<杏子への救援要請>
ドレッドヘアーの女は凄まじい魔力と闘気を放って、リピウス達を睨みつけている。
その激しさに、思わずリピウスも霊気を周囲に放ち、防御するほどであった。
『ジャネット、今からワープゲートを開くので、即飛び込んでくれ』
リピウスが後ろであぜんとしているジャネットに声を掛けた。
『え? あ、分かった。一緒に逃げるんだね?』
ジャネットが小さく頷く。
『いや、一緒に逃げられるほど、甘い相手では無さそうだ。君だけ行って、杏子を呼んできて欲しい』
『杏子さんを?』
『そうだ、ここにターゲット装置を置いて行くんだぞ』
『わ、わかった』
その時、ドレッドヘアーの女の顔が少し緩んだ。
「おい、おまえは人間だな。もしかしてリピウスか?」
「やはり、おまえはダーズリー卿の仲間なんだな?」
リピウスが聞き返す。
「はっはっは。あたいはカテリナ。こりゃ、少しは楽しめそうだな」
そう言ってカテリナは、ニヤリと笑いながら舌なめずりをした。
その一瞬を捉えて、リピウスはワープゲートを開いた。
『行け!』
リピウスの声に、ジャネットはゲートへ入ろうとするが、その瞬間にカテリナの怒声が聞こえてきた。
「逃がすかよー!」
そう言うとカテリナは、火炎弾を打ち出しながら、物凄い勢いで突進してきた。
「ひっ!」
とジャネットが怯んで足が止まってしまった。
「早く飛び込め!」
リピウスは左手で火炎弾を弾きながら、右手でジャネットの背中を押した。
そこへカテリナが、拳に火炎を纏いながら殴りかかって来た。咄嗟にリピウスは両手を前に出して障壁を張って受け止める。
しかし、その衝撃に2歩押されて下がってしまった。
それがジャネットを押し出す形になり、ジャネットは頭からゲートの中に飛び込んで行った。
ただ、リピウスが下がった時、かかとで何かを蹴った感覚があった。そして小石のような物が、ジャネットと一緒にゲートに転がり込んで行った。
その間にもカテリナの猛攻は続き、リピウスは後ろを気にしながらも、なんとか堪えていた。
ジャネットがゲートに消えた事を確認すると、リピウスは反撃に出た。相手が火炎系の攻撃を繰り出してきているので、リピウスは氷雪系の攻撃で返した。
しばしの攻防の後、カテリナは一旦距離を取り、楽しそうに笑った。
ゲートへ飛び込んだジャネットは、嘉助の事務所の扉から、つんのめるように飛び出して来た。
そして、そのまま床にべちゃっと倒れ込んだ。
事務所には嘉助と杏子が居たが、突然現れた女の姿に驚き、
「誰だ!」
と叫んで杏子が身構えた。
すると倒れた女は顔を上げ、
「杏子しゃ〜ん……。ジャネットでしゅ〜……」
と泣きながら、情けない声を出した。
「「ジャネット?」」
嘉助と杏子が驚きの声を上げていると、ジャネットは四つん這い状態になって、杏子に縋りついてきた。
「あ、杏子さん、リピウスが、リピウスが悪魔と戦ってて……」
杏子は少し(キモイ)と思って体を引いてしまったが、リピウスが戦っていると聞こえたので、ジャネットの両肩を掴んで体をゆすりながら声を上げた。
「おい! 誰と戦っているんだ? リピウスは何処に居るんだ?」
ジャネットの体がグラグラと揺れる。
「落ち着け杏子、それじゃ話せないだろう」
そう言って嘉助が杏子を押しとどめた。
「リピウスが杏子さんを呼んできてくれって、あたしだけワープさせたんだよ」
「じゃあ、リピウスの所へ戻れるのか?」
「は、早く行かないと、すっごくヤバイ悪魔なんだよ」
「分かった。そのドアからワープしよう」
そう言って杏子はジャネットを立たせると、ドアまで連れて行った。
「さあ、リピウスの所へ」
杏子の声でジャネットはドアノブに霊力を注ぎ、置いてきたターゲット装置へと繋げようとした。
しかし、何の反応も無い。
「どうした?」
杏子の声にジャネットは焦って何度も試すが、全くドアは反応しない。
すると後ろから嘉助の声が聞こえてきた。
「おい! なんでこんな所にターゲット装置が落ちているんだ?」
ジャネットが振り返ると、嘉助が明らかに踏みつぶされたターゲット装置を手に持っている。
「Oh! NO!!!」
そう叫ぶと、ジャネットはムンクの叫び状態でフリーズしてしまった




