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<夢幻の塔と預言書の番人>

ヨルダと嘉助とジンは長い旅の末、ようやく夢幻の塔に着いた。

ここまでの旅路は、天界人といえども過酷なものであった。夢幻の塔は天界の外れに広がる、広大な砂漠地帯に立っている。

途中に目印なども無く、方向感覚に優れた者の案内が無ければ、辿り着く事もできない場所であった。


その意味で、ジンが同行した事は大きかった。彼は夢幻の塔までの最短距離を正確に感知しながら、ヨルダ達を案内していった。


「ふう〜。やっと着きました」

嘉助の言葉に、ヨルダも安堵のため息を漏らした。

「はあ〜……。久しぶりに来たが、ジンが居なかったら、わしでは厳しかったのう」

「全くですね。僕も2千年以上前に一度来ただけですからね。ジンには感謝するよ」

「私も久しぶりですが、このような場所には慣れていますからね」

ジンも無事に到着してホッとしているようだ。


3人は塔の入口へと進む。

入り口には石像が立っており、3人が近づくとギロリと目玉だけを動かして睨んで来た。

しかし口調は丁寧な物で、静かに語りかけてきた。


「ようこそ老師。随分お久しぶりです」

「うむ。久しぶりに世話になるぞ」

ヨルダが石像を見上げながら声を掛けると、石像の表情も心なしか緩んだように見えた。


「どうぞお入りください。ガブリエル様もお待ちのようです」

「奴とは100万年ぶりじゃな……」

そう言うと、ヨルダは嘉助とジンを促して、石像の足元にある扉から入っていった。


塔の中に入ると、そこは中央に螺旋階段が上へと伸びている。その階段を囲むように、ぐるりと壁には書籍が並んでおり、階段の途中途中には、壁側へ伸びる通路が放射線状に見えている。


「老師は預言の書を見た事はあるのですか?」

嘉助が聞いた。

「いや、わしは無いのう。おぬしらはどうなのだ?」

「ここへ来たのは3回目ですが、私も見た事は無いですね」

ジンが答える。


「僕は2回目だけど、預言の書は見た事は無いね。まあ見たと言う人の話は聞いたけどね」

嘉助は少し昔を思い出している様子で答えた。

「ふむ、彼らか……。見た事が幸か不幸かは分からんがな」


そんな話をしながら、3人は螺旋階段をゆっくりと上がっていく。

螺旋階段は無限に続くのではないか? と思うほどであったが、やがて終わりが訪れ、塔の最上階と思しき広間へと出た。


「さて、奴が出てくれば、ビンゴなんじゃがな」

ヨルダはそう言って広間の中央へと進み、周囲を見渡している。

嘉助とジンも一緒に中央へと行き、同じように周囲を見ていた。


すると、目の前にスーッと人影が現れた。それは青白い半透明の体をした人のようであった。


「久しぶりじゃな、ガブリエルよ」

ヨルダが現れた人に向かって呼びかける。

『ほんに久しぶりだなヨルダよ』

懐かしそうな顔をして、ガブリエルと呼ばれた人物がヨルダに応えた。


半透明の体をした人物は、ヨルダと共に「原初の7人」と呼ばれているガブリエルである。

現在の天界と霊界の政治体制を作り上げたのは、彼と仲間の4人の最初の霊界人であった。

彼らは天界に元老院議会を制定し、初代元老院を原初の7人で構成し、その頂点である元老院議長に就任したのがガブリエルであった。


そして彼はその後に女神さまの天罰を受ける事となり、以降は昇天する事も許されず、夢幻の塔に幽閉されて女神さまの預言書の番人を務めることになった。

他の4人は同時期に天罰を受け、そのまま昇天している。それはおおよそ100万年前の出来事であった。


「おぬしが現れたという事は、わしにも預言書が見られるのじゃな?」

『うむ。そろそろ現れる頃と待っておったぞ』

「そうか……。他の者達も見られるのか?」


ヨルダの質問に、ガブリエルは天を仰ぎ、何やら考えているようであった。

『うむ。その者たちも預言書の対象者と確認できた。一緒に見るが良い』

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