<リピウス予言を読み解く>
霊界で嘉助の報告を聞いた翌日には、ヨルダはデュークを伴ってリピウスを訪れていた。
今日のリピウスは、本来の自宅にメイさんと一緒にいた。
「ふむ。こっちへ来たのは久しぶりじゃのう」
ヨルダ爺は部屋に入ると、すぐ懐かしそうにリビング内を見回しながら呟いた。
最近は社宅の一室で会うことが多かったからである。
「そう言えば、そうかもね。今日は社宅にはセバスに待機してもらっているよ」
「おいらも、やっぱりここが一番落ち着くな〜……」
デュークも妙にしんみりとした口調で目を細めている。
「で、今日はどうしたんだい? また何か厄介な相談事でもあるのかな?」
目ざとくリピウスは、ヨルダ爺の顔を覗き込むようにして問いただした。
「はてさて……どうにもリピウスには敵わんのう。……まあ、実はそうなんじゃよ」
とヨルダ爺は言葉では困った様子だが、実際は楽しそうに訪問の訳を話し始めた。
ヨルダ爺が訪問した目的は、『ズバリ! 四仙会とダーズリー卿の狙いは何か?』に関するリピウスの考えを聞いてみたいと思ったからだ。
一通りヨルダの話を聞いたリピウスは、例によってコーヒーを一口飲んでから、ヨルダ爺に言うのであった。
「それを聞きたいならば、まずは『女神様の予言書』に関して、ちゃんと説明して欲しいな。それを聞かなければ、狙いも何も無いだろうが」
リピウスに指摘され、ヨルダ爺は少し考えているようだった。
「なあヨルダ爺、リピウスの言う通りだぞ。一番の核心的事実を開示しなければ、いくらリピウスでも答えようが無いのではないか?」
デュークにしては至極まともな事を言い出した。
「よく言ってくれたデューク君! 君の言葉は正しい」
と、いつもデュークの警報が鳴り始める口調でリピウスが賛同する。
案の定、デュークの警報が鳴り響き出したようだ。
「お前な。そう言う態度になるから、ヨルダ爺も全てを話すのが心配になるのではないか? もっと……こう、話したくなるような態度ってものがあるだろうが」
デュークに叱られて、毎度の事のように首を竦めると、リピウスはまたコーヒーを飲み始めた。
暫しの思案後、ヨルダは予言内容に関して説明しだした。
それを聞いたリピウスは、少し内容を整理しながら確認し始める。
「『天界で己の境遇を嘆く者』と言うのが四仙会の会長だよね。
『人間界で狂気に憑りつかれた者』と言うのがダーズリー卿。これはヨルダ爺達も分かっているのだよね?」
「うむ。わし等もそれしか無いと考えておるよ」
「次の部分は、ダーズリー卿が四仙会の支援を受けて、仲間を集めながら悪魔の軍団を作り始めると言う意味だよね」
「うむ。それもわし等の見解と同じじゃよ」
「そして次で人間界の霊力封印が全解除されると言う予言になっていると」
「うむ。その通りじゃ」
「そして、その封印解除がきっかけとなって、悪魔の軍団が人間に襲い掛かり、人間を支配しようと動き出すと」
「うむ」
「で、問題はその次と言う事だね。その部分はヨルダ爺達は、どう解釈しているんだい?」
リピウスの順を追った確認に、ヨルダ爺も改めて内容を整理しながら聞いていた。
しかし、最後の問いには明快には答えられないようであった。
「ここが分からんのじゃよ。救世主とは誰なのか? リピウスでは? と言う発言も有ったが、まずそれは無いとわしは思っておるよ」
「あはは。それは無いぞ。救世主とは人類の意思を統一し、悪魔に立ち向かうように仕向ける者だろう。俺にはそんな役割は絶対に不可能だよ。
はっきり言うけどな、愚かな大衆を説得するなんて行動は、たぶん絶対に俺はやらないと思うぞ」
「リピウスよ。お前の性格だから、おいらもそう言うだろうとは思っていたけどさ。やっぱもう少し言葉を選んだ方が良いぞ。
おいら達なら良いけど、余り馴染んで無い者たちが聞いたら、絶対におまえを誤解するぞ」
デュークはまた、窘めるように言った。
「うん。それは分かっている。だけど、こういう性格なんだよ。だから絶対に救世主では無いって事だよ」
「わし等の結論も、救世主は他に居て、その存在が悪魔に人間が一致団結して立ち向かう鍵を握っていると認識しておるんじゃよ。
むしろリピウスは、その救世主を守る役割では無いかと考えておるよ」
「ふ〜ん……守る役割ねぇ……なんかピンとこないけどな。ねえメイさん、コーヒーのお代わりと、いつものチョコを持ってきてね」
そう言うと、リピウスはカップに残っていたコーヒーを飲み干した。




