精神世界にあった…異境と闇
子供達が…子供達が無事に生まれたみたいです…!
精神世界で私は一人…涙でぐちゃぐちゃになりながら…座り込んでしまいました
子供達もお母様も無事で元気みたいです!
はぁ…よかった…
私は安堵して出てしまった涙を拭って…この精神世界から出るように…目を瞑り…意識を集中します…
ですが…何か引っ掛かる気がします
私は目を見開き…目を凝らしてよく見つめます
…よく見ると、今まで見えていなかったのですが
大きな扉を見つけました
それは…野原の背景と溶け込んでいながら…何か不安を感じました
私は立ち上がり…その扉の方に歩きます
かなり遠く見えた距離だったのですが…歩いてすぐにその扉の前に到着しました。
これは…一体なんでしょうか?
沸き上がる探求心に私は思わずドアノブを捻り…中を確認します
ドアの先は真っ暗で…とてもじめじめとした場所に感じました
私は中を確認しようと身体を覗かせます
…
その部屋の真ん中にうっすらと日光が照らされて中にある何かがよく見えました
お母様…いいえ、私に似た女の子が黒い鎖で両手両足を縛られ…無気力な表情で…ただ一点を見つめ続けていました
私は…お母様の見ては行けない側面を見てしまった気がして…ショックで身体が動きませんでした…
恐い…
でも見なければならないような気がする…
ここは…見てはならない
私の心拍数が上昇しながらも…ただ、その子を見つめていました
あぁ…恐いのに体が動かない…
早く閉じなけらば…早く目を背けなければ…
でも体が行くことを効きません…
縛られた少女は私の気配に気がつき…私の方に頭を向けます
それでも…まだ体が動けない…
やめて…みないで…こっちを向かないで!
少女は…ついに私の方に目を向けました
……死んだ目をしながら…この世の全てを怨み…復讐心を孕んだ…憎悪に満ちた顔…でした
その顔を見た瞬間…私の立つ足元が崩れ去り…私は落下していきました。
…………………………
私は思わず上体を起こして、周囲を確かめます
ここは…お母様の私室でした
「アイリス!無事に…無事に生まれたわよ!!全員無事…!!」
意識が完全に戻った私に抱きつくフィリア様
私は立ち上がって、お母様の方に目を向けます
「アイリス…弟たちよ」
お母様はかなり疲弊していましたが…生まれたばかりの赤ちゃんを一人…抱いていました
フィリア様が私の肩を叩き…指差しました
その先には、6個並んだ籠ベッドの上で
体をもぞもぞと動かしながら眠る6人の赤ちゃん達…
「お母様…よくご無事で…私…嬉しいです…」
また泣いてしまいました
フィリア様が私を抱きしめ…頭を撫でてくれます
…そのフィリア様もつぅー…と涙を流していました
「あれだけの子の出産を…魔力暴走もなく、母子ともに健康に生まれたのは…神の奇跡に違いない…」
主治医のルイ様がやりきった…という表情をしながら、息を吐いた
看護していただいた侍女さん達も涙を流し…互いに労いあっていました
「しかし【絶対治癒】のスキルには驚かされました…あのスキルさえなければ、出産の痛みも酷くはならなかったでしょうが…何が一番驚かされたというと…ローゼンハイム夫人の身体は出産した後とは思えない…いいや、出産経験のない女性の身体に戻った事です…さすがに…腰を抜かしましたよ」
「スキルは便利だけど…不便でもあるわね…はぁ…痛かったし…疲れたわ…本当に…何年ぶりかしら…数えたくないけど…この私を苦しめたのよ?私の可愛い…子供達?」
お母様は、抱いている赤ちゃんの顔を優しく見つめながら喋ります
そのお母様のお姿がとても素敵で思わず見惚れる美しさでした
「お母様…お疲れ様でした…ぐすっ…本当に…頑張りましたね…ぐすっ…7つ子の可愛い弟…妹達を生んでいただいてありがとうございます!」
私はお母様に情けないですが…泣きながら、労いの言葉をかけます
「アイリス…あなたもよく頑張りましたね、私の魔力を制御して…精神世界の子供達を励ましてくれました」
お母様の一言に、周囲は驚きの表情を浮かべていました
精神世界に入る事…生まれる前の赤ちゃんとお話しした事は、全員が驚く事でした
魔力結合で起きる現象ですが、精神世界が本当に存在するのか…出産前の赤ちゃんに会うことなどあり得ない話だったからです
「でも…見たんですね?あの部屋を…」
あの部屋…
精神世界で最後に見た、あの場所でしょう
まるで呪われた様なおぞましい場所でした…
できれば、もう二度と見たくない…色々な経験を積んだはずなのに…あの場所だけは恐くて仕方ありませんでした
「お母様…あの場所はなんですか?」
「…おちついてからお話しします、アイリス…これから忙しくなりますよ?」
お母様の事…謎が深まるばかりでした
ただ、お母様は話す気でいらっしゃいますので…その時が来るまで胸に秘めておきます
「メーヴィス!!アイリス!!無事か!!??」
お父様が無事に出産を終えたお母様の私室に飛び込んで来ました
…私はお母様と魔力結合をして精神世界にいただけなので、無事も何も…何もないんですけどね
「あなた…頑張りましたよ、あなたと私の子…みんな元気ですよ?」
「メーヴィス…メーヴィス…良かった…良かったぁ…」
お父様が…お父様が大泣きしました…
私もまた涙腺が…
お父様に釣られてしまい…また私も泣いてしまいました…
あの件で涙が引いたのに……もう…お父様…
「母上!よくぞ無事で…!こ…この子達が…俺達の弟…妹ですか!!おおおぉ…小さい…!あぁ…すげえ…よく頑張りました…母上…ズズッ…」
クレイお兄様もお母様と子供達を見て…それから裾腕で涙を拭って隠しています…
「母上…おめでとうございます、やはり母上は本当にすごいお方です、弟たちも元気で何よりです!…本当にありがとうございました」
エリックお兄様に至っては、もう涙を隠さず…泣きながらお母様の事を労っていました
「…アイリスが泣くのは許可しますけど…どうしてむさ苦しい男達の涙を見せつけられないといけないのですか?情けない…恥ずしいので私の見えないところでギャーギャー泣いてください」
……お母様はどんな状況でもお母様でした
子供の誕生に感動している私達に容赦なく…ズバッと切れ切れの言葉を浴びせてきます
「メ…メーヴィス…お前なぁ…儂は気が気じゃなかったんだぞ…!お前と…子供が心配で…心配で…!うぅ…ぐぐぅ…っ」
お父様…泣くか怒るかどちらかにしてください
お父様が怒り泣きしているのを見たら…急に自分が冷静になっていくのを自覚してきました
…なんか、スンってなりました…スンって
やはりお母様に似てるからでしょうか?
「冗談です…あなた…愛してるわ、私の心配をしてくれてありがとう」
最後の最後に見せたお母様のデレに私とお父様はハートを射貫かれてしまいました…
お母様…それは卑怯です…




