第24話:もち、まさかの“ダンボールハウス”建設計画
吾輩は猫である。名前はもち。
住居には強いこだわりがある。
日中の定位置はエアコン様の真下、夜はみのりの枕元。クローゼットの中やテレビ裏の隙間など、ひと通り全エリアを制覇した吾輩だが、最近、物足りなさを感じていた。
「もっとこう……秘密基地みたいなやつがほしいのである」
そんなある日。みのりがAmazonの箱を手に帰宅した。
「ふふふ、もちぃ~、今日はすごいお届け物があるんだよ~」
宅配ボックスから取り出されたのは、大きなダンボール箱。
吾輩の二倍はある堂々たるサイズ。横には“キャットタワー(要組立)”の文字。
「ふにゃ!?(キャットタワー!?いま吾輩に最も必要なやつ!)」
だが、そのとき――
「タワー組み立てる前に、箱で遊ぶかな~と思って……ほらもち、箱~!」
ばふっ!
ダンボールが床に置かれるや否や、吾輩は反射的に突撃!
「にゃっほおおおおお!!」
中に入る。狭い。暗い。
落ち着く。これは……猫的楽園。
「うふふ……やっぱ入ると思った~。完全にもちサイズだね~」
そう言ってご主人様はニコニコしていたが、吾輩は重大なひらめきを得ていた。
――この箱、改造すれば、夢の城になるのでは?
◆
その晩。
ご主人が寝静まった後、吾輩はひとり、ダンボールの中で考えた。
「まずは入口の強化だな。現状では防御が甘すぎる」
ぺしぺし。
爪で出入り口の端を削り、好みのサイズに整形。
紙の破片が舞うなか、吾輩は黙々と作業に取り組んだ。
「ふむ……ここに監視窓を……そして上には見張り台……」
ご主人の読みかけの雑誌を引きずって運び、屋根に設置。通気性確保のために側面にパンチを施す(もちろん、爪で)。
朝になる頃には――
「にゃっはー!完成である!」
吾輩特製“もち城(仮)”が誕生したのである!
◆
「な、なにこれ!?ダンボールぼろっぼろ!?もち、夜中に何してたの!?」
翌朝、みのりは愕然としていた。
「にゃ(改築工事である)」
「いやいやいや、壁に穴空いてるし、屋根に私のanan乗ってるし、床にちゅ~るのパッケージ敷いてあるし!住む気まんまんじゃん!!」
「にゃふ(当然である)」
ご主人様はやれやれと首を振りつつも、なぜか笑っていた。
「じゃあさ、もちの“おうち”にしようか。せっかくだから、窓も作ってあげよう」
なんと、手作り装飾タイムが始まった!
ハサミで窓が空けられ、中に小さなクッションを入れてくれた。外壁にはマジックで「もちのおうち♡」と書かれ、入口にはキャットステッカーがペタリ。
「はい、完成!これで快適だね~もち~」
「にゃふっ(この女、できる……!)」
吾輩は喜びの舞を披露し、箱の中で寝転がった。
◆
以後、ダンボールハウスは吾輩の基地と化した。
客人(宅配業者)を見張るポスト、昼寝用の影の確保、ちゅ~るの隠し場所……機能性は抜群。冬にはフリースを入れてもらい、まさに快適住宅。
だがその夜。
「よし、そろそろキャットタワーも組み立てるか~」
みのりが例の段ボールを空にして、パーツを床に広げ始めた。
吾輩は驚愕した。
「にゃふぉ!? まだ進化を続けるのか!?もち城が……二階建てに!?」
ご主人様が組み立て始めたタワーは、なんと3段階構造の豪華設計!
しかも最上階にはハンモックつき!
「これぞ……天空のもち城……!」
吾輩は目を輝かせ、ハンモックに飛び乗ってぷらーん。
「ふっふっふ……世界はすでに吾輩の手中である」
ご主人様がにっこり笑ってカメラを構えた。
「今日のもち、なかなかの職人だったね~。じゃ、記念撮影♪」
ぱしゃっ。
写真には、手作りダンボールハウスの中で得意げに座る吾輩と、それを見て笑うみのりの姿が残された。
◆
その晩――。
吾輩は新タワーのハンモックの中で、ふと考えた。
「この家に来て、最初は不安でいっぱいだったけど……今や、ダンボールすら吾輩の城である」
優しいご主人様と、快適な部屋と、たくさんのちゅ~る。
「ここが、吾輩の国。吾輩の家族――吾輩の、世界である」
風がエアコンからそよそよと吹き、どこかダンボールががさりと鳴った。
「明日は、秘密トンネルでも掘るかの……」
そんなことを考えながら、吾輩はぬくぬくと眠りについた。
次回、第25話:もち、深夜の運動会を主催する に続く。




