<反転攻勢>
メイさんは相手の攻撃を躱しつつ、思考を繰り返していた。
どう対処すれば良いか?
思考を重ねていたのだったが、適切な回答は得られていない。いきなりパワーが倍増したケースは、メイさんのデータにも無かったのだ。
そんなメイさんに、リピウスから念話が入る。
『メイ、相手は力任せなだけで、動きは単調で鈍い。もっと流れる水の如く、いつもの動きで対応すれば、霊力値の差なんて関係無いぞ』
その言葉に頷くと、メイさんの動きが変わった。相手の動きをスルッスルッといなしていく。
『そうだ。その調子で相手の関節や急所に攻撃を集中!』
再び、リピウスからの念話指示が来る。
メイさんは指示通り、相手の攻撃を躱しながら、膝や喉元、鳩尾などに攻撃を集中していく。
それによって、相手の動きが徐々に鈍っていく。
そして攻撃も単調になり、メイさんを捉える事は全くできなくなった。
後は一方的にメイさんが、彼の周りを舞いながら攻撃を浴びせてくる。
既に全身にダメージを受け、動くこともできずに棒立ちになる敵に、メイさんの電撃を纏った必殺の一撃が胸に炸裂した。
リピウスはメイが立ち直ったのを見ると、ラヴィへも同様にアドバイスを念話で送った。
ラヴィもリピウスの言う事を理解し、少しずつ動きを取り戻して来た。
(なるほどな。言われてみれば、動きは硬いし、力任せで単調だから、恐れる事も無かったのだな。流石に上から見ていれば一目でわかるか……)
そう思いながら、本来の動きで相手を翻弄し始めた。
(さて、残りはジェームスだが……奴は不器用そうだからな。どうしよう……)
そんな事を考えていると、メイさんの勝負が終わっていた。
メイさんの圧倒的な攻撃で、相手は完全に行動不能になっていた。
それでメイさんは周囲で戦っていたERIの増援メンバーたちを援護して、既に敵の2名を戦闘不能にした。
そこへ、リピウスから念話が入る。
『メイはジェームスを支援して』
その声を聞くと、メイさんは即座に動いてジェームスの元へと走った。
ジェームスは今まで、パワーで押し負けた事は無かった。
ラヴィには技術で圧倒されて敗北する事が多かったが、純粋なパワー勝負なら負ける事は無い。
それが今は、パワーで押されまくっている。
そこへメイさんが割って入って来た。同時にリピウスから念話が入る。
『ちょっとだけメイと交代して。少し頭を冷やそうね。メイの動きを見れば、相手は決してジェームスの手に余るレベルじゃ無いって分かるからさ』
ジェームスは少しムッとした表情をしたが、すぐに頭を振り振りして、
『分かった。少し見学させてもらうよ』
そう言って、メイの後ろへと下がった。
その様子を見ると、メイさんは腕を大きく回しながら構えを取った。
手の先をクイクイっと曲げて、「掛かって来い」と挑発する。
ボーマーは突然の割り込みに一瞬動きが止まったが、メイさんの手招きに応じて突進してきた。
だが、メイさんは流れるような足さばきでボーマーの動きを躱し、攻撃も全て軽やかにいなしていく。
それはまさに、流れる水の如しであった。
ボーマーは徐々に怒りが込み上げてくる。しかし、それは逆に動きが雑にもなってくる事を意味した。
そんなボーマーの周りを舞いながら、関節や急所を狙って攻撃を繰り出す。その積み重ねは、徐々にボーマーの動きを鈍くさせていく。
(なるほどな……。要は俺は相手のパワーを恐れて、俺の方が動きを硬くしていたって事か……。全くよく見てるよな。だが、これなら……)
ジェームスはリピウスに念話を送る。
『頭も冷えたんで、そろそろ交代させてくれ』
『了解』
リピウスは答えると、メイさんに念話でジェームスに交代するように伝えた。
メイさんがガクッと膝をついているボーマーを離れて、ジェームスの後ろへと移動した。
すれ違いざま、ジェームスはメイさんに目で挨拶をすると、キッとボーマーを睨みつけて構えた。
この様子にボーマーはさらに怒りが込み上げ、冷静さを失っていくのであった。
その頃、ソフィー達も舞の参戦から混戦を脱しようとしていた。
舞が全員にリピウスから言われてきた指示を伝えつつ、それを実践するように、冷静な動きで敵を翻弄し始めたからである。
「舞さんありがとう。みんな! 相手のパワーに惑わされないで。どんなに強い攻撃でも、当たらなければ意味は無いんだからね」
そう言うとソフィーは、再び攻勢へと打って出た。
既に全体の戦況は再びERI側へと移っていた。後は時間の問題であろう。
そう思ってリピウスが戦況を見ていたが、そこにセバスがやって来た。
「お! 向こうも終わったのか?」
リピウスの問いに、セバスが頷いた。
「じゃあ悪いけど、もう一仕事してくれるかな?」
そう言うと、リピウスはセバスに何やら指示を出し始めた。
黙って聞いていたセバスは、
「了解しました」
と言うと、サッと背後の闇の中へと消えていった。
(さてさて、そろそろ仕上げと行きますかね)
リピウスは不敵な笑みを漏らしていた。




