<リピウスの帰還>
嘉助の事務所にある、どこに繋がっているのか分からない扉の前では、メイさんがじっと佇んでおり、その背後には跪き、手を合わせて祈るようにジャネットが扉を拝んでいた。
嘉助は終始、事務所内をウロウロと歩き回っている。
そんな扉が開き、中から杏子とリピウスが出てきた。
「!、リ・リビヴズ〜!!!」
その姿にいち早くジャネットが気づき、涙でクシャクシャになった顔で、リピウスの体に飛び込んできた。
ジャネットに飛びつかれたリピウスは、何とかジャネットを受け止めたものの、ヨタヨタと後ろに数歩下がってしまった。
慌てて杏子が体を支え、ジャネットを引きはがした。
「ジャネット! リピウスは疲れているんだ。じゃれつくのは後にしろ!」
杏子の叱責にジャネットがハッとして、後ろに下がった。
嘉助も急ぎ扉の前まで来ると、杏子とリピウスの無事を確認し、安堵の吐息を漏らす。
「大丈夫か?」
杏子はリピウスを気遣いながら、肩を支えている。
「大丈夫」
リピウスは答えると、ゆっくりとメイさんの前に進んだ。
メイさんは、
「お帰りなさいませ、ご主人様」
と言って、美しくお辞儀をしてリピウスを迎えた。
リピウスは片手をスッと伸ばしてメイさんの肩に置くと、
「ただいまメイ。杏子を連れて来てくれてありがとうな」
と労いの言葉を掛けた。
その瞬間、僅かにメイさんの頬が赤らんだように見えた。
その後、リピウスは嘉助に報告しようと歩を進めた。が、膝の力がカクンと抜けたようになり、ヨロヨロと数歩進むと倒れてしまった。
「リピウス!」
杏子が再び駆け寄ろうとすると、先にメイさんがリピウスの元へと移動して、倒れたリピウスを抱きかかえた。
メイさんはそのままソファへリピウスを運ぶと、そっと寝かせた。
「ありがとう、メイ」
寝かされたリピウスが礼を言うと、メイさんは空間からコップを取り出し、オレンジジュースを注いでリピウスに渡す。
リピウスは美味しそうにジュースを飲み干した。
「もう一杯いかがですか?」
メイの言葉に、リピウスは首を軽く横に振り、コップをメイに返した。メイは頷いてコップを受け取り、空間の穴へと戻し、そのまま跪く姿勢でリピウスの横に寄り添っている。
そんなメイさんの後ろから、涙でクシャクシャな顔をしたジャネットが覗き込んでいる。
リピウスと目が合うと、
「リビヴズ〜ゴベンヨ〜……。あだじのぜいで……ぼんどうにゴベンヨ〜」
とジャネットは、良く分からない言葉ながらも謝り続けていた。
「大丈夫だよ。少し疲れただけだからね」
そう言うと、リピウスはジャネットに手を伸ばして、頭をポンポンと軽くたたいた。
そして、ふと気づいたようにディメンションボックスを開いて、中から1体の人形を引っ張り出そうとした。
メイさんが気づいて、出てきた人形の頭を掴むと、そのままズルズルと引き出して床へと置いた。
「これはカテリナの義体だよ」
杏子が嘉助に向かって言う。
「義体? 奴らはそんなものを使っているのか?」
そう言いながら、嘉助はカテリナの姿をしている義体に近づき、何やら調べ始めた。
「ふむ。これは霊界製の義体だね。ちょっと改造はしてあるみたいだけどね」
「だいぶ古そうな感じだな。昔、霊界人から奪った物だろうか?」
「そうかも知れないね。大よそ500年前のタイプだと思うな。戦闘タイプだから、耐久力も60万はあるね」
「それでか……。リピウスの攻撃では、義体を貫けなかったようだぜ」
「だろうね。杏子だから、ここまで貫通できたんだろうね」




