後日談~それぞれの休暇
ローゼンハイム家
「なに?アイリスのせいで聖女にされた?」
僕と母上は耳を疑った。
がさつこの上ないクレイが聖女…?
「寝ぼけてるのかしら?クレイ、あなたは女の子になって妄想も始まってしまった様ですね可哀想に…」
あぁ…ついにクレイが壊れてしまったかな…
無理もない、性別を替えられ…騎士団で実力をもう一度示さなければならないプレッシャーをかけられ…新しい家族の面倒も見なければならない…
もっと長期休暇を与えなければならないか…
「もういい…クレイ、わかった…休みを更に多くを与えるように僕がなんとかするから…お前はゆっくり休め…な?」
「いや嘘じゃねえって!話聞いてくれよ!」
…仕方ないので、僕と母上は座り直して真剣に話を聞く。
事の成り行きを聞いて、僕らは頭を抱えた。
「あの子ったら…」
「アイリスらしいな…うやむやにして押し付ける…全くアイリスらしい」
僕らはこれから苦労するクレイに同情していた。
もうすぐ年明けだと言うのに…アイリスはどこにいっているのだろう。
僕は子供をあやす父上の間抜け面を冷めた目で見ながら、アイリスの帰宅を待っていた。
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ラインツ王国 王宮。
むむ…最近はどうも落ち着かん。
どうやら、いつかあの暴走娘が来るかもしれないという不安が我輩を襲っているのかもしれぬ…
アイリス・ローゼンハイム…
何をやっておる? 何をやらかしてくれたのか?
不安じゃ…祭も終わって落ち着いた頃合いのはずじゃが…大丈夫なのかのぉ?
もしや、憂さ晴らし的な気持ちで領主を押し付けたのがいけなかったか?
どう考えても合理的じゃったはずじゃ…
ウィンター家があそこまで酷い状況であったのなら、あれより酷くはならんだろうと判断して無理やり押し付けたのじゃから…
あぁ…胃が痛い…
来るなら来いっ!いつもよりも厳しく対処してやるぞ!
「陛下…アイリス嬢はとんでもない物を盗んでいきましたね…!」
「何を盗まれたのじゃ!?金か!?」
「あなたの平静です!」
そうじゃったか!
ボーリックに言われて今さら気がついた…あの暴走娘のせいで…それが日常となっておることに…!
むむむむ…アイリスめっ! いててて…胃が…胃がぁあ…
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ウェインズ連合国 王宮の一室
「ぐずっ…ぐずっ…」
「あらあら…アイリスさんが泣くなんて似合わないですよ?」
私は今、傷心を癒して貰うためにマチルダさんの所に来ていました。
あの聖女祭で、辞めたはずの聖女の仕事が復活し…メリダス様とクレイお姉さまにお説教をされて…泣きながらマチルダさんの所に来ました。
「だってぇ…だってぇ…これから団長とぉ…聖女とぉ…領主様もやらなきゃいけないんですよぉ…絶対無理ですよぉ…」
「アイリスさんならきっとできますよ…団長になった時もこうやって私に相談してくれたじゃないですか?今は悩んでいますけど…きっと大丈夫です」
マチルダさんの膝枕でズビスビ泣いてた私の頭を優しく撫でてくれます。
やっぱりマチルダさんは神!
癒しの大女神様です!
「あなたは大丈夫…もっと高みへ進んでいけるお方ですから」
私はマチルダさんの深い深い愛情と母性に溺れ続けていた
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メリダス教団 とある一室。
「今年は沢山の出来事がありましたね…」
「そうだね…また会うことができたし…君とこうしてまた愛し合える事ができたから…」
メリダス教団の一室にあるダブルソファーで肩を抱き寄せながら…僕はメリダスと愛し合っていた。
アイリスには感謝しないとね。
…て言うか、彼女は今何してるんだろう?
僕ってばしばらく、オルグス正教の仕事サボったせいでずっと正教に引きこもってたんだけど…一度も来なかったしなぁ…?
メリダスからしか話を聞かないし… 本当に何してるんだろう?
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ラインツ王国 王都
「くうぅ…さむいっ!さむいよぉ~」
この寒空の下…このガードナーは愛娘…アリスと一緒に街へ買い物に出歩いていた。
この間の行進…あれはまさしく神兵の行進として伝説となるだろう…!
それほどまでに素晴らしい行進だった!
我々の行く手を阻む者はいない!
もはや、第7騎士団はラインツ王国最強の騎士団である!
「おとうちゃーん…まーたおしごとのこと考えてるの~?」
「ん?あぁ…すまんすまん、ちょっとこの前のお祭りを思い出してたんだ」
あの完璧すぎる行進…私はどうも酔いしれてしまったようだ…
あの行進は長い騎士団の歴史を見ても伝説になるほどの行進だったからだ!
「フフッ…おとうちゃんの頭…雪のカツラができてるよ~?」
「ハハッホントだな!よしっ!早く買い物を終わらせて、母ちゃんのご飯を食べような?」
「うんっ!いこ~?」
今はお父さんを全力でやらねばならなかった…。
よしっ!可愛い娘が待っている!急がなくては!
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魔術師団本部 オリヴィエ研究所
「ふあぁ~…今年も終わりかぁ~…」
「大魔術師様…私はそろそろ家に帰宅させていただきます」
「はいよ~また来年ね~…」
世の中は年越しの時期になってた~
私も研究をやめて家に帰ろうかなぁ~…
あっ…私って家なかったかも~…
そういえば、帰るの面倒になってガードナーって人に家譲っちゃったけ~?
何年前だったかな~?5?8?
まぁいいや~…今年もあいりすーの家にでも行こうかなぁ~?
ん?そういえば、あいりすーと最近会ってないなぁ~?
また面白いことして…あの白髭もじゃの胃を苦しめてるのかなぁ~?
あのジジイもしぶといから、いい加減くたばるかと思ってるんだけどなぁ~
僕の仕掛けたあいりすー達のこと考えると胃痛がする魔法…効いてるのかぁー?
ちょっと気になってきたから、久しぶりにくそジジイに会ってやるかぁ~
あいりすーのこと聞いて胃痛が起きてるか確認しよーっと
うしししっ
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ラインツ王国 王宮。
「入るよぉ~…ん~?まだ生きてたのかくそジジイ」
「ピンピンしとるわ、クソガキ」
暴走娘かと思ったが、今年最後の来訪者はこのクソガキ魔術師か
こいつもこいつで厄介なんじゃよなぁ…
「む?なんじゃ?お主…成長できたのか?」
はて?ちょっと成長しとるではないか…
アイリス嬢と同い年くらいかのぉ?
こやつも成長さえすれば…意外と見てくれはいいのじゃな…
知らんかったわい
「ん~?まぁね~…あの時空の魔女倒したら成長時期が延びたよ~」
「あの件のことは聞いておる」
今は思い出さんぞ!胃が痛くなりそうな気がするのじゃから
そんなことお構いなしに、このガキは嬉しそうな顔で話始めよる
「いや~これでローゼンハイム家は永久不滅の一家だよね~?特にあいりすーなんかもう歩く最強兵器なのは確定でしょ~?まじでくそジジイ、その座をあいりすーに譲っちゃう方がよくな~い?」
うっ…いててててっ…胃が痛くなってきたわい…
どうも余計なことを思い出させよって!
「あ~!そういえば~…なんかあいりすーに領地一つあげたんだって~?」
「む…そうじゃ…ウィンター家が取り壊しとなって空席じゃったからのぉ」
なんじゃこのクソガキ…領地の事なんか15年一回も話した事ないはずなんじゃが…どういう風の吹き回しじゃ?
何かよからぬ事でも考えておるのか?
「ず~るい~ず~るい~僕も立派な領地ほ~し~い~」
床にゴロゴロしてジタバタと子供の癇癪の様に暴れておる…
なんたるクソガキじゃ…
いや、クソガキじゃったわ
「お主…15年前に儂が領地をやるって言ったら面倒臭いからイラネ…と抜かしよったじゃろうがい!」
「へ?そうだっけ~?僕覚えてな~い」
こ…このクソガキ…!
今さら言うても遅いわっ!
こやつに与えようとした領地…もうファイアライゼン領に吸収させたわい!
「まぁいいや~そうだったなら仕方ないね~」
「で…クソガキ、用件はなんじゃ?」
こやつのペースに合わせるとストレスが溜まるからさっさと研究で引きこもってほしいのじゃ
「ぇ?何もないよ~?ただ、くそジジイがまだ生きてるのか確かめに来ただけ~」
「こんの…クソガキっ!はよぅ帰れぇ帰れぇ!」
本当に…儂の所に来る者達はどうしてこうも変わり者ばかりなのじゃ…
「はいは~い、またねクソジジイ!」
「ふんっ!」
やっと帰ってくれるのか!
全くこのクソガキは…
「あっ最後に一つだけ…」
「なんじゃ!?」
オリヴィエのガキが振り返った。
なんじゃろうか…不安じゃ
「魔術師団本部は来季からアイリス領に移転しまーす」
その言葉に胃痛が酷くなり…しばらく苦しんだ後
ため息をついた。
最後にとんでもない事を言いよった…
本当に儂…死んでまうぞ?




