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後日談3~決意

翌週…昼下がりの休日


「あぶぅ」

「あ~~~」


あら~可愛いですねぇ~


はぁ…'尊い'とはこういう事の為に言うのですね!


私はフェリクスとルドを見守りながら…小さな…小さなお手手を掴みます


こんなにも…こんなにも小さなお手手…


可愛い…食べてしまいたい可愛さです…


「フェリクスは大きくなったら何になるんですか~?あら~…騎士団に入るのですね~!ルドは何になりますか~?ん~?あら~!ルドは侯爵家を公爵にするために頑張るのですね~!」


私はフェリクスとルドの将来の夢を聞いて喜びます


…当然ですが、赤ちゃん達からお返事はありません


「アイリス、この子達の将来を勝手に決めるものではないですよ…全く、騎士団はお休みだと言いますのに、妙齢の女性が家にいるなど…何を考えているんですか?」


…お母様がお説教モードに入りそうなので、子供達がいるお部屋からそそくさと離脱しました


良いじゃないですか…弟達のお世話をするお休みも!


庭ではお父様がハヤトを、エリックお兄様がルカを抱っこしてお散歩していました


和みますねぇ~


私はお部屋から逃げてしまったので、弟たちを名残惜しく感じつつ


…ロビーに飾ってある花瓶のお花を眺めていました


今日の挿し花は大きな薔薇と小さな向日葵が上手く飾ってある美しい仕上がりでした


庭師のベクターが週に一度、ロビーのお花を選定して飾るのです


ベクターは丸々と太った巨漢で…庭師というよりも衛兵みたいな見た目ですが、とても温厚で涙脆い人です


どれだけかと言いますと

私が挿し花を褒めたら泣き…


お花が満開になると泣き…


平民の子供がお屋敷に来て、私達ローゼンハイム侯爵家宛にお礼のお手紙を手渡されて泣き…


定年で退職する料理長とお別れの送別会で大泣き…


私がイグラシア大王国に転移させられ件で行方不明の時に泣き…お屋敷に訪れて元気なのを確認できた時に大号泣…


お母様のご懐妊でも大号泣…


お母様の安産ではついに泣き崩れたとか…


と…とにかく心が綺麗な人なんですベクターは


ローゼンハイム侯爵家(使用人含め)で一番の愛されキャラなんです


人の好き嫌いもなく、誰にでも優しく素直で本当にいい方です!


…それはとにかく


あれから、クレイお兄様は騎士団の休暇制度を使って部屋に閉じ籠ったきりです


多分、ベクターに話したら大泣きしてくれます


…じゃなくて!!


クレイお兄様の性格上…


ずっと閉じ籠る訳ありません


だって律儀に休暇申請までして休んでるんですから!


きっとすぐ元気になって、また憎まれ口を言ってくるに違いありませんもの


私は意気込みながら、庭で散歩しているお父様達に声をかけに行きます


「お父様~お兄様~!…お母様がお説教モードに入って捕まりそうだったので逃げてきました」


「ガハハ…そうか、ならアイリスも散歩をするか?」


「はい!」


私はお父様からハヤトをもらい受けて3人でゆっくりとローゼンハイム侯爵家のお庭を歩きます


ハヤトとルカにこの素晴らしいバラ園を優しく教えながらゆっくりと…


まだ弟たちは目も耳も発達していませんが、私が教えたかったのです


しばらくして、後ろからお母様の声が聞こえました


「おい」


「はい?おかあさ…」


声の主は、クレイお兄様でした


クレイお兄様が女体化した時に引き継いだ…ミルクティーブロンドの長い髪の毛をバッサリと切り…


騎士服を着込んだクレイお兄様


「お…おい…メーヴィス譲りの髪の毛をお前…」


「ほぉ~…」


お父様は驚き、エリックお兄様は感心したかの様に見つめ


後ろに控えていた乳母のパトリシアさんは目を真ん丸に見開いていました


「お…お兄様!?」


「ふん…女になって身体が鈍った…ちょっと付き合え」


顎を指すクレイお兄様


私は自分の服装を見て言います


「今はワンピースなので、着替えてから行きますね」


多分、お兄様が指定した場所は屋敷内の訓練所  


普段はイブが使っている場所ですが、今日は特別にいいでしょう


「あぁ」


肩で風を切る様に歩いて行くクレイお兄様


私はその後ろ姿を見て嬉しくなります


…やっぱりお兄様はお兄様ですね


「…なら、僕が審判をしようか」


エリックお兄様は乳母のパトリシアさんにルカを渡し、クレイお兄様の後ろを歩いて行きます


「…ということでお父様、ハヤトをお願いしますね」


私もお父様にハヤトを優しく渡し…


私はお屋敷の自室に転移しました


ピンク色のワンピースを脱いで…騎士服に着替えました


途中、サラが入ってきて「アイリス様!?なんでお申し付けてくれないのですか!?勝手にお着替えなされて…」


と怒られましたが…時間が惜しいのです!


すぐに着替え終えたら転移して…


訓練所に来ました


既にお兄様達が話し込んでいました


「お待たせしました」


と私が声をかけると、クレイお兄様は訓練用の剣を手渡して来ます


「あぁ、まずは素体の状態から確認したい」


「かしこま!」


私は剣を受けとると、ゆっくりと距離をあけて…構えます


「戦闘…開始!」


エリックお兄様の声で、クレイお兄様が攻めてきます


「うおおおっ!」


右からの横薙ぎから…左の返し


やはり、元々の時よりはスピードがかなり落ちていましたが


それでも剣筋は鋭く…剣術が上手い!


私はその攻撃を剣で受け…押し返します


「せあっ!」


「うおっ!」


私の押し返しの一撃を上手く避け…


お兄様は再び剣を握り直します


「つええなぁ…おいっ!」


お兄様は再び攻めてきました


今度は足を狙った下段振り


私はまたそれを剣で払い…その勢いを使った振り返し


キィン キィン と金属同士が擦れる音を立て…お互いに膠着した状態が続きました


しかし…お兄様の大振りの横薙ぎを避け、私は剣を突き立てます


「そこまでっ!」


お兄様は座り込み…


私はふぅ~…と一息吐きました


「かぁ~…やっぱつええ…」


「どこが鈍ってるんですか…」


私は抗議の意を唱えます


相変わらず手強いクレイお兄様、この間と大差ない気がします


「あん?女になって速さが落ちた」


確かに速さは落ちましたが…しなやかさが増して連撃の隙が減っていました


身体の使い方が上手くなってます…


「それで…クレイ、これからどうするのかい?」


「あ?んー…普通に【スキル】の消し方を見つけて元に戻る!…元に戻るまでの間は~…へへっ…女らしくしてやるよ」


とクレイお兄様


エリックお兄様は苦笑いして呆れていました


クレイお兄様はすかさず立ち上がり…


「…エリックお兄様~」


クレイお兄様はわざとらしく…両手を合わせ、語尾をやたらと上ずってエリックお兄様の名前を呼びました



…むかっ!


「今私の真似しましたねっ!」


「うおっ!聖女様がお怒りだ~!」


「神罰を下しますよっ!」


「もう下ったつーのっ!」


私は腹を立て、逃げ回るクレイお兄様を追いかけ回しました


その光景を大笑いしながら見続けるエリックお兄様


ローゼンハイム家の日常がそこにありました

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