表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/230

<ダーズリー卿再び>

たった今リピウスがいた場所に、凄まじい衝撃が走った。

グラウンドの土が激しく舞い上がり、渦巻いている。


「こ、これは……!」

リピウスが唖然として見つめる中、薄れていく土煙の向こうから、大柄な男の姿が浮き彫りになってきた。


(なぜだ……。なぜ直前まで気づかなかった!?)


リピウスは戦闘中、常時フルパワーで魔力探知を展開していたはずだ。しかし、攻撃を受けるその瞬間まで、敵の接近を微塵も察知できなかったのだ。

リピウスは、眼前に立つ男を凝視した。


(この男は……間違いない)


過去に二度、その姿を見ている。ダーズリー卿の傍らに控えていた従者、ガードナーだ。


「へっ! 流石に避けるかよ」

吐き捨てるように男が呟く。

その背後から、さらに不気味な声が重なった。


「おお、可哀想にのう。こんなに怯えて……。大丈夫だ、わしらが守ってやるからな」


ガードナーの後ろを覗き込むと、そこにはあの初老の男がいた。

男は、さっきまでリピウスが追い詰めていた少年悪魔を、愛おしそうに抱きしめている。その横には、大柄な女悪魔・ティモラの姿もあった。


「ダーズリー卿! なぜお前たちがここに!」

思わずリピウスの声が漏れた。


「おや。わしらのことを知っているようだな」

怪訝そうな表情でダーズリー卿がリピウスを見やる。

「こいつ、霊界人か?」

ガードナーが問うと、ティモラが即座に否定した。

「いいえ、生身の臭いがする。そいつは人間よ」

「なら協力者か。まあどっちでもいい。始末しておくかい?」


ガードナーが軽く後ろに視線を送りながら尋ねる。

「いや、今回はこの子を保護しに来ただけだ。じきに例の野蛮な魔女も来るだろうしな」

「そうですね。ガードナー、引き上げるよ」


ティモラの合図に、ガードナーは不服そうに首を振りつつも、ダーズリー卿の傍らへと移動した。


「わしはダーズリー卿。……おぬしは?」

少年悪魔をティモラに預け、ダーズリー卿が静かにリピウスを見つめた。


「……リピウスだ」

その問いに、抗うことができなかった。

答えずにはいられない、得体の知れない圧迫感に気圧されたのだ。


「リピウスか……。覚えておこう」

ダーズリー卿がそう告げた瞬間、彼らを黒いもやが包み込み、そのまま霧散するように消えてしまった。


(クソッ……! なぜ俺は動けなかったんだ!)


終始、圧倒されていた。

反撃どころか、身動き一つ取れずにただ見送るしかなかった自分に、リピウスは激しい嫌悪感を抱いた。


と、そこへ急速に接近してくる強大な霊気に気づく。

(……杏さんだな。今会うのはまずい)


リピウスは空間に手を翳し、開いた「穴」の中へと滑り込むように姿を消した。


数秒後、誰もいなくなったグラウンドに、杏子と清君が到着した。

「……もう、誰もいませんね」

「少し遅かったようだな」


杏子は悔しそうに辺りを見回した。

「直前まで、魔力の点が四つ、霊気が一つあったはずなのですが」

痕跡すら残さない鮮やかな消え際に、杏子は唇を噛み締めながら、撤収の指示を出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ