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<窃盗団『絹の亡霊』>

この1年ほどフランスでは、「絹の亡霊窃盗団」という盗賊が猛威を振るっていた。

絹の亡霊窃盗団は50年以上前から存在しており、フランスの地方都市を中心に活動してきた。


彼らの特徴はターゲットにあった。

一般家庭や企業、店舗等ではなく、権力者に癒着した悪徳企業や政治団体など、一般市民の敵と言える存在をターゲットにしていた。

そして、「殺しは絶対に犯さない」という掟もあった。


だが、その性格上、危険も多い仕事である。

同業とも言える裏社会の組織を敵に回すことも多い。従って彼らは、非常に念入りに下調べを行い、準備を経てからでないと動かない。

また、同じ都市で続けて働くこともない。一仕事を終えるとすぐさま居を移してしまい、姿を晦ました。その範囲はフランス内に留まらず、スペイン、イタリアにまで及んでいる。


そんな様子が「絹のようにスルスルと手からすり抜けてしまうようだ」と言われて、いつの間にか「絹の亡霊」と呼ばれるようになったらしい。

また最近では、犯行現場には必ず白い絹の切れ端が目立つように結び付けられてもいる。これは恐らく、巷でつけられた名前を気に入って、それっぽい演出を加えているのだろうと言われている。


しかし、その形態は結果として、あまり実入りが良い仕事とも言えなかった。

それでもお頭には強いこだわりがあるようで、配下の者たちもお頭への忠義は固く、決して文句も言わずに任務に取り組んでいる。


その窃盗団の動きが、1年ほど前から活発化してきた。

原因は『目覚めの日』にあった。

窃盗団の若手に、多くの霊力値が高い能力者が現れたのだ。


その筆頭がお頭の一人娘であるソフィーであった。

彼女は実の娘ではない。5歳の時に、お頭に拾われて育てられたのだ。以降、お頭はソフィーに愛情を注ぎ、大事に育てたことから、ソフィーも実の父に対するように接してきた。


お頭はソフィーを盗賊にする気はなかった。普通の女性として育て、普通の生活をして欲しいと願っていた。

だがソフィーは父を尊敬し、父と共に働くことを望んでいた。

そんなソフィーは、窃盗団仲間からも可愛がられており、同年代の若者たちもソフィーの元に集まってきていた。


そして『目覚めの日』を迎え、ソフィーと若者たちは大きな力を手に入れた。

中心はソフィーを筆頭に、10人の若者であった。


ソフィーは電磁系の強い力を持っており、レーザー光線を放出することができた。

だが、この能力は破壊力も大きく殺傷性が高いので、滅多に使うことはない。しかし父と仲間たちを守るためには、有効な力だと認識していた。


「自分はみんなの盾になろう」

そう思って彼女は能力制御に励んできた。彼女の求めた力は、強力な電磁バリアである。


他の10人も、それぞれ特異な能力を持っていた。

偵察に適した盗聴・監視などリピウスのドローンのような能力を持つ者もいる。

様々な探知系の能力を持つ者もいる。霊気を実体化させて変装する者もいる。

相手の心を読める能力者もいる。さらには幻覚を見せて混乱させたり、誘導したりできる者もいる。ディメンションボックスを使える者、ワープゲートを使える者もいた。


彼らの能力を使えば、今まで以上に下調べから侵入準備までがスピーディにできるようになった。そして侵入後の逃走経路の確保も、以前に比べて格段に簡単になった。


彼らが能力を把握し、十分制御できるようになったのが1年前であった。

そこから絹の亡霊窃盗団の活動は目に見えて活発化し、悪徳企業や政治家などの権力者を震え上がらせた。


そんな中、ソフィーに悲劇が訪れることになる。


絹の亡霊はマルセイユに拠点を設け、マルセイユのとある貿易商をターゲットに活動していた。

その貿易商は密輸に関与し、さらには武器をテロ組織などへも提供していた。

勿論、見返りとして巨額の金銭を得ていた事は言うまでもない。


そして準備を整え、実行の日を迎えた。

だが、その際にソフィーは実行部隊から外されていた。

理由は、マルセイユの暴力組織に目を付けられ、ソフィーが監視されていたためである。その組織は貿易会社の下部組織であったため、彼女は計画から外され、逆に彼らの眼を引き付けるために別行動をとっていたのだった。


絹の亡霊窃盗団は、ターゲットの貿易会社が管理する倉庫へ向かっていた。そこに不正な金塊などを隠している事を掴んでいたからだ。


しかし、それは罠であった。

絹の亡霊たちの計画は貿易会社に漏れており、侵入した絹の亡霊たちは攻撃を受け、包囲されてしまった。

攻撃は苛烈なものであり、多くの団員が犠牲になった。

それでも、何とか生き残った者たちは、お頭を守りつつ倉庫内の一角に立て籠もった。


「おい! ワープできないのか?」

誰かが叫んだ。


「駄目だ、チェロモが負傷して意識を失ってしまっている。この傷だと能力も使えないだろう」

他の誰かが答えた。


「クソ! 真っ先にチェロモを潰しやがって」

悔しそうな声が響く。


包囲は徐々に狭まってきている。彼らが壊滅するのも時間の問題であろう。

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