<リピウス帰還>
リピウスは、そのまま自宅へと帰還した。
リビングに戻ると、そこには既にヨルダ爺とデュークが待機していた。二人はリピウスの無事な姿を見るなり、歓声を上げて迎えた。
「おー! リピウス、無事じゃったか! 心配したぞ」
「リピウスなら大丈夫だって、おいらは信じてたからな!」
そんな喧騒の中、セバスチャンは黙々とコーヒーを淹れ、リピウスをいつもの席へと促した。
ヨルダ爺たちが点けていたのだろう、テレビでは池袋で起きたばかりの事件が速報で流れている。
リピウスはテレビをチラリと一瞥したが、すぐに席に腰を下ろした。淹れたてのコーヒーを一口含み、
「逃げられちゃったよ……」
と、力なく呟いた。
「ほう……。だが、無事に戻れたのならそれで良いではないか」
「そうだぞ。あんな化け物みたいな魔力の持ち主を相手にしたんだろ?」
落ち込むリピウスの様子を見て、二人は精一杯の言葉で励ます。
「もう一息で、止めを刺せたんだ。……なのに、またあの三人組が現れて、あいつを連れ去ってしまったんだよ」
「なんじゃと! まさか、ダーズリー卿たちが現れたのか?」
ヨルダ爺が驚愕の声を上げた。リピウスは重く頷く。
「あ奴らまで現れて……むしろ、よくぞ無事で戻ったな」
「奴らの狙いは、あの少年悪魔を保護することだったらしい。だから、戦うこともなくすぐに消えてしまったよ」
「なるほどのう。もしかしたら奴らは、東京に新たな上級悪魔が誕生することを予見しておったのかも知れんな」
「ヨルダ爺、上級悪魔って……そんなことまで分かるのか?」
デュークが不思議そうに尋ねた。
「いや、わしも聞いたことはないが、ダーズリー卿はある意味で『特殊』じゃからな。理屈では測れん」
「俺も、以前あいつらを見かけてから、メイやセバスと必死に修行してきたつもりだったんだ。今回は大丈夫だと思ってた……。でも、実際にガードナーの攻撃を受けた途端、やっぱりビビっちまったみたいだ」
「まあ、無理もない。あ奴らは本当の化け物じゃからな」
「そうだよ。お前は勇敢に、あの悪魔に向かっていったじゃないか」
「うん。あの少年悪魔相手なら、十分に余裕があったんだけどね。でもダーズリー卿たちは、やはり別格だったよ。悔しいけど、場数の差かもしれないね」
リピウスは二人に話を聞いてもらったことで、少しだけ胸のつかえが取れたようだった。
「ところで、リピウスの話では、あの生まれたての悪魔は『少年』だったという事かの?」
「見た感じではね。魔力は30万以上ありそうだったけど、まだ力の使い方も分からずに暴れているだけ、って感じだったな」
「魔力30万……。お前、よくそんな化け物と戦ったな」
「向こうがまだ未熟だったからだよ」
「まさに、生まれたての悪魔じゃったか。何がきっかけだったのか……ある意味では可哀想な存在じゃな」
「ニュースでは何か言っていたかい?」
「まだ、はっきりしたことは分かっておらんようじゃ」
「リピウスが戦っている映像も流れたぞ。夜だし遠目だから、はっきりとは見えないけどな」
「分かっているのは、公園で男性が一人死亡したことだけじゃな」
「……たぶん、最初に魔力が吹き上がった場所でも、何人か犠牲者が出ていると思うよ」
リピウスの静かな言葉に、ヨルダ爺たちも重々しく頷くしかなかった。




