<裏切り者がいる?>
久しぶりにヨルダ爺が、デュークと共に遊びにやってきた。
いつものように、淹れたてのコーヒーを飲みながら、まったりとした時間を過ごす。
しばらくは世間話をしていたが、リピウスは気になっていた「ERIとC国」の話を切り出した。
「ほう! そんなことが起こっておるのか」
ヨルダ爺はこの話を知らなかったようで、意外そうに目を見開いた。
「ふ〜ん……。じゃあC国ってのは、ERIの協力を得ずに、独力で霊界の装置を造ったっていうのか?」
「まあ、C国内の情報を探る限り、そういうことになるね」
「そんなこと、できるのか?」
デュークがヨルダ爺の顔を覗き込みながら尋ねた。
「さあのう。わしはそういう機械のことは苦手じゃからのう」
リピウスが自分の考えを補足する。
「今の人間界の技術では無理だと思うよ。第一に『霊晶石』の入手方法を知らないはずだ。第二に、その霊晶石に霊力を封入して活用する術も、まだ見つけていないはずだからね」
「なるほどのう。確かに霊晶石の扱いは、今の人間界では不可能じゃろうな」
「霊晶石抜きで、同等の機械を作るってことはあり得ないのか?」
デュークの素朴な疑問に、ヨルダ爺とリピウスは揃って考え込んでしまった。
「はてさて、わしには見当もつかんわい」
ヨルダ爺はあっさりとギブアップした。
「今は思いつかないな。そのあたりはERIの技術者の方が詳しいだろうけど……」
「なるほどのう。……ところでリピウス、この話を嘉助にしても良いかな?」
ヨルダ爺がリピウスをじっと見つめて聞いてくる。
「あはは。ヨルダ爺、嘉助さんに話したいんだね。別に構わないよ」
「恩に着るわい」
とヨルダ爺が礼を言うと、再びデュークから、素朴な質問が飛んだ。
「ところでさ、リピウス……お前、C国政府の機密情報なんて、一体どこから入手しているんだ?」
途端にリピウスは、バツが悪そうに目を伏せてしまった。
「あ! お前、また不正な手段でアクセスしただろ!」
「……だってさ、あの国は情報統制が厳しいんだ。普通の方法じゃ、現地の生の情報なんて得られないんだから」
リピウスは、あくまで止むを得ない行為だったのだと主張する。
「ほっほっほ。何を言おうと、不正は不正じゃよ。そんなことばかりしていると、いざという時、霊界に招かれなくなるぞ」
ヨルダ爺の言葉は、意外にも辛辣だった。
「そうだぞ。だいたいリピウスは、調子に乗るとやりすぎるからな。おいらも心配してるんだぞ」
リピウスは再び視線を落とし、黙り込んでしまった。
「……まあ、そんなリピウスの無茶のおかげで、わしらも随分と助けられてはおるからな」
ヨルダ爺がフォローするように付け加えると、リピウスはパッと顔を上げ、「うん、うん」と力強く頷いた。
「実を言うとな、先日、嘉助とERIに公安庁の査察が入ったんじゃよ。その名目の一つが『霊界技術情報の流出』という嫌疑でな」
「えっ? じゃあ、本当にERIからC国へ技術が流出したってこと?」
「査察の結果では、そのような事実はないと一応は証明されておる。じゃが、リピウスの話を聞く限り、どこからか情報が漏洩しておるのは間違いなさそうじゃな」
「……霊界に、裏切り者がいるってことですかね?」
「そうじゃな。考えたくはないことじゃが……。とにかく、この件は一度、嘉助にも話しておきたいんじゃ。嘉助の方でも、独自に何かを掴んでおるかもしれんからのう」




