第43話:もち、ちゅ〜るCM出演に前向きになる(かもしれない)
【もち視点】
吾輩は、もちである。
猫である限り、「ちゅ~る」という名の魔法のペーストには逆らえない宿命にある。
――そして今日、ご主人が持ち帰ってきたのはそのちゅ~る。しかも、見たことのない“高級ちゅ~る”であった!
「見て、もち。これ、ちゅ~るの新味セットなんだって!試供品もらっちゃった!」
吾輩はご主人の足元にぴとりと座り、ぴくりと耳を動かす。
封を切った瞬間、あの香り――これはもう、猫の理性が吹き飛ぶやつである。
「テレビの制作さんがね、商店街のチラシ見たって。『この子、CM向きかも』って……うふふ、どう?もち、ちゅ~るの顔になる気ある?」
――ちゅ~るの顔?
猫である吾輩が“ちゅ~るの化身”になるなどと、そんな大それた役割……いや、でも、ちゅ~るは好きだ。大好きだ。
たまらん。
それにしても、ただ食べるだけでいいというなら話は別である。
「試食撮影っていうんだけど……その、ちょっと食べてるとこ撮らせてもらうってだけ」
む。食べるだけ……だと?
【みのり視点】
私はテレビ局の知人から渡された試供品ちゅ~るを手に、もちを見つめた。
もちの目はキラキラしていて、正直、これまでにない食いつきっぷりだった。
「こんなにテンション上がるの、久しぶりじゃない?……でも、撮影は無理にしないからね?」
私はそう言いながら、スマホのカメラをこっそり構える。
お試しでちょっとだけ撮ってみるつもりだった。
「もち~、いいよ~。好きなだけ、どうぞ~」
ぺろっ……ぺろぺろっ……くちゃっ。
あ、すごい。これはヤバい。
音も可愛いし、目を細めてとろけた顔が、もう“CM”そのもの。
――もしかして、もち……ノッてる?
【もち視点】
吾輩は、ちゅ~るの魔力に完全に飲まれていた。
「ぺろ……う、うまい……これは……っ、革命である!」
夢中で舐めながら、ふと思う。
――ちゅ~るという存在が、世に広まることで、もっと多くの猫たちが幸せになるのでは?
それに、ご主人も困っているときに“動画投稿”で立ち上がった。今度は吾輩が、この舌で一役買う番ではないか。
ぺろり。
ふぅ……ひとしきり堪能した吾輩は、ご主人のほうをじっと見つめた。
「……なに? えっ、もしかして、もう1本いける?」
コクッ。
「わー!もち、やる気出てる!? ってことは……これ、CM出演も、ありかも?!」
うむ。ちゅ~るに限り、考えてやらんでもない。
【みのり視点】
私はスマホで撮影した“ちゅ~る試食もち”動画を再生して、にやにやが止まらなかった。
とろけ顔 → 舌ぺろ → うっとり寝落ち寸前の流れが完璧すぎて、これもう投稿したいレベルだった。
「……あ、これ、限定公開で先方に送ってみようかな?」
そう、テレビ局の人も「無理しなくて大丈夫です、気が向いたら動画ください」って言ってたし……!
私は勢いで編集アプリを開き、簡単な字幕を入れる。
【奇跡の一口――世界一ちゅ~るを愛する猫、もち。】
……うん、よしっ!送信っ!
【もち視点】
その後も、ご主人はしばらく「モデルはやだよね~でもちゅ~るはOK?」とぶつぶつ確認しながら、吾輩の顔をなでていた。
CM出演というのが、本格的にどんなものなのか、吾輩にはまだわからぬ。
けれど、ご主人が嬉しそうに笑っていた。それなら、吾輩も前向きに検討しようではないか。
でも一つだけ、条件がある。
――出演料は、ちゅ~る3本分で頼むぞ。
【みのり視点】
翌朝、テレビ局の人からすぐに返信があった。
「この動画、社内でめちゃくちゃウケてます!本当に出演をご検討いただけるようでしたら、今度サンプル撮影させてください!」
……まじか。
これ、ほんとにちゅ~るの顔になっちゃうかもしれないよ、もち……!
もちを見ると、例の“ちゅ~る棚”の前で、おすわりして待っていた。
「あ、あれ……その顔……まさか、もうやる気?」
にゃーん。(当然である)
【もち視点】
吾輩は、ちゅ~るのためならやってやる。
ただし、誇り高き猫として、ブレることなく――な。




