<悪魔対策は打つ手無し>
今回も四仙会による企みだと知り、嘉助はどうしてやろうかと思案を巡らせているようだった。
「で、どうする気かね?」
学園長が嘉助の顔を覗き込むように尋ねた。
「そうですね〜……。派遣されたお嬢さんを虐めても、あまり面白くはないですからね」
嘉助が答えると、学園長はさもあらんと頷いた。
「やはり、虐めるなら『頭』の方が面白いか」
「ははは。まあ、そういうことですね」
嘉助が不敵に、悪い顔をして笑う。
「ふふふ。そういうことならな、閻魔よ」
学園長も同様に悪い顔をして閻魔を見た。
「まったく、お前らを敵に回したくはないものだな」
閻魔は首を振り振り、やれやれといった顔をしている。
「まあ、副総監のことはこっちに任せておけ。ゼル、また少し動いてもらうことになるが、いいかな」
「はい。ミカエルもそろそろ四仙会にはうんざりしていますからね。副総監には可哀想ですが、ここらで少し凹ませておきたいでしょう。上手くミカエル一派も利用できると思います」
それを聞いて、学園長と閻魔と嘉助が顔を見合わせてニンマリと笑った。
「それよりも、悪魔討伐の件が少し気になるのう」
老師が考え込むように言った。
「確かにな。特にダーズリー卿が気になるな」
閻魔もそこを危惧していたようだ。
嘉助は、改めて人間界での悪魔の発生状況を報告した。
予想通り、文明度の高い先進主要国に集中している。だが今回は、過去の200年周期時と比べても、全人類の封印が解除された影響もあり、悪魔落ちの数が桁違いに増える可能性を秘めていた。
「今のところは下級悪魔の発生のみで、ある程度は人間側の能力者で対処できています。ですが、悪魔が一人誕生するごとに、平均5人程度の犠牲者が出ている状況ですね」
「そういえば、日本で上級悪魔も誕生したのではなかったか?」
閻魔が嘉助に問いかけた。
「はい。ただ我々が確認する前に、ダーズリー卿に連れ去られたようです。まあ、結果的には被害を最小限に抑えられたとも言えるのですけどね」
嘉助の答えに、ヨルダ老師は居心地が悪そうに、少しモジモジとお尻を動かした。
「今の人間界で、上級悪魔に対抗できる能力者はいるのか?」
学園長が聞く。
「難しいですね。協力者で霊力20万越えは2名のみ。最強で27万ですが、まだまだ未熟で……。とてもダーズリー卿たちのような古参に対処はできないでしょうね」
「その程度では厳しいだろうな」
閻魔の声に、他の者たちも大きく頷いた。
「ゼルよ、その辺のことは議会ではどうなんだ?」
「はい。議員たちの意見では、大勢は『人間に任せておけばいい』という方向ですね。背景には人間界の人口増もあり、中には『悪魔で人口が減れば……』などという馬鹿者もいるようです」
「はっ! 評議会議員も落ちたものだな」
「その辺は、四仙会に毒されているのやもしれんのう」
老師も深く嘆いている。
その後も議論を重ねたものの、悪魔対策に関しては明確な方向性を見出せなかった。
それもこれも、根底にある「人間界の人口増」と、それに関連した「霊界人口増加問題」に触れてしまうからであった。ここを突かれると、現状の幽界や霊界学園にとっては都合の悪い側面もあった。
「ハンター協会だけでも、少し動けんかのう?」
老師がポツリと言った。
「ハンター協会ですか……。討伐令が出ないと、懸賞金が出ませんからね」
ゼルが難しい顔をする。
「ダーズリー卿たちの懸賞金は出るが、居所が掴めていなければハンターを集めるのは無理だな」
学園長も渋い顔をしている。
「ふむ……。まあ、わしから一度、協会長に相談してみよう。奴の方がこの手の悪知恵には長けておるからの」
老師の言葉に全員が頷き、会議は終了した。




