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完結 吾輩は捨て子猫である ~動画投稿でご主人を救う恩返しにゃん物語~  作者: カトラス


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第44話:「もち、芸能プロダクションからのスカウト!?さらにバズる、家族との関係、視聴者イベント」

――吾輩は、人気者である。


 いや、ほんとうである。

 すでにチャンネル登録者は十万人を突破し、「奇跡のもち様」として熱狂的なファンも現れている。

 吾輩の動く姿、食べる姿、寝転がる姿、すべてが「尊い」と呼ばれておる。むむ、ついに人間たちも吾輩の真価に気づきはじめたのだな……!


「もちー!またお手紙来てたよ!今日で四通目!」


 みのりがキッチンでカシャカシャと手紙の封を開ける音を聞きながら、吾輩はキャットタワーのてっぺんで優雅に毛づくろいをしていた。

 内容はいつものファンレターかと思いきや——


「え?えぇぇ!?芸能プロダクション、からの……スカウト!?」


 ぴくっ。


 吾輩の耳が反応した。げいのう……ぷろだくしょん? なにやらおいしい響きである。


【みのり視点】


 スカウトメールが届いたのは、ある平日の夜だった。差出人は、テレビでも見かけたことのある有名動物タレント事務所だった。


「もちくんの動画を拝見しました。ぜひ一度お会いしてお話させていただけないでしょうか」


 手紙は丁寧で、内容も具体的だった。

 人気ペットタレントの育成実績、CM出演例、フォロワー拡大戦略まで……。

 うそ、うそでしょ……これって、まさか……もちが、本当に芸能界に……!?


「ど、どうする……? もち、やってみたい……?」


 ぽてん、と足元に降りてきたもちが、目をぱちぱちとさせてこちらを見ている。

 わからない、何が正解かわからない。

 でも、あの頃、生活費にも困って、スーパーの特売ばかり選んでた私が……

 今じゃこんな選択肢を手にしてるなんて。これは、奇跡なんかじゃない。

——もちが、ここまで連れてきてくれたんだ。


【もち視点】


 吾輩がプロになるのか……ふむ。それはつまり、もっとたくさんの人間に「ちゅ~る」をもらえるということか?


「もーち!取材が決まったよ!テレビじゃなくてネットだけど、プロダクションの社長さんがインタビューするって!」


 ぬ……なんと、再びカメラの前に立つ日が来たのか。よろしい、吾輩は何事にも全力で挑む主義。

 どこからでも撮るがよい、吾輩のこのベストアングルを。


 取材は、みのりの部屋で行われた。来訪したのは、スーツ姿の穏やかな女性。カメラマンとアシスタントを連れてきて、部屋の片隅にライトを設置すると、こう言った。


「もちくん”は、動きが本当にスターなんですよね。お行儀もよくて、リアクションも豊かで……まさに天性の表現者です」


 みのりは恐縮しきりだったが、もちの撮影になると自然と笑顔になった。

 インタビュー中も、もちの過去や出会いを語るみのりの目が、どこか潤んでいた。


「私は……もちに救われたんです。たった一匹の猫が、私の世界を明るく変えてくれました」


 女性社長は頷きながらこう言った。


「それこそが、今の時代に一番伝えたい物語なんです。もちくんの動画は、きっともっと多くの人を救えます」



◆そして数日後。


 そのインタビュー記事は、バズった。SNSでは「もちくんの恩返しストーリー」として拡散され、数日で再生数は百万回を超える。


——それに連動して、プロダクションからは新たな企画が提案された。


「オンライン視聴者イベントをやってみませんか? プレゼント企画や、もちくんとの“おしゃべりタイム”も用意できます」


 ついに、視聴者イベント……!



◆イベント当日


「もーちー!画面こっちー!」


「もち様~~かわいすぎる~~!!」


「ちゅ~る奉納してぇぇえ!!」


 コメント欄は阿鼻叫喚、投げ銭は止まらず、チャットは秒速で流れていく。

 吾輩は画面越しの人間たちに向かって、おしりをふりふり、ぱちっとウィンク。


「……やっぱり、もちって……すごいなあ」


 みのりの声が震えていた。隣には、涙ぐむおばあちゃんの写真。

 そう、最近みのりは、おばあちゃんにももちの話をしていたのだ。


「きっと、おばあちゃんも、空の上から笑ってるよね」


 吾輩は、そっとその写真に顔をすりすりした。


 テレビ出演、スカウト、イベント、ファンからの愛。

 吾輩の暮らしは少しずつ、でも確実に変わっている。


 でも、変わらないものもある。


 それは、毎晩みのりと一緒に寝る時間。

 ごはんの時の「おいしいね」の声。

 そして、ふたりだけの、特別な家族の時間——


「もち、明日もよろしくね」


 うん、任せておけ。我が名はもち、人間の心を救う、しあわせ配達猫である!

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