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<ダーズリー卿の存在>

ここまでの話を聞いて、ヨルダ爺は疑問に感じた事があるようだ。


「じゃが、それであればC国同盟が、絶対に勝たねば意味が無いじゃろう。それだけの勝算も有ると言う事なのか?」

ヨルダ爺が、否定してほしそうな気持ちを見せながら聞いてきた。


「そこはだね……実は現実的にはC国同盟に勝ち目は無いだろうと言われているんだ」

リピウスの答えに、ヨルダ爺もデュークもホッとした表情をした。


「なんだよ。それなら問題無いじゃないか」


「まあね。現状の軍隊としての力関係で言うと、台湾有事でC国が勝つ可能性は、日本が関与せず、米軍に基地の使用や、補給などの支援を行わなかった場合に限定されるそうだよ。理由は、日本が支援しないと米軍の補給がグアムなどからになってしまい、距離的にも戦闘を継続不能になってしまうらしいのだよ」


「なるほどのう。では日本が積極的に関与する姿勢を示している限りは、C国の台湾侵攻は無いと言う事じゃな?」

ヨルダ爺が確認してきた。


「国家間の戦力だけなら、そういう事になるね」


「でもよ、そこにN国だのR国だのが参加して来るんだろ? それで勝ち目が出るって事じゃないのか?」

デュークが意外と鋭い事を言ってきた。


「そこなんだよ、デューク君」

リピウスがこの口調になると、デュークは嫌な予感に襲われる。


「なんだよ。何がそこなんだよ……」

デュークが口を尖らせて聞いてきた。それを待ってましたとばかりに、リピウスは続けた。


「実はね、N国の戦力だと、単独で韓国も落とせないし、仮に韓国を制圧したとしても、日本へ攻め込むだけの戦力は無いんだ」


「え? そうなのか? N国の軍隊って強いのでは無いのか?」

デュークが驚いたような声を上げた。


「そんな力は無いよ。だから核兵器の所有にこだわっているんだよ。核が無ければ、C国次第で完全に詰みだからね」

リピウスの言葉に、ヨルダ爺も「ほう!」と感嘆の声を上げた。


「でもよ、R国は軍事大国なんだろう? 日本にとっては厳しい相手になるんじゃないか?」


「確かにウクライナ侵攻前だったら、もしかしたら手強かったかもしれないね。でもウクライナ戦争で、R国の兵器があまり使えないと露見してしまったからね。しかも日本方面は極東軍になるのだけど、既にウクライナ支援にだいぶ戦力を移動させてしまい、今の戦力では到底北海道を制圧できる状況には無いらしいのだよ。たぶん今北海道に上陸できるのは最大でも数千人規模で、自衛隊の北部方面隊に比べてもひ弱すぎるんだよ。簡単に撃滅されるだろうね」


「それはまた意外じゃのう? じゃが、そんな状態でダーズリー卿は勝負を掛けてくるというのかの?」

ヨルダ爺は不思議そうな顔をして考えている。


「つまり、ダーズリー卿が関与すると、その関係が変わるって事か?」

デュークがまた心配そうな顔になって聞いた。


「その可能性があると言う事だろうね。具体的に今の段階では何とも言えないけどね。でも、女神さまの予言が正しいなら、ダーズリー卿の関与が現在の軍事バランスを壊すと言う事になると思うな」


「それだけダーズリー卿の組織する悪魔軍団は脅威と言う事じゃな」


「う〜ん……まあそれも有るだろうけど、たぶん悪魔悪魔した軍団では無く、表面的にはC国の人間の軍団になると思うぞ。むしろ悪魔達は後方攪乱で動いて来ると思うけどな」


「後方攪乱か……って、具体的には何をするんだ?」

デュークは分かっていないようだ。


リピウスが言うには、配下の悪魔達を各国に放ち、世情を混乱に陥れてC国に救いを求めさせるように仕向けたり、NATO主要国であれば悪魔達による後方攪乱で戦力を集中できないように仕掛けたりもしてくるだろうと言う事だ。


「なるほどのう。実際の悪魔の軍団というのは、そういう活動をさせるために拡大させていると言う事じゃの?」

ヨルダ爺も、リピウスの言う話の全容がだいぶ見えてきたようだ。


「だって考えてみてくれよ。あの醜悪な悪魔達が主体の軍団で攻めてきたら、確実に人間は戦う方向に向くだろうよ。でも、醜悪な悪魔を裏で使いつつ、表には人間の軍隊を前面に出した戦争形態にすれば、各国の印象も随分と違って来るのではないかな? それこそ勝ち馬に乗りたいと言う心理で、C国同盟軍が有利に展開できると言うものだよ」


さらにリピウスは付け加える。

「第一さ、ダーズリー卿は悪魔の仲間を増やしていると言ってもさ、その数はせいぜい多くて数千体だと思うよ。そんな程度では、とても世界大戦で世界中を相手にするのは無理だよ。やっぱ人間の数は80億人だからね」


ここまで話すと、再びリピウスはコーヒーを飲み、再度チョコを口に含んだ。

ヨルダ爺とデュークはリピウスの妄想話に引き込まれて、あたかもすぐに現実で起こるのではないかと感じて、お互いに顔を見合わせてため息をついた。

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