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完結 吾輩は捨て子猫である ~動画投稿でご主人を救う恩返しにゃん物語~  作者: カトラス


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第23話:もち、エアコンと対話する

吾輩は猫である。

 名前はもち。夏である。


 いや、まだ暦の上では初夏らしいのだが、すでにこのアパートには魔の陽気が忍び寄っている。

 窓から差し込む日差しは鋭く、床は昼過ぎになると焼け石のように熱を帯び、吾輩の肉球がひっつくレベルである。


「うにゃぁ……(これは灼熱地獄……!)」


 本日、吾輩はテレビの裏という地味な避暑地にて、うつ伏せのヘソ天という謎のポーズで気絶寸前になっていた。


 そこへ、救世主が現れた。


「よし……今日はついに、あれの力を借りよう!」


 ご主人様・みのりが、なにやら白い四角い機械に向かってリモコンを構える。カチッという音とともに、「ウィィィィン」という低い起動音。


 ぶぅん……と、天井近くの謎装置から冷風が放たれた!


「にゃっ……!? これは……この感触……!」


 冷たい風が、そよそよと吾輩のヒゲをくすぐる。あの重苦しい熱気が一気に吹き飛び、まるで冬の天国の門が開いたようだ。


「エアコン様……!!」


 吾輩はその場で転がり、腹を見せ、感謝の舞を捧げた。



 こうして、我が家に“エアコン”という神が顕現した日――吾輩は確信した。


 この白き箱こそ、現代文明の叡智!

 夏を乗り越える者にして、快適の使者!

 さすが人間文明のトップに君臨する装置、エアコン様!


 それからというもの、吾輩は朝になるとエアコン様の下に陣取り、風向きにあわせて身体の角度を調整しながら昼寝にいそしんだ。


 みのりが出勤するときなど、こうである。


「もち~、行ってくるね!エアコン切るよ~」


「ふぎゃっ!? まっ、待て、ご主人様、それは愚行!!」


「電気代が~~~~~!!」


 そのままパチッと電源が切られ、再び蒸し風呂地獄へ突入する吾輩。


「おぉ……エアコン様……あなたが去ってしまわれた……」


 吾輩はその場で崩れ落ち、白い箱の真下で魂を抜かれていた。まるで失恋した浪人生のように、虚空を見つめるのみ。



 だが、夜になると再び――


「ただいま~~!あっつぅ!もうムリ!」


 カチッ。


「ブォォォ……」


「うおおおおお……帰ってきたあああ!!」


 エアコン様、再臨!


 吾輩は狂喜乱舞して走り回り、カーテンに登りかけてご主人様に怒られた。

 だがそれほどまでに、この清涼な風は偉大なのである。


 そしてある晩、事件は起きた。



 その夜――みのりはエアコンの真下で横になりながらスマホを見ていた。吾輩もその隣に寄り添い、エアコン様の風に当たりながら快眠モード。


 ところが、突然。


「ピー……カタカタカタ……」


「ん?エアコン止まった?」


 風が止まり、沈黙が訪れる。


「えっ、ちょ、なんで今!?え、壊れた?寿命?このタイミングで!?」


 ご主人がリモコンをカチカチ連打するも、動かぬエアコン。


「ぴ……ぴ……ぴ……」


 無慈悲な電子音が響き、表示画面には「H28」というエラーコードが浮かび上がる。


「も、もち~~!!どうしよう、詰んだ!」


「にゃあああ!(これは神の怒りである!)」



 その後、窓を開けても焼け石のような熱風。扇風機を回しても、ぬるい風が顔に直撃。ふたりでアイスを食べてもしのげず、床に転がるしかない。


「うっ……ちょっと熱中症気味かも……」


 ご主人様がふらりとソファに倒れ込む。


「にゃ!?(大丈夫か!)」


 吾輩はすぐに駆け寄り、そのおでこに手を当てる――は無理なので、代わりに額をぺたっと舐めた。


「うわっ冷たい!ちょ、やめて~~もちぃ~~!」


「にゃ!(貴殿の無事を祈っての行為である)」


 みのりは笑いながら水を飲みに立ち上がった。どうにか復活。


 このとき、吾輩は決意した。


――この家のエアコン、守る。命にかえても。



 翌日、みのりは管理会社に電話し、エアコンの修理を依頼。


「明日、業者さんが来てくれるって!」


「にゃ!(よくやったぞ!)」


 翌日の午後。

 修理のお兄さんが工具箱を持ってやってきた。吾輩は警戒心マックスで陰から見守る。


「へー、この猫ちゃん、じーっと見てますね」


「もち、エアコン見張ってたのかな~?」


 作業は約30分ほどで終了。「ファンの一部が故障してたみたいですね~」と爽やかに帰っていった。


 そして――


 カチッ。


「ブォォォォ……」


 エアコン、復活!


「にゃふぉおおおお!!(神が戻られたあああ!!)」


 吾輩はうれしさのあまり三回転してから、みのりの足に抱きついた。


「ありがとね、もち。夏の間、一緒に涼もうね」


「にゃ(当然である)」


 エアコンの下。

 ひんやりとした風に包まれて、吾輩はまたくるりと丸まり、満足そうに寝息を立てた。


 ご主人様の横で、涼しい夜を迎えるのであった。


 次回、第24話:もち、まさかの“ダンボールハウス”建設計画 に続く。





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