<あれ?おかしいな?>
数日後。池袋の連続殺人事件は、依然としてニュースを賑わせていた。
警察の捜査では「犯人は行方不明になっている高校生」という見方が強まっているようだ。
リピウスが何気なくニュースを眺めていると、画面に被害者の顔写真が映し出された。
「あれ? こいつが被害者なのか?」
リピウスの記憶が確かならば、被害者として報道されているその高校生は、あの日戦った「少年悪魔」の顔そのものだった。
名前は、御剣翔太。
「おかしいな……。絶対に、あの悪魔はこの少年だったはずだけど……」
気になったリピウスは、彼らが通っていた高校を確認することにした。
ネットで検索すれば、すぐに校名は判明した。マップで位置を特定し、高校近くのアクセスポイントから複数の「霊力ドローン」を放つ。
ドローンを校舎内や学校周辺の店舗に潜り込ませ、しばらく様子を伺った。昼休みになると、生徒たちの会話から次々と情報が舞い込んできた。
まず、御剣君について。
彼は同級生3人から凄惨な執拗にいじめを受けていたようだ。
その3人は学内でも質の悪い遊び仲間で、半グレの先輩との繋がりを盾に、悪質な恐喝やカツアゲを繰り返していたらしい。
気が弱く、格好の標的にされていた御剣君は、3人組から「ミツギ(貢ぎ)君」と蔑称で呼ばれていたという。
(……ということは、事件現場で御剣君は、3人組と半グレの先輩にリンチされていたのか?)
更に放課後になって、もっと辛辣な情報が手に入った。
御剣君には2歳下の妹がおり、その妹が非常に可愛いと評判だったらしい。
それを知った3人組が、半グレの先輩に献上しようと画策していたと言うのだ。
また、あの日は3人組が、妹を連れて来るようにと、御剣君に命じていたと言う情報まであった。
(もしかしたら・・・御剣君は妹を連れて行かずに、呼び出し場所へ行き、リンチにでも有ったのでは無いか?)
以前、ヨルダ爺から聞いた話がある。
「悪魔落ち」は、恐怖や憎悪といった負の感情が、魂の限界を超えてしまった場合に発生する。
稀に残虐性に魂が耐えきれなくなった場合もあるそうだが、基本的には前者だ。
集まった情報を繋ぎ合わせれば、あの日の悪魔が御剣君であることは疑いようがない。
なのに、なぜ彼の遺体は「被害者」として他の連中と同じ場所に転がっていたのか。そして、消えたはずの主犯格の生徒はどこへ行ったのか。
だが、調査を進めるうちに一つだけ「救い」が見えてきた。
ドローンが拾った情報によれば、御剣君は周囲の大人たちからも愛される優しい少年だったようだ。家族への同情の声も、非常に厚いものがあった。
対照的に、行方不明となっている「主犯格の生徒」は、半グレに妹を貢がせようと画策していた張本人であり、他にも多くの生徒をいたぶってきた、聞けば聞くほど救いようのない存在だった。
(これで良かったのかもしれないな……。……あれ? もしかして、ダーズリー卿の仕業なのか?)
リピウスは完全には得心できないものの、世間が出した「結果」を、自分なりに受け入れることに決めたのだった。




