聖女やめまーす!
私はあの報告書の確認の為に…夜中のイグラシア大陸、メリダス教国に転移しました
実は2日ぶりに来ました
多忙につき、聖女様の稼業は休業していました
それで…先ほど確認していた報告書の中でも、緊急性が高い物がこれでした
[各国の首都で反聖女運動が発生、過激化し、死人まで多発。至急団長に通達せよ。]
待ち構えてたかのようにメリダス様が部屋のベッドで座っていました
「…来ると思いました」
「…どうしたのですか?」
メリダス様の顔色が良くない
何かとてつもなく嫌な予感がしました
この予感は大体当たります…
「各国で反聖女派のデモ隊が暴動を起こしています…その各国のデモ隊がここ…我がメリダス教国に向かって進行を続けている様なのです」
うわぁ…また厄介なことになりましたね
各国…つまりは4ヵ国からデモ隊が?
「…理由は?」
私の問いかけに、テーブルに置いてあった紙を取り出し、メリダス様が読み上げ始めます
「大聖女…アイリス・ローゼンハイムは聖女ではなく悪女である、アイリスはラインツ王国第7騎士団団長の職についていながら、メリダス教国の聖女として活動し…神聖なる国教の教えに反し、ラインツ王国では殺戮や暴行等の悪逆非道を行うのに対して、イグラシア大陸では聖女として偽装した振る舞いを行う大悪女である。我々、民衆の聖女に対する崇敬を大いに侮辱したとして私刑によって断罪を行う為に立ち上がれ同士よ」
なるほど
要約すると
矛盾する職業に就いていて、アイドルとしてのイメージを壊されたから自分達でそのアイドルを殺しましょう かしら?
はぁ~…これだから聖女崇拝の国は大変なのよ…
私だったね…好きで聖女やってる訳じゃないんです!
後任の聖女様が見つからないから、続けてるんだってっ!
光属性が適正で白魔術師の才があり、スキル【聖女】関連を持ち、殿方とは未経験で聖女に相応しい果敢さを持つ人?
そんなの他に誰がいるのよ…
光属性の適正でもはや絶望的なのよ、それで【聖女】関連のスキル?いません!
いくら何度も聖女召喚の儀を行っても、私が出現しますからね!
前任のフレリア様って超極希少な人材でしたよ
、あの国王が手込めにしなければ…
あの方は亡命し、ラインツ王国のどこかの教会でシスターをしていらっしゃるそうです。
孤児の面倒を見てるのだとか
あ~…そっか
そっかそっか…
うん!決めた決めた!
もう疲れました!
聖女やめます!やめまーす!
自分達の理想を勝手に押し付けて、勝手に裏切られたって逆上する人達に付き合ってられません
2回目ですよ!?2回目!!
「メリダス様、私…聖女やめます!」
「ええええ!?」
なぜ私がこんな言われにゃならんのよ
すがってる訳じゃない
辞めたくて仕方なかった
ギリギリでいつも踏み留まっていたのは、孤児院の子供達の嬉しそうな顔を見て励みになってただけだもの
それって…[聖女]じゃなくてもできるじゃないですか
私には侯爵令嬢…第7騎士団団長という肩書が残ってるもの
それに私、そこまで心が綺麗じゃないですもの
血生臭く、殺人も厭わない、自己利益を求め…合理的で自尊心高めの女です
もし…彼らの言う聖女像が心が綺麗な人こそが
聖女というなら
庭師のベクターが聖女になればいいのです
私は色々と考えを整理しながら、メリダス様にすべて話しました
…メリダス様は悟った様子で、すんなりと受け入れてくれました
「アイリス・ローゼンハイム、あなたは聖女として立派に責務を果たしました。弱き者を助け、生への道しるべを導き…傷ついた者達を救いました。あなたを聖女の任を解きます。どうか、あなたの将来が幸せな日々でありますように」
「…ありがたき幸せ」
僅か8ヶ月の聖女としての任期を今…終えました
これで…
もう街でもみくちゃにされながら癒しを与える事も
スラム街でセクハラをされる事も
孤児院で子供達に希望を語る事も
聖女としては終わりです
「…メリダス様、私の名前で追放処分のお触れを出してください」
「アイリスさん…それは…」
「早く!でないと…あなた達も危険ですから!」
二度とメリダス教団に足を踏み入れられなくなる
そんなこと分かっています
でも、もうここに来る必要ないですもの
メリダス様が部屋を出ていったのを確認して…私は遺書を書きます
[この地に住まう人々へ、あなた達の勝手な偶像がどんな物か分かりませんし興味もありません。私はあなた達の希望になろうと努力しました。でも、あなた達が求める聖女様になれなかった事に責任を取り、要求に応え、騎士として…自らの剣で償う事にしました…場所はあの惨劇のあった森です。世界が平和でありますように]
よし…走り書きだから余計にリアルさ増して信憑性が高くなるでしょう
私はもう1枚、手紙で[メリダス様、オルグス正教でお会いしましょう]
と書いた後、転移魔法を使いました
転移先は…エリアシュの森
私は…手首を刃物で切り、血が思いっきり噴き出すのを見て
すぐさまヒールを使いました
…足りませんね
私は何度も自傷してはヒールを繰り返し…
「ふぅ…これでよしっ」
一人分の血液を撒き散らしてやりました!
収納魔法で聖女用のドレスを取り出し…
ビリビリに引き裂いた後
血の匂いで集まった熊型の魔物を素手で捕まえて、その口に無理やりドレスをぶちこみました
「グオ!!?」
ネジっネジっネジっ…
「よしっ」
熊型の魔物は私が手を離すと、脅えて逃げ馳せて行きました
最後の仕上げに…使い古しの剣を血だらけの場所にドスっと突き刺し
転移魔法で執務室に帰って行きました
もう腹立ったから勢いで聖女辞めてやりました!
こういうときは勢いです!
後先は…その時考えます!
アイリス・ローゼンハイムは勢いが持ち味の女なのですから!!




