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<執事のセバスチャン>

1週間後、デュークが義体用のメモリバックアップ装置と、ヨルダ爺からの「戦闘用義体」を届けに来た。

激しい訓練で故障しても不便だろうという配慮から、戦闘用義体は予備を含めて2体も用意されていた。


リピウスは大いに喜び、さっそく訓練室に設置。デュークと共にバックアップのテストや、義体に入っての操作確認を行った。


「おー!!! なんだこれは! デューク、この義体は桁外れに凄い性能だぞ」

一通り動かしてみたリピウスは、そのポテンシャルの高さに目を見張った。


「そりゃそうだろうよ。そいつは『伝説の義体』だぜ。今じゃ生産されていない『幻の名機』なんて言われてて、一部のマニアには垂涎の的なんだからな」

なぜかデュークがドヤ顔で自慢げに語る。


「伝説に幻か……。随分とご大層な呼び名が付いているんだな」

「まあな。普通の戦闘用義体は耐久度が60万〜80万ってところだが、そいつは100万だ。それを超えるのは、今の副監視長・杏子さんが特注で改良した、耐久度130万の化け物義体くらいだって話だぜ」


「130万……! そりゃ凄まじいな」

リピウスが大袈裟に驚いてみせると、デュークは呆れたように返した。

「いや、お前がそれを言うかよ。おいらから見れば、お前も十分あっち側の住人だぜ」


その後もデュークは時折リピウスのもとを訪れ、他愛ない時間を過ごした。


* * *


そして1ヶ月後。再度ヨルダ爺がデュークを伴ってやってきた。恒例のコーヒータイムである。


「どうじゃな? もう使ってみたのか?」

「ああ、重宝しているぞ。戦闘用だけあってゴツいが、動きはパワフルで安定感も断然良い感じだよ」

「この間の訓練を見たけどよ、確かに以前のメイさんより動きがキレてたな」

「ほっほっほ。それは見るのが楽しみじゃて」


リピウスは満足げに頷くと、扉の方を向いた。

「メイ! セバスを呼んできてくれ」


メイさんが空間からスッとドアを出現させて中へ入り、すぐに長身で黒スーツを纏った紳士を伴って戻ってきた。

紳士はリピウスの後ろにメイさんと並んで控えると、お手本のような美しいお辞儀をした。


「お初にお目にかかります。執事のセバスチャンと申します」


ヨルダ爺とデュークは、しばし唖然としてその光景を見つめていた。

「お、お前……二体同時に動かしているのか? それに、なんで執事なんだ?」

「そりゃ、戦闘メイドより強いって言ったら、執事以外に無いだろ」


「これは驚いたのう。これも人工知能で動いておるんじゃな?」

「そうですよ。執事としての所作は、まだまだ勉強中だけどね」

「はい。日々精進しております」

大真面目な顔で応じるセバスチャンに、デュークが思わず突っ込む。

「いや、もう十分すぎるほど執事だぞ」


「良かったら戦闘訓練も見ていくかい? メイの戦闘データを引き継いでいるから、既に相当強いよ」

「ほう。なら、ぜひ見せてもらおうかの」


三人はメイさんが出したドアを通り、戦闘訓練室へと入った。

殺風景な室内には、これまでのメイさん用の机に並んで、新しくセバスチャン用の机が増えていた。

ヨルダ爺たちが観戦席へ案内されると、リピウスとセバスチャンが中央へ進み、向かい合う。


「レディー……GO!」


リピウスの号令で戦闘が開始された。

リピウスは最初から全開で突進する。セバスチャンはそれを軽いステップで躱し、スッと鋭い蹴りを放つ。リピウスも翻るようにして回避し、一旦距離を取った。

接近しては武術の技を応酬し、離れては霊力による攻防を繰り広げる。


流石に戦闘用義体のセバスチャンは強かった。

以前のメイさんには3本に1本は取れるところまで上達していたリピウスだったが、セバスチャン相手には再び歯が立たなくなっていた。


セバスチャンの鮮やかな連続技に体勢を崩され、そこへ強烈な回し蹴りが叩き込まれる。リピウスはそのまま沈んだ。


『一本! 勝者、セバスチャン!』


判定ボックスの無機質な声が、訓練室に響き渡った。

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