<嘉助にバレた?>
数日後、ヨルダは嘉助の事務所を訪問した。
リピウスから聞いた「C国の内情」を、嘉助の耳にも入れておきたかったからである。
「何かと忙しいじゃろうに、すまんな嘉助」
「いえいえ、老師には常日頃お世話になっておりますから。いつでも遊びに来てください」
嘉助は心の底から歓迎している様子だった。
すぐに杏子が、どこか慣れない手つきでお茶とお菓子を運んできた。
「お茶運びは、杏子には似合わんのう」
面白そうにヨルダが冷やかす。
「……すみませんね。どうもうちの連中はガサツな者が多いものですから」
嘉助が苦笑いしながら言うと、杏子は無言で嘉助のお茶とお菓子を取り上げた。
「ガサツ者の淹れたお茶なんて、飲みたくないんだろ?」
そう言い捨てると、杏子は嘉助の分のお茶を、自分の口へガバッと流し込んでしまった。
「ほっほっほ! 嘉助よ、すまんの。わしの余計な一言で、杏子を怒らせてしまったようじゃ」
「いえいえ、老師が悪いのではありませんよ。……嘉助はお茶なんて自分で淹れればいいのです」
杏子はそう吐き捨てて、足早に下がっていった。
「さて……。ところで、今日来たのはERIとC国の件なんじゃが」
「取引停止をした件ですか?」
「うむ。その背景にな、C国が独自に霊界の装置を製造しているという情報を得てな」
「なるほど。実は先日、我々もC国でERI製と同等の装置類が運用されているとの情報を掴んでいます」
「……やはり、既に知っておったか」
嘉助によれば、協力者が裏ルートで入手したC国内の情報の中に、能力無効化装置や霊力探知機、さらには簡易鑑定装置まで自国製造している形跡があったという。
「最初は、ERIに未返却の機器を使い回していると考えたのですが、どうも独自に製造された個体である可能性が高い。しかし……」
「それが本当であれば、C国の人間だけでは、まず不可能じゃと思うのじゃがな」
「ええ。ERIにも再度確認しましたが、霊晶石を使用する装置は、現在の人間界の技術では製造不可能だという結論になりました」
「うむ。わしの知人も、全く同様の見解じゃったよ」
「となると……誰か霊界の者が、C国に協力していることになりますね?」
「そう考えざるを得んじゃろうな」
嘉助は少しの間考え込んでいたが、やがて顔を上げて言った。
「また、あの連中……ということですかね」
「ふーむ……四仙会かの?」
「これもまた、学園長たちのお力を借りることになりそうですね」
ヨルダが深く頷いていると、突如、嘉助がグイッと身を乗り出してきた。
「ところで老師……。いつも老師に助言している『知人』の方ですが、もしかして人間ではないのですか?」
突然の直球に、ヨルダは露骨に狼狽した。
「い、いや……その、な、なんでそう思うんじゃ?」
明らかに動揺を隠せないヨルダを、嘉助の鋭い視線が射抜く。
「いやね、以前からちょっと思ってはいたんですよ。……根拠なら、いくつかあります」
嘉助は静かな口調で、これまで積み重ねてきた違和感を一つずつ並べ始めた。




