<後日談>
事件のあった数日後。
霊界学園の園長室には、いつものメンバーが集まって密談していた。
「いや〜、嘉助も大変だったね」
「しかし魔界衆まで出てくるとはね」
学園長と閻魔が嘉助に労いの言葉をかけた。
「まったくですよ。C国と悪魔で手いっぱいだったのに、そこに訳の分からない秘密結社に、魔界衆まで絡んでくるんですからね。もうお腹いっぱいですよ」
「ほっほっほ。今回もリピウスが大活躍したようじゃな」
「まあ大活躍と言うか、実際に活躍したのはセバスとメイさんですけどね」
「で、魔界衆は土竜一族だったと言う事だが、背後とかは分かっていないのだな?」
「ええ。まあ聞いても彼らが口を割る事は無いですしね。と言うか、たぶん彼らも大本の黒幕までは知らないでしょう。天界の誰かからの依頼という程度で」
「鉄十字団というのはどうなったんだね?」
「彼らは全員逮捕されて、特殊刑務所に入れられました。ドーピング薬の影響で、少々精神に支障を来している者もいましたが」
「ドーピング薬か……これの出所も問題ですね」
「入手可能な者は限られているからな」
「鉄十字団というのは、ERIに対する逆恨みと聞いているが、それだけだったのか?」
「尋問の結果を聞く限り、それだけのようですね。団というより団長の逆恨みという感じでしょうね」
「だが悪魔教も関与していたとなると、例のダーズリー卿にも関わっている事では無いのか?」
「その辺が見えないんですよね」
「私が思うに、嘉助さん達の眼を、ダーズリー卿から逸らそうとしたのではないでしょうか?」
「なるほどな。嘉助達がC国まで踏み込んでいたので、足元を襲って目を逸らすというのは、あり得るかも知れんな」
「それと、どうも魔界衆の本当の狙いはリピウスだったようです。襲撃時に明らかにリピウスに固執していたそうですからね」
嘉助が杏子からの報告を元に付け加えた。
「なるほどな。確かにリピウスは何かと奴らにしてみれば邪魔ばかりしているからな。それで目障りになって……ということか」
学園長が何やら納得気味に呟いた。
「そう言えば今回の事件で、死者が1名も出ていないそうだな」
「はあ、まあ負傷者は双方で出ていますが、死者は出ませんでしたね」
「幸運と言えるじゃろうな」
「それがですね……全てリピウスの手のひらだったんですよ」
「え?」
全員が驚きの声を上げた。
嘉助によると、リピウスは終始ERIの屋上に陣取り、戦況全体を監視していたが、同時に全員に防御バリアを張り巡らしていたそうだ。
それはERI側の人間だけではなく、鉄十字団の人間に対してもであった。
ERI側には完全防御レベルで張り、鉄十字団には致命傷を負わない程度のバリアを張っていた。双方合わせて40名以上に対して、個別に、である。
「ほっほっほ。これはまた凄まじいのう」
「う〜ん……やはり規格外としか言いようが無いな」
「全くですね」
結局今回も、リピウスの規格外な活躍話で締めくくられた。
その頃、天界の一角にある怪しい屋敷でも、密談が繰り広げられていた。
「またまた失敗だと!」
いつもの円卓メンバーの一人が大声を上げた。
「いえ、失敗とも言えないでしょう。最低限の目的は果たしておりますゆえ」
部屋の隅に控える影から声がした。
「ふん。リピウスの暗殺に失敗しておいて、最低限の目的とはな」
「確かにそうですが、とりあえず嘉助達の目をC国からは少しの間でも逸らす事は出来たと思いますからね」
「それに、今回もリピウスにしてやられたそうでは無いか」
「その点に関してですが、どうもリピウスの能力を、我々も甘く見ていたようです」
「何か分かったのか?」
「はい。我々が彼らを監視していたと思っていましたが、逆にリピウスは我々の動きを監視していた形跡があるのです」
「何だと!」
「今回の襲撃では、ERIも社宅も、全て彼らは罠を仕掛けて待ち構えていました。こちらの動きが完全に読まれていた証拠です」
「ふ〜む……まさか我々の中に裏切り者でも居ると言うのかね?」
円卓の一人が少し凄みのある目で睨みながら問い詰めた。
「いえいえ、そういう意味では無く、彼らの中に優れた偵察能力を持つ者がいるようなのです。それも最近からと思われますので、恐らくリピウスに、その能力があるのではと我々は考えています」
「なるほどな。ダーズリー卿も同じような印象を持っていると、以前報告もあったな」
「はい。それを踏まえて今後の計画時には、その点も配慮して行動し、もっと実のあるご報告ができるように努めたいと思います」
「ふむ。次は必ず仕留めろよ」




