<リピウスの正体は>
やがて煙幕が薄れて、次元結界内がうっすら見えてきた。
リーダーは真っ先にリピウスに襲い掛かっており、リピウスと戦っていたはずであったが、煙幕の先に見える姿はリピウスよりもずっと長身で、スーツをキッチリ着こなした紳士であった。
「ゲッ! 誰だ? リピウスは何処へ行った!」
リピウスと思っていた相手が、見た事も無い紳士姿に変わっていたので、リーダーは慌ててしまった。
さらに周囲には、既に3人の仲間が倒れており、残りの3人も苦戦している様子が見えた。
彼らが戦っていた相手も、当初見えていた舞達では無かった。
「ゲゲッ! 杏子! お前は霊界から呼び出されていたはずだぞ」
リーダーは思わず叫んだ。
目を向けた先で、また一人を床に叩きつけて倒していたのは、杏子であった。
そして他の3人も、当真、清君、店員の緒方の姿をしていた。
「どういう事だ? なぜこいつ等が……」
リーダーが唖然とする中、目の前の紳士から強烈な電撃を纏った一撃を喰らう。
「グ・グ・グ……」
必死で耐えるものの、大幅に戦闘力を奪われたようだ。
「退却だ! 退却しろ!」
リーダーが叫んだが、時すでに遅しであった。
残っていた2名も当真と清君によって制圧され、床に押し付けられていた。
その時点で次元結界も解除され、元の会議室の風景が戻っている。
そしてリーダーが身をひるがえして逃げようとした眼前には、いつの間にか杏子が待ち構えていた。
「逃げられないよ!」
そう言って杏子は、リーダーに留めの一撃を放った。
リーダーの体はゆっくりと崩れ落ちていき、そのまま意識を失ってしまった。
『そっちは無事か?』
嘉助からの念話が、杏子に入った。
『あ〜、今終わった所だ。そっちは?』
『とっくに終わったよ。例のネズミも確保したよ』
その声に杏子も一息入れて、会議室内を見渡した。
敵の数は7名。既に当真達によって拘束され、床に転がされている。
「セバス、ご苦労だったね」
杏子が話しかけたのは、リーダーを相手にしていたセバスであった。
「いや〜、話には聞いていましたけど、セバスって滅茶苦茶強いんですね」
清君が感心している。
「全くだね。本家のリピウスよりも強いってのは、本当だったんだな」
当真も驚いているようだ。
そう、会議室に居たのは、協力者に化けていた杏子達であり、リピウス役はセバスであった。
そして1階の当真は嘉助が化けていたのだった。
彼らは会議終了後、密かに入れ替わっていた。
そして本当の協力者達は、既にERIへと移動していた。
さらに念を入れて、嘉助と杏子は会議後には霊界へと報告に行く予定まで偽装していたのである。
「そりゃそうだろうよ。セバスは霊界でも最強クラスの戦闘義体だからな。あたしの義体よりも性能は上だぜ」
なぜか杏子がドヤ顔で答えている。
セバスは全員に対して、美しい礼をもって返していた。
そこへ1階から嘉助がやってきた。
床に転がっている魔界衆の姿を見て、身を屈めて何か確認しだした。
「どうだ? こいつらの正体は分かったか?」
「うん。予想通り、過激部族で名高い土竜一族みたいだね」
「こいつらはどうするんだ?」
「魔界衆に何を聞いても無駄だよ。まあ、後は魔界の王に任せるしかないね」
「だな。じゃあ、あたしと清君はERIへ行って来るよ」
「うん。向こうはまだ戦闘中かも知れないけど、支援に来ている魔族も居るかもしれないからね。そっちは杏子の方で頼むよ」
「了解だ。じゃあ清、行くよ!」
杏子の声に清君が頷くと、すっと空間に穴を開けた。
杏子が先に入り、清君も嘉助に一礼をすると、穴の中に消えていった。




