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完結 吾輩は捨て子猫である ~動画投稿でご主人を救う恩返しにゃん物語~  作者: カトラス


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第76話:「みのり、税理士に相談してみた結果!?」

 正直に言うと、「税金」のことをちゃんと考えようとしたのは、人生でこれが初めてだった。


 それまでの私は、会社から送られてくる源泉徴収票をなんとなく眺めて、「ふーん」と思うだけで終わっていた。  だけど今は、毎月もちとの動画に広告収入がつき、企業案件の話も来るようになっている。

 気づけば「副業」どころか「個人事業」に片足を突っ込んでいた。


 つまりは……自分で、確定申告しなきゃいけない。


「ええと、開業届……? 青色申告って何? 控除? 仕訳帳……?」


 目の前のノートパソコンには、検索した単語がひたすら並んでいる。

 もはや日本語なのに宇宙語に見えてくる。

 私は一度ノートパソコンを閉じ、リビングの床にぐったりと倒れ込んだ。


「もーだめ……」


 その瞬間、ぬるりとした柔らかいものが、私の頬にすり寄ってきた。もちだった。


「ん~? どうしたの~? ご主人の膝は最高にゃのに、動かにゃいにゃ?」


 小首をかしげて私の目を覗き込むもちに、私は苦笑いを返す。


「ごめんね、もち。ちょっとね、お金のことでパンクしそうなの……」


 もちは私の胸に前足を乗せて、「ふみっ」とふみふみを始めた。癒し効果は抜群だけど、ふみふみだけじゃ申告書は書けない。


「……ダメだ、こういうときこそプロに頼るしかない」


 私の頭にまず浮かんだのは、フリーランスで長年やってる姉・沙耶の顔だった。



「税理士さんに相談してみたら? 今はYouTuber専門でやってる人もいるし、猫系動画に強い人もいるかもよ」


そう電話口であっさり言った姉の声は、ちょっと鼻歌まじりで呑気だったけれど、私には女神の声に聞こえた。


「猫系に強い税理士って、何そのピンポイント……!」


「いるのよ、ほんとに。紹介してあげようか? 私の知り合いが猫飼ってて、クリエイターの確定申告サポートやってるの」


 姉が送ってくれた連絡先に、私はさっそくメールを送り、数日後にオンライン面談の約束を取りつけた。


──人生初の税理士相談。しかもZoom。


 パソコンの前でスウェットからシャツに着替え、化粧をしてカメラをセットする私を、もちがじっと見上げている。


「ご主人、今日はデートにゃ? その顔、緊張してるにゃ~」


「うん……ある意味デートかも。もちの未来のために、しっかり話してくるよ」


 そう言って笑うと、もちが「にゃっ」と鳴いた。たぶん、応援してくれてる。



「はじめまして、税理士の五十嵐です。今日はよろしくお願いします」


 Zoomの画面に映ったのは、物腰の柔らかそうな男性。猫耳のマグカップを片手に、後ろには立派なキャットタワーが写っていた。


「もしかして……猫ちゃん、いらっしゃるんですか?」


「はい、三毛猫の“はんぺん”がいます。仕事中でもZoomに乱入してくるので、お気をつけください(笑)」


 その時点で、私はもうこの人に相談しても大丈夫だと確信していた。


 私はもちのこと、動画の経緯、収益の発生、今の活動状況をひとつひとつ説明した。五十嵐さんはそれをじっくり聞いて、うなずいてくれた。


「ご自身で帳簿管理されているのは素晴らしいです。ただ、仕訳や経費の扱いに不安があるようなら、会計アプリと税理士の併用がおすすめです」


「やっぱり、そうですか……。このまま無理に全部やろうとしてたら、倒れそうで……」


「そういう方、多いんですよ。特に“好き”が仕事になった方ほど“全部自分でやらなきゃ”って背負い込みやすい。でも、仕事にするからこそ、分担したほうがいいんです」


「……その言葉、すごく沁みました」


 私は思わず、画面の向こうに深々と頭を下げていた。心がスッと軽くなるのを感じていた。



 面談が終わったあと、私はそのままソファに座り込んだ。もちがぴょこんと私の膝に乗ってくる。


「にゃ?」


「うん、大丈夫。もち。私、ちゃんと相談できた。これからは、ちゃんと“お仕事”として、責任持ってやっていくよ」


 もちが私の膝の上でくるくる回ってから、ふかふかの毛を預けてきた。

 その重さと温かさが、私の心の中心にじんわり広がっていく。


「これからもっと忙しくなるかもしれない。でも、もちと一緒なら、ちゃんとやれる気がする」


 ぽんぽんともちの背中を撫でながら、私はふと画面に残された会計アプリのタブを見つめた。そこから始まる未来を思って、そっと笑った。


 次回:第77話「もち、仕事と遊びの境界線を見つめる」へ続く。



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