表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/224

<恐れていたことが>

『目覚めの日』から、丁度1年が経過したある日。


ここは都内某所の繁華街。小さなビルが立ち並び、飲食店の看板が至る所にひしめいている。

風俗店も多く、お世辞にも治安が良いとは言えない。夜の人出は多く、酔客同士の喧嘩沙汰も日常茶飯事の場所だ。


そんなビルの間の狭い路地裏に、警察官たちが集まっていた。

そこへ、一般の警官とは異なる制服に身を包んだ5人組が到着した。彼らは進入禁止の黄色いテープをくぐるため、警備の警官に警察手帳を提示しながら尋ねた。


「現場はこの奥?」


警備の警官がテープを上げて迎え入れると、5人は重苦しい足取りで奥へと進んでいった。

彼らは警察庁・特殊犯罪対策室1班。班長は、桂木舞かつらぎ まい巡査長である。

彼女は政府主導で対策室が設置された際、自らが能力者であることを申告し、警視庁生活安全課から転属となった。その後、ERIで訓練を積み、現在は日本政府とERIの窓口としても活動している。


そして『目覚めの日』以降は、正式に警察庁に発足した、特殊犯罪対策室に配属となり、第1班の班長として活動を始めていた。



「う……酷い匂いですね」

「駒木、アレの現場は初めてだったか?」

舞の問いに、駒木と呼ばれた青年は顔を顰めて深く頷いた。


「ご苦労様です」

近づいてきたのは、所轄署の刑事と鑑識課員だった。

「遺体の状況は?」

「まるで獣が食い散らかしたような有様ですよ。ここの他に、目と鼻の先でさらに2体の同様な変死体が発見されています」


鑑識課員の報告に、所轄の刑事が不快感を隠さずに口を挟んだ。

「こいつらは一体何なんだ? 先日、墨田区の方でもあったと聞いているが、我々には一切情報が下りてこない。これも能力者による犯行なのか?」

「……ある種の能力者によるものだ、とだけ今は答えておきます」


舞はそう言い残すと、メンバーと共に遺体と周囲の状況を精査し始めた。

鑑識の報告にあった他の遺体も確認し終えると、彼女は他の者たちから少し離れ、どこかへ連絡を入れ始めた。


「はい。遺体状況から見て、間違いないと思います。場所は……」


連絡を終えた舞は、手元の丸いレーダーのような装置を見つめながら、鋭く指示を出した。

「駒木は私と一緒に東側を確認。他の3名は西側を確認して。まだ近くに潜んでいる可能性がある、十分に注意するように!」


そう言うと現場から離れていった。


* * *


舞からの連絡を受けていたのは嘉助だった。

彼は報告を聞き終えると、即座に杏子へ指示を飛ばす。

「杏子、舞からの連絡だ。至急現地に向かって探索を頼む」


「わかった。……最近、日本でも増えてきたな。欧米でも毎日のように報告が上がっていて、もう対応が追いつかない状況だぞ。なんとか増援を得ないと、対処しきれん」

「わかっているよ。でも、人間側である程度対処してもらわないとね。僕たちが表立って目立ちすぎるわけにもいかないから」

「そうだな……ま、できる限りのことはするよ」


そう言い残し、杏子は事務所を飛び出していった。


嘉助たちが最も恐れていた事態が、ついに本格化し始めていた。

これらの変死体は、悪魔に襲われた無惨な結果である。

当初は予想に反して悪魔の発生は少なかった。しかし最近になって欧米から報告が相次ぎ、日本でも先日、初の犠牲者が出たばかりだった。


「やっぱり、出てくるよね。今回は全人類の封印が解除されたんだから……。本格的に増えるのも、時間の問題だな」


嘉助は再び天を仰ぐと、重い溜息と共に椅子に深くもたれかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ