表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結 吾輩は捨て子猫である ~動画投稿でご主人を救う恩返しにゃん物語~  作者: カトラス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/101

第五章 第41話:「もち、商店街でまさかの“出演依頼”?」

 吾輩は、もちである。

 かつては捨て子猫。今はちょっとしたネットの人気者――らしい。

 いや、まだまだそんな自覚はないのだが、最近やたらとご主人が吾輩に向かって「スター」とか「タレント性あるわね」とか言ってくるのだ。なんか照れるじゃないか、まったく。


 それはある穏やかな午後、いつものように窓辺で日光浴をしていたときだった。


「もち~、おさんぽ行くよ~」


 ご主人が妙にウキウキした声で吾輩を呼んだ。おさんぽといっても、抱っこされて近所を歩くだけだ。まあ、悪くない。

 ご主人の胸元はあたたかくて、吾輩はそこから街を眺めるのが好きなのだ。


 だが、その日の散歩はちょっと特別だった。


「ねえ、もち。今日は商店街のイベントの下見なんだって。えへへ、実はね、あのね――」


 ご主人は話を続けようとして、うっかり吾輩の鼻にくすぐったい息を吹きかけた。やめろ、くすぐったいではないか。


 到着したのは、昭和レトロな雰囲気が残る小さな商店街だった。

 八百屋さんの前には熟した桃が山積みで、魚屋さんからはぷりぷりのアジが並ぶ。そして何より――。


「……あれ? あれって動画の……」


「え、あの猫ちゃん!? “もち”ちゃんじゃない?」


 すれ違う人々のざわめきに、ご主人の頬がぽっと赤くなる。

 吾輩はご主人の腕の中で、ちょっとだけ胸を張った。ふふん。どうやら有名になってしまったようだな。


 その時だった。魚屋の店主が手を振りながら近づいてきた。


「おおおっ、やっぱり本物だ!お嬢さん、この子“もちちゃん”だろ? 動画見てるよ! あの『おでこぺたっ』事件、最高だったなぁ!」


「え、えへへ……ありがとうございますっ!」


 店主は笑いながら吾輩を見て、続けた。


「実はさ、来週この商店街で“小さな夏祭り”をやるんだけどね、ちょっとしたステージがあるんだ。こどもたちの太鼓とか、フリーマーケットの紹介とか。でね、その……もちちゃん、出てくれないかい?」


「えっ……!? も、もちが、出演?」


 ご主人は目を丸くした。吾輩も耳がぴくっと動いた。にゃに? 出演ってどういうことにゃ?


「ほら、最近テレビにも出たし、有名だしさ。うちの商店街、ちょっとでも活気出したいんだよねぇ。もちちゃんに出てもらえたら、集客もすごそうだし」


「え、えぇぇぇええ……!」


 ご主人は戸惑いながらも、どこか嬉しそうだ。その頬は真っ赤で、目はうるうるしている。


「ま、まさか……もちが地元スターに……?」


 いやいや、ご主人。いきなり話が飛躍しすぎである。


「でも……ステージって、何をするんですか?」


「うーん、ちょっとしたインタビューと、動画紹介と……あ、よかったら、もちちゃんに“ちゅ~る”食べてもらって、お客さんに『どの味が好きか』を当ててもらうとか!」


「……た、楽しいかも……!」


 どうやら“猫グルメ当てクイズ”なる企画まで構想されているらしい。

 ううむ。まさか吾輩の味覚が商店街の賑わいの鍵になるとは――。


 その場でご主人は一度「検討させてください!」と頭を下げたが、帰り道の途中からずっと、


「もちが商店街の顔に……いや、これは名誉なことよ……!地元振興よ、地域貢献よ……!」


 とぶつぶつ呟いていた。


 帰宅してからもご主人のテンションは高かった。パソコンを開いて、出演者確認のメールを送っている。


「うーん、衣装どうしようかな。甚平?浴衣? それとも“祭りバンダナ”とか?」


 やめてくれ、ご主人。それは吾輩のキャラじゃない。


 でも、吾輩も心のどこかでほんのりわくわくしていた。だって、こうしてご主人が笑顔になってくれるのなら、吾輩は出演してもいいと思うのだ。


 ご主人と吾輩。

 二人三脚で歩いてきたこの生活が、またちょっと広がっていく。


そう思うと、吾輩はご主人の膝にぴょんと乗り、喉を鳴らした。


「……もち、やる気満々……?」


「うにゃ」


 それがどんな答えだったか、ご主人には分からなかったかもしれない。でもその夜、ご主人はやけにうれしそうな顔で吾輩の写真を撮りながら、つぶやいていた。


「よし……商店街で会えるアイドル猫……ありかもしれない!」


 ちょっと違う気もするが、まあ、よい。


 こうして吾輩、もちの“商店街デビュー”は静かに幕を開けることになるのだった――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ