<まだ謎だらけ>
ここは監視員用社宅ビルの2階にある会議室。
事件の翌日、協力者たちも集まり、報告会が開かれていた。
「ふにゃ〜……もうダメだよぉ……」
現場では毅然と振る舞っている桂木舞だが、身内だけの場では完全に素の状態に戻ってしまう。
「はいはい。舞もよく頑張ったわね」
「紫音〜……もうあたし、悪魔は嫌だよ。臭いし、醜いし、グチュグチュだし、ベトベトだし……。悪魔だけは絶対に嫌っ!」
舞は池袋の事件でも、現場検分や周辺捜査に駆り出されており、今朝がたようやく帰宅したばかりだった。
そこへ、嘉助たちが会議室に入ってきた。
嘉助に杏子、清君、その他監視員が3名。
「舞はまた管を巻いてんのかよ」
杏子が呆れた顔で舞を見やる。
「まあ、舞君も随分と頑張ったみたいだからね。ここにいる時くらいは、許してあげようよ」
「嘉助は舞に甘すぎるんだよ」
嘉助は聞こえないふりをして、手元の資料を広げた。
「さて、昨日の池袋事件についてだけど。真美ちゃん、まとめてくれたかな?」
「あ、はい。ニュースやネットに出回っている動画などを整理して、清さんに送ってあります」
「ありがとう。じゃあ清君、報告をお願いできるかな」
促されて清君が立ち上がり、プロジェクターを操作しながら説明を始めた。
「まず被害者ですが、恐らく悪魔が誕生したと思われる場所で、6名の遺体が確認されています」
画面に被害者の顔写真が映し出される。
「3名は豊島区の高校に通う生徒。後の3名は同校の卒業生で、現在は池袋界隈で活動している半グレのメンバーです。ただ、現場にはもう1名、高校生がいた可能性が高いのですが、その1名は現在も行方不明となっています」
「じゃあ、その消えた1名が悪魔落ちしたってことかい?」
杏子の言葉に、清君が軽く頷く。
「確証はありませんが、こちらの映像を見てください」
再生された動画には、薄暗い公園で二人の人影が激しくやり取りする様子が映っていた。
「現地にいた一般人がスマホで撮影したものです。よく見ると、悪魔らしき男は高校生風の服装をしているように見えます」
「暗くてよく見えないね……」
サトちゃんが画面に顔を近づける。
「確かに学生服に見えるな。これが行方不明の生徒である可能性は高いね」
「悪魔と戦っている男性は、公園で亡くなった人ですか?」
「いえ、亡くなったのは別の男性です」
清君は別の顔写真を提示した。
「この戦っていた男性も素性が分かっていません。映像の最後で、男性は一旦公園から逃走。それを悪魔が追走する形で、撮影範囲外へ消えています」
「だけど、これだけじゃどっちが悪魔なのかも分からないんじゃ……」
「目撃者の証言で、学生風の方が悪魔であると確認が取れています」
「で、この後なのですが……」
清君の話によれば、ここから先の映像記録は一切存在しないという。ただ、少し離れた場所で爆炎が上がる様子や、凄まじい衝撃音の後に土煙が立ち上る様子を捉えた断片的な動画はあるそうだ。
「杏子さんと共に現場へ急行しましたが、到着した時には既に誰もいませんでした。ただ、着く直前までは、魔力の点が4つ、霊力が1つ確認されています」
清君の説明はそこで終わった。
「魔力が4つということは、恐らくダーズリー卿の一味だね。今回誕生したのは上級悪魔の可能性が高い。いつもの通り、彼らが連れ去ったと考えられるよ」
「あ〜あ……。もうちょっと到着が早ければな!」
杏子が悔しそうに机を叩く。
しかし、嘉助は別の疑念に駆られていた。
(また、池袋で『謎の能力者』か……)
嘉助の脳裏に、かつてサンシャインで杏子を誘導し、ダーズリー卿と戦わせた、あの正体不明の存在が浮かんでいた。




