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<リピウス、おおいにゴネる>

後日、ヨルダ爺はデュークを伴ってリピウスを訪ねた。

リピウスはいつものように二人を迎えたが、すぐに彼らの様子がおかしいことに気づいた。


「今日は二人とも、なんだか変じゃないかい?」

その問いかけに、二人は顔を見合わせた。デュークは既にヨルダから事情を聞いていたため、どこか申し訳なさそうな、気まずい表情を浮かべている。


「すまん、リピウス」

唐突に、ヨルダ爺が頭を下げた。

「どうしたんだい?」

驚いて聞き返すリピウスに、ヨルダ爺は意を決して打ち明けた。

嘉助にリピウスの存在を突き止められてしまったこと。そして嘉助が「リピウス」としての協力を求めており、一度直接会って話を聞いてほしいと言っていることを。


「なるほどね……。まあ、そろそろ気づかれる頃だとは思っていたけど」

リピウスは神妙な顔つきで考え込んだ。

「なあ、嘉助は信頼できる男じゃよ。会うだけでも、会ってくれんかのう?」

ヨルダ爺はリピウスの反応を伺いながら、懇願するように言った。


「……このままだと、ヨルダ爺にも迷惑がかかりそうだね。会うだけなら、いいよ」

「おおー! そうか、そう言ってくれるとわしも心が軽くなるわい」

ヨルダ爺は素直に喜び、隣でデュークも「良かったじゃないか!」と声を上げた。


「俺の方こそごめん。俺が我儘を言っているせいで、ヨルダ爺に余計な負担をかけてしまったね」

「いやいや、我儘を言ってきたのはわしの方じゃよ。リピウスにはどれだけ助けられたことか」


こうしてリピウスは、ヨルダ爺とデュークを伴って嘉助に会いに行くことになった。


数日後、調整を終えてついに対面の日を迎えた。場所は嘉助の事務所である。

3人が事務所の扉から姿を現すと、既に清君が待機しており、そのまま応接室へと案内された。

リピウスとヨルダ爺がソファに座り、デュークはヨルダの後ろに控える。その正面に、嘉助が杏子を伴って腰を下ろした。


「やあ、来ていただいてすみませんね」

嘉助はいつも通り、気さくな調子で挨拶をした。

「えーと……リピウスさんは、杏子のことは既にご存じですよね?」

嘉助がじっとリピウスを見つめる。


リピウスは軽く頷くだけに留めた。嘉助とは初対面であり、相手が霊界の役人である以上、相当に警戒しているようだ。

「嘉助から聞いたわ。以前サンシャインでダーズリー卿へ誘導してくれたのは、あんただったんだってね。まずはお礼を言わせてもらうよ」

杏子はサンシャインでの助力に感謝を伝えたが、リピウスは彼女に対しても、チラリと顔を見て頷くだけだった。


「あ、おほん。まあ色々とあるじゃろうが、早速本題に入らんかの?」

ヨルダ爺が場の空気を変えるべく提案した。

「そうですね。では一応、僕の方で考えた協力者に関する契約内容や業務内容をまとめました。まずはこれに目を通していただけますか?」

嘉助は数枚の書類を、リピウスの前にスッと押し出した。


リピウスは軽く会釈をすると、無言で書類を確認し始めた。

一通り目を通し終えると、彼は少し渋い表情を浮かべ、書類を嘉助の方へと押し戻した。

「この内容では、お受けすることは無理だと思います」

それが、リピウスの出した答えだった。


その場にいたリピウス以外の全員が、その拒絶に戸惑いを見せた。

「のうリピウス。少し具体的に、受けられない理由を教えてくれんかのう?」

ヨルダ爺が取りなすように、優しく問いかける。


「まず『提供されるスマホを常時携帯し、連絡可能な状態にする』という点が承服できません」

リピウスはきっぱりと言い放った。

「うん、それは老師から伺っていて予想はしていたのですが……その条項を外すのも組織としては難しいのですよ。だからこそ、解決策を話し合いたいと思いましてね」


「この条項を受け入れれば、自宅の場所は特定され、常時監視されているのと同じことになります。それなら、一切の関わりを持たない方がマシだと言っているんです」

「なあリピウス。いつものお前なら、もっと前向きに妥協案を考えるんじゃないか? 今日のお前は少しおかしいぞ」

デュークが、リピウスらしくないピリピリとした反応に驚いて忠告した。


「どうやらリピウスさんは、僕らをひどく警戒しているようですね?」

嘉助も困ったような表情を浮かべる。

「俺もね、こういう内容は予想していたんだ。だけど、ヨルダ爺の話も聞いているのだから、嘉助さんならもっと妥協できるアイデアを持ってきていると期待していたんですよ」

リピウスが険しい表情で嘉助を見据えた。


「なるほど。僕の提示が期待外れだった、ということですね?」

嘉助の言葉に、リピウスは大きく頷いた

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