<怪しげなフードの男>
ハマーは薄暗いバーのカウンターで、一人酒を飲んでいた。
(クソ! ERIの奴らめ)
ハマーは団創設時からボーマーの片腕として活動してきた。副団長として、常に団長を支えてきたと自負している。
なのに一向に同志を得る事も出来ない。周りには能力者が溢れていると言うのにだ。
(ERIの奴らが常に先回りして動くために、こちらではろくに接触すらできていない)
団で情報を得て動く頃には、既にERIが接触し、国家機関へと囲い込まれてしまう。
仮に囲い込まれなくとも、団への参加に興味を持たないような輩ばかりであった。
(このままでは……)
そんな焦りを感じながら酒で紛らわせていると、一人の男が近づいてきた。
「お隣、宜しいですか?」
見るとフードを被り、いかにも怪しげな男であった。ハマーが不快そうに黙っていると、男は隣へ座り、バーテンにハマーと同じ酒を自分とハマーの両方に注文した。
酒が来ると、
「新しい人類の繁栄に!」
と言ってグラスを軽く持ち上げ、ハマーに向けた。
ハマーが更に不快そうに立ち上がると、彼は小声で囁いてきた。
「同志を得るなら、それなりの情報網が必要ですよ。私ならお役に立てると思うのですがね」
その声にハマーは少し驚きの表情を浮かべ、再び座ると、彼が自分へと注文した酒を飲み干した。
数日後、ハマーは再びバーを訪れた。今回は団長のボーマーも一緒である。
二人は奥のボックス席へ行く。すると、先日話しかけてきた男がどこからともなくスーッと現れて、彼らの前の席に座った。
「団長のボーマーさんですね。私は悪魔教団顧問のバギと申します」
男は被っていたフードを外し、じっとボーマーの眼を見ながら挨拶してきた。
「ボーマーだ。話はハマーから聞いている」
ボーマーの眼には、バギに対する警戒感が滲んでいる。
「ふふふ。そう警戒しなさんな。我々と手を結ぶことは、悪い話ではないと思いますけどね」
バギがハマーに話した内容は、鉄十字団の情報網として、悪魔教団の情報網を提供すると言うものだった。
バギの話では、悪魔教団は決して表面には出ないものの、その情報網は世界中に張り巡らされているという。彼らは普段、全く普通の人間として生活をしており目立つことも無いが、裏での繋がりは強く、堅固な組織網を構築しているという。
バギの話では、彼らが求めるのは救世主。自分達に救いの手を差し伸べる、新しい救世主の存在を求めていると言うのである。
「その救世主が悪魔だと?」
ボーマーが聞くと、バギは首を振った。
「悪魔とは方便ですよ。ただ世の中で崇拝されている神とは違う存在を指しているだけです」
「なるほどね。で、なぜ我々に?」
「ふふ……。私のビジネスですよ。私は悪魔教信者ではありませんからね。ただ、法律や既存宗教等との関係に関する、相談役のようなものです。でも、今のままでは彼らからの見返りが少なくてね。だからある程度は実入りを期待できる、彼らの崇拝者になり得る者を探していたんですよ」
「我々が悪魔代わりになれと?」
「まあ、そういう事ですかね。別に悪魔を名乗る必要はありませんよ。新しい人類の旗手として、彼らに救いの手を差し伸べる存在と認識させれば良いだけですからね」
「それだけ?」
「はい。それだけです。彼らは結局、心弱き者たちなのですよ。例の『目覚めの日』においても、彼らの中から目立った能力者も現れていません。だから彼らの心の拠り所になる、強き者達が必要なんですよ」
「崇拝する相手は誰でも良いと言うのかね?」
「まあ、誰でもとはいかないでしょうね。それなりに力と慈愛を示す必要はあるでしょう。でも、世界で数百万人は存在する情報網は、貴方たちにとっては貴重ではありませんか? 悪魔教の連中に崇拝されれば、それが手に入るのですよ」
ボーマーは軽く頷くと、テーブルに置かれてあるグラスを取り、バギに向けて軽く持ち上げた。バギとハマーもそれに倣いグラスを持ち上げた。
「我々の未来に乾杯!」
3人はグラスの酒を飲み干すと、その後は酒を酌み交わしつつ、今後の事を密談していくのであった。




