<ダーズリー卿の怒り>
ダーズリー卿は、本拠地としている例の洞窟内広場で、お気に入りのスコッチウイスキーを飲んでいた。
スコッチウイスキーはダーズリー卿の生まれ故郷の酒である。
その為、悪魔となった今でもスコッチウイスキーをストレートでゆっくりと味わうのが、ダーズリー卿の楽しみであった。
すると突然、何か妙な感覚に襲われて、グラスをテーブルに置くと、天を仰ぐように見つめた。
そこへティモラが駆け込んで来た。
「ダーズリー卿様! 今の感覚は」
ティモラの叫び声に、ダーズリー卿も静かに頷いた。
その場にいたガードナーとデミトリが、不思議そうにダーズリー卿に目を向けた。
「カテリナが死んだようだな……」
ダーズリー卿は静かに呟いた。
「嘘だろ! カテリナが死ぬはずないだろうが!」
「そうですよ。あいつがやられるなんて事は……」
ガードナーとデミトリが、信じられないと声を上げた。
「やはり死んだのですか?」
ティモラの問いに、改めてダーズリー卿は頷いた。
「嘘だろ!」
ガードナーが、まだ信じられないという顔をしている。
「ソルダーに連絡してみる」
そう言ってデミトリが通路に向かって走って行った。
それを見送りながら、ティモラも静かに呟いた。
「カテリナを倒せるのは、あの赤い魔女くらいだね……」
しばらくの後、デミトリが戻って来た。みんなの視線がデミトリに集まっている。
「ダーズリー卿様! 今ソルダーに確認した所、カテリナは20分ほど前に中級悪魔の確保に向かったそうです。そして、今連絡をしてもらいましたが、応答が無いと……」
デミトリは珍しく早口で一気に報告した。
それを見て、ダーズリー卿は静かに目を閉じると、軽く手を振って、
「もう良い」
とだけ静かに答えた。
しばしの沈黙が広場を包み込んでいた。
すると突然、ガシャンというガラスが割れる音が沈黙を破った。
見るとダーズリー卿が立ち上がり、飲んでいたグラスを床に叩きつけていた。
そして燃えるような赤い目をして、ダーズリー卿は叫び出した。
「ウォー!!! 殺す! 殺す! 殺す!」
そして全員の顔を見まわしながら、
「カテリナを殺した奴を突き止めろ! 絶対に突き止めて、俺の前に引きずってこい!」
ダーズリー卿の怒声に、ティモラ達も恐怖に慄き、各人が深々と頭を下げると、通路の方へと走り去っていった。
ダーズリー卿はみんなの姿が見えなくなると、再びソファに体を預け、空間からスコッチウイスキーとグラスを取り出すと、ゆっくりグラスに注いで、珍しく一気に飲み干した。




