<霊力暴走の恐怖>
ソフィーは完全に理性を失っていた。
父を失った悲しみと、信頼していた親友の裏切りに対する憎悪で、ソフィーの心は完全に崩壊してしまったようだ。
今のソフィーは霊力を自ら制御する事はできない。
心の暴走に任せて噴き上げる霊力の嵐で、周囲を破壊していく恐怖の存在であった。
フランスの特殊犯罪対策班からの要請を受けて、ERIは最強の能力者2名を即時送った。対象者がソフィーだと聞いていたからだ。
ソフィーの正確な能力は把握できていないが、霊力値が20万超えである事は確認していた。
そんなソフィーの暴走に対抗できるのは、ERI関連でもラヴィとジェームスぐらいである。
いや、もう一人リピウスも居る。
ただリピウスだけは、直接ERIから指令を出せない。一度嘉助に連絡し、嘉助からリピウスに打診して、彼が了承しなければ動かせないのだ。
なので嘉助にも要請はしてあるが、即動ける二人を送ってきたのであった。
「おい! これはヤバいぞ!」
ジェームスが倉庫から放射状に伸びる破壊光線を見て、心配そうにラヴィを見た。
「想像以上ですね。とりあえずバリアで接近しないと、どうにもなりませんね」
「嘘だろ! こんなの防御できるのか?」
「するしかないでしょう。レーザーは電磁波ですからね。反射や吸収によって減衰できると思うのですが……」
ラヴィの言葉にジェームスが唸る。
「う〜ん。俺には無理だぞ。炎で攻撃しろと言われればできるけどな」
「そうですね。これは僕がやらないとダメでしょうね」
そう言って二人は少し打ち合わせをした後、とりあえずラヴィが考え得る防御バリアを張りつつ、倉庫内へと進む。その後ろにジェームスが密着するようにして続いた。
「おい! 大丈夫なのかよ」
「今のところは大丈夫です。3重に防御バリアを展開してますからね」
しかし、彼らの前進も倉庫内に入って間もなく停止する。
「うわ! これは無理だろ。全部こっちへ照射されてきているぞ」
「ですね。どうやら敵と認定されたようです」
ラヴィは防御バリアを張って、何とか攻撃を受け流している。
ジェームスは試しに爆炎弾をソフィーに向かって打ち出した。爆炎弾はソフィーに当たって爆発を起こしたようであるが、実際には電磁バリアによって弾かれていた。
「駄目だな。ありゃかなり強力なバリアだぞ」
「ちょ……ちょっと駄目だよ! 爆炎弾じゃバリアを破っても、あの連中が巻き添えで全滅するぞ!」
ラヴィは慌ててジェームスに忠告した。
二人は10mまで接近したものの、そこからは進むも退くもできなくなってしまった。
「おいおい、こりゃ最悪だぞ」
「ですね〜……どうしたものか」
そんな会話をしていると、突然レーザー光線の圧力が無くなった。
「二人も揃って何してんだよ」
二人が後ろを振り返ると、そこには中年のぽっちゃり系男子がスタスタと近づいていた。
「あ! リピウスさんですね」
「ラヴィは知り合いか?」
「聞いてませんか? 日本で強力な能力者が参加したって」
「あー、そう言えば聞いたな」
「呑気な事言ってないで、あれを何とかしろよ」
「何とかしろって言われてもな」
「あの暴走を止めないと、どうにもなりませんよ」
リピウスはラヴィ達の前まで出て、じっとソフィーを見ている。
「おい、大丈夫なのか?」
ジェームスが心配そうにリピウスに声を掛けた。
「このままじゃまずいね。早く止めないと、彼女もその後ろの連中もみんな死んじゃうね」
そう言うと、大声で叫んだ。
「嘉助さん! 大急ぎでメイに、紫音を連れて来るように言って下さい!」
その声を聞いて、倉庫の入り口まで来ていた嘉助は、少し嫌そうな顔をしたものの、了解の合図を送って、連絡を取り始めた。




