適応範囲ですが、例えば霊力探知機の場合は、使用期限1年の場合はこの極小サイズで賄える計算になります。ターゲット装置も同様ですね。さらに霊力充電を行えば、使用期限はおよそ10年繰り返し使用できますね」
「それって、出力パワーというのはどの程度の大きさになるのでしょう?」
リピウスが聞いてきた。
「う〜んと……霊力探知機の場合は、稼働時の消費霊力は小さいですよ。それこそ霊力値換算で言うと10単位程度かな? 使われている霊晶石の霊力容量としては1万単位程度だと思いますよ」
「1万単位か……。それって、もし仮に、一気に1万単位の出力をさせたら、1回で終わってしまうという事ですか?」
「そうですね……。1回という事は無いですが、最大出力限界での使用なら、霊晶石は10回程度で割れてしまうのではないかな?」
コスタが具体的な数値で答えてくれた。
「1万単位の出力って、確か重機関銃の衝撃レベルだったよな?」
デュークが死神時代に覚えていた記憶を辿るように言った。
「そうだね。重機関銃から小口径の戦車砲クラスが、霊力換算で1万程度だったと思うよ」
嘉助が補足した。
「例えば5万単位の出力を、コンスタントに使い続けるとしたら、どの程度の霊晶石が必要になりますかね?」
「出力5万単位ですか? それは現実的には無理ですよ。まあ、それなりの大型装置を組んで、冷却装置や衝撃吸収素材で囲えば、何とか使えるかも知れませんが、でも連射とかは難しいですよ。そんな事をしたら、すぐ霊晶石が壊れるでしょうからね」
コスタが手で「無理無理」とでも言うように動かしながら答えた。
「意外と繊細なものなんですね。それじゃあ霊気弾とかを出力させる場合、どの程度までが可能なのでしょうか?」
「う〜ん……。霊晶石というのは元々霊力を蓄積する能力に着目して、放出量は少量を継続的に行う前提でしたからね。そんな兵器みたいな使い方をするものでは無いと認識していましたからね」
とコスタは言いながら、嘉助の方を見た。
「そうですね。僕の理解も同じです。でも、仮に大出力をさせるとしたら、どの程度まで行けそうかな?」
「まあ色々制約もありますけど、例えば携帯可能な装置であれば、やはり1万程度でしょうね。戦車のような躯体に専用の装置を搭載するならば、恐らく3万程度まで可能かも知れませんが、あまり効率の良いものでは無いかも知れませんね」
「ふむ……。現実的には1万レベルの兵器という事だね」
嘉助の言葉にコスタも頷いて、
「そうですね。コスト的にも『小』程度の霊晶石で対応できるでしょうからね。それ以上の大きさは極端にコストが上昇してしまうので、なかなか使えないですし、入手自体も難しいですからね」
コスタの説明を聞いてリピウスが再び尋ねた。
「防御バリアのような機能を持つ物ってどうなのかな? 例えば霊力1万の衝撃に耐える防御バリアとか、3万まで可能なものとか……」
「それなら意外とコスト的にも手軽に作れると思いますよ。1万なら『小』で十分対応できるでしょうし、『中』以上なら3万〜5万程度まで耐えられると思いますよ。まあ、カバーする範囲にもよりますけどね」
「それと、魔晶石でも同じと考えてよいのだよね?」
「基本的には同じですね。若干魔晶石の方が耐久度は上かも知れませんね。あ! でも、力の伝導度は霊晶石の方が優れていると思いますけどね」
コスタの答えを聞いて、リピウスは嘉助の方を見て、目で合図を送った。嘉助もリピウスの言わんとする事を理解したようで、
「コスタ君、すまないが今の話を再度検証してまとめてくれないか? 少々お偉いさん達と話をして来ないとまずそうだからね」
嘉助の言葉にコスタは少し焦った表情でヨルダ老師の方を見た。
「コスタ、済まんな。全ての責任はわしが持つからの」
ヨルダ爺の言葉にコスタも頷き、至急まとめて報告すると答えた。
「後は具体的にC国で兵器サンプルでも手に入ればな……」
と、嘉助はリピウスの顔を見ながら呟いた。
「へいへい。鋭意努力いたします」
ペコリと頭を下げて、リピウスは言うのだった。




