<ジャネットは悪魔がお好き?>
その頃リピウスは、ジャネットと二人でC国探索を楽しんでいた。
今日はC国北部辺縁に近い小さな町に来ていた。
『やあ、なかなかC国も良い国では無いか』
ジャネットはすっかりC国が気に入ったようで、アチコチでC国料理を(これも調査の一環じゃ)と言いつつ食べまくっていた。
『まあC国の食文化は、日本より遥かに歴史があるからな』
リピウスも本場のC国料理に満足していた。
どう見ても単なる食べ歩き観光にしか見えない二人であったが、食堂で隣のテーブルに居る現地の人達から不穏な話が聞こえてきた。
「おい、昨夜のアレって、まだ捕まっていないのだろう?」
「ああ、どうも今回のアレは手強いらしいぞ」
「警邏の者達が既に5人も殺されたようだからな」
「しかも素早いし、狡猾らしい」
「俺たち出歩いていて、大丈夫なのか?」
「いや、家に居たって侵入して来るらしいぞ」
リピウスはそれらの話を聞いて、大よその状況が掴めた。
『近くで悪魔が出没しているみたいだね』
リピウスの声に、ジャネットは少し驚いたようだ。
『悪魔? そんな者がこの辺に居るのか?』
『恐らくね。かなり厄介そうな話だね』
ジャネットは箸を止めて、少し考えている様だ。
『なあ、リピウスは悪魔を見た事があるのか?』
『ああ、何度か見ている』
『そうなんだ、私も一度悪魔に会ってみたいな……』
ジャネットが不穏な事を言い出した。
『会わない方が良いと思うぞ』
そんな会話をしながら食事を終え、二人は食後の散策へと歩き出していた。
『悪魔は何処にいるんだろうね?』
ジャネットは、さり気なく辺りの様子を伺っているようだ。
『悪魔を探しているんじゃないだろうな?』
流石にリピウスも不安になって、釘を刺しておこうと思った。――その時、霊力探知に魔力が引っかかった。
『あ! 居た』
リピウスは思わず言ってしまい、慌てて訂正しようとしたが、遅かった。
『お! 何処だ? 何処に居るのだ?』
ジャネットは好奇心溢れる目で、辺りをキョロキョロと見回している。
悪魔はリピウス等の居る場所から、北西に280m程先に居るようだ。動かない所を見ると、隠れて獲物を喰らっているのかもしれない。
リピウスはジャネットの問いには答えず、悪魔とは反対の方へ進もうとしていた。
『なあ、私も一度悪魔を見てみたいんだけどな』
ジャネットが甘えるような声を出す。
『あんなの見るもんじゃないよ』
リピウスは突き放すように言い、ドンドンと進んで行ってしまう。
『あ! あれだな。北西300m位に魔力が反応しているぞ』
いつの間にかジャネットは霊力探知機を出して、見ていた。
(こいつも持ってたのかよ!)
内心リピウスは驚いた。今まで彼女が霊力探知機を使った事は無かったので、てっきり持っていないと思い込んでいた。それでも無視して反対方向へと歩きだした。そして再度注意を促そうと思い振り返った。
『あのな、悪魔ってのは……』
しかし、既にジャネットは勝手に悪魔の居る方向へと足早に向かっていた。
呆れた顔をしながらも、止む無くリピウスは後を追って行った。




