<鉄十字団>
ここはアメリカ南部のとある地方都市。
この地域は古くから選民思想が強く、白人至上主義等の過激な思想を持つ集団も存在している。
そんな中、能力者至上主義を掲げたマイナーなグループも存在している。
グループが誕生したのは20年前に遡る。
当時はまだ人類は霊力を封印されており、霊力が解放された者は極稀な存在であった。
しかし毎年、例の管理システムの異常から、世界中で数名程度の封印解除者が誕生することもあった。
そして、この地には複数の封印解除者が集まっていた。
その中の一人が他の封印解除者に働きかけ、自分たちこそが選ばれた人類なのだと説いた。
それに賛同した3名の封印解除者と共に、「鉄十字団」という秘密結社を結成した。
リーダーは霊力18万のボーマーという19歳の男であった。
彼らは精力的に封印解除者の情報を集め、密かに接触しては同志に迎え入れる活動をしていた。
わずかずつではあったが人数は増え、『目覚めの日』時点では8名に増えていた。
そんな彼らにとって、もっとも厄介な存在がERIであった。
彼らが封印解除者を探していると、たいていはERIとかち合ってしまう。ERIよりも先に接触しなければ、同志として迎えることも難しかった。
なので鉄十字団は常にERIを敵対視してきた。
「ERIは旧人類による新人類抹殺の急先鋒だ。保護するとの名目で人類の新たな進化を隠蔽し、旧人類の利権の為だけに存在する、悪の組織である」
これがボーマーの主張するところであった。
実際にERIが行っていたのも、封印解除者を探し出し、彼らを抱き込むことで能力者の隠蔽を図っていたのだから、あながち間違いではなかった。
そんな彼らにも大きな転機が訪れる。あの『目覚めの日』である。
それまで彼らは、封印解除された者のみが選ばれた民であると説いてきた。
しかしある日突然、人類すべてが一斉に封印解除されてしまったのだ。
彼らの主張で言えば、人類全てが選ばれた民になってしまった事を意味している。
そこで彼らも主張の転換を迫られた。
「特殊能力に目覚めた者も多い。しかし真に選ばれた者は、進化した人類に相応しい強大なる力を宿している。その資格を得た我々こそが真の選ばれた者である」
と説いたのだ。
ERIも以前から鉄十字団には目を付けており、封印全解除後に彼らがどうするのか一応注目していた。その結果がこれだったので、ERIには失笑が広がったという。
元々、全封印解除前に解除された者たちは、比較的霊力値の高い者が多かった。
鉄十字団を見ても最低で霊力値3万以上であったし、最高のボーマーを含めて霊力値10万以上の者が3名もいた。
そして全封印解除後の人類の霊力値分布は、霊力値1万未満で95%以上を占めている。
霊力値3万未満まで見ると99%を超える。
その数値はERIからも想定分布として公表されていた。実際は過去からの幽界での実績を踏まえた統計的な予想数値である。
これを見て、ボーマーは選ばれし者の定義を変えても問題無いと判断した。
そしてまたもERIとの間に、能力者の争奪戦を繰り広げる事になった。
だが、鉄十字団としてはかえって状況は悪化してしまった。
今まではERIも独自の活動であり、鉄十字団よりは情報網も有ったものの、それ程の差も無い状況であった。
ところが『目覚めの日』以降、ERIは世界での存在感を増し、各国政府、軍、警察組織などと連携して、高霊力値の能力者を探し出しては国家機関へと取り込んでいった。
これはボーマー等にとっては許せない行為であった。
彼らも必死で高霊力値の能力者を探しては勧誘に努めたが、圧倒的な情報網の差は埋められず、結局半年以上経過しても同志を得る事はできなかった。
そんな彼らに接近してきた影があった。




