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お母様の精神世界

お母様や子供の心配で気が気じゃない日々を過ごし…いよいよ出産が近くなった夏の日


私は騎士団団長や大聖女の職務を全うして忙しない日々を送りながらも、毎日…お屋敷に帰ってお母様のお話相手になっていました


お兄様達もちゃんとお屋敷に帰ってはお母様の心配をしていて


出産日が間近になっただけにファイアライゼン公爵家の方々がお屋敷に常駐しお母様を見守っていただいています


フェアライン大陸でも前代未聞の7つ子の出産に、ラインツ王国は万全な体制になるように国王陛下が指示していただきました


ローゼンハイム侯爵夫人が7つ子の出産をするという御触れが世界中に広まり…


安産願った貴族や平民の方々が毎日、オルグス正教とメリダス教団の神殿や教会で祈りを捧げていただいています


…ただ


一つ、個人的に腹立たしい事がありまして


誰が言い出したのかは分かりませんが…この私、アイリス・ローゼンハイムが7つ子を産む…という大誤報が出回った事件がありました



特に聖女崇拝の強いメリダス教国を筆頭としたイグラシア大陸では、彼らの象徴…かつ、アイドルである聖女が妊娠して出産目前という誤報は暴動が発生したりデモが発生したり…大騒ぎになってしまいました


仕方ないので私がイグラシア大陸の各国に赴き

「私ではなく、私のお母様が7つ子を宿し…出産するのです!」という演説をして事なきを得ました


私史上最大級の屈辱で辱しめでした


…くっころ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



…それにしても…彼らの聖女愛に私…びっくりして怖くなりました


なんとかして急ぎ後任を探したい所存です…


そんなこんなで…今日、いよいよ出産日になったのですが


お父様がずっと落ち着きがなく…そわそわしててお母様の私室の前からサロンまでうろうろしてましたし


エリックお兄様は気を紛らわす為に…庭で無心なって木刀を素振りし


クレイお兄様は眉間に皺を寄せ…両目を閉じて腕組みをしてサロンに座って待ち…


私はお母様の私室で、ベッドで眠るお母様の手を掴んで見守っています


「お母様…」


「大丈夫よアイリス」


ファイアライゼン公爵家の次期当主であらせられます、ルイ様がお母様の主治医として立ち会い


フィリア様が痛みを緩和する薬を用意して待機していただき…ファイアライゼン公爵家の侍女さん達が看護をし


神殿では…オルグスさんが昨晩から夜通し…安産の祈りを捧げ続けています


「…っ!」


お母様が身体を跳ね上げ…顔を曇らせました


いよいよ…お産が始まりました


「…始まったぞ!」

「「「はい!ルイ様!!!!」」」


ファイアライゼン家の皆様が慌て始めました


お母様は深呼吸して…息を整えていました


お母様のお腹は凄く膨れ上がっていて…凄く辛そうです


「母体の魔力が強すぎる…フィリア!魔力結合し…魔力を抑えろ!」


「はい!お兄様!!」


溢れ出てしまう魔力を抑えなければ…暴発し、多大な被害を与えてしまいます


そうなる前に互いの魔力を結合してコントロールをしないといけません


出産の力みによって…暴発の威力は増してしまうからです


「お兄様!メーヴィス様の魔力が私より高く…結合できません…!」


「ちい…フィリアでも無理か…!父上の見込みは甘かったか!…オリヴィエ様を立ち会わせるべきだった…!」


莫大な量の魔力を持つ人を相手に、魔力が少ない人が魔力結合をするのは不可能です


「私が魔力結合します!私ならお母様と保有量は一緒のはずです!」


「アイリス嬢!…頼みます!フィリア!アイリス嬢のコントロールをガイドしろ!薬草はターニャに!フランチェスカは補助!」


「「「「はい!」」」」


私は目を瞑り…意識を集中して…握っているお母様の手から魔力の流れを探ります


暗闇の中で白い霧のかかった様な空間…


「いい?私が魔力結合をするための意識空間まで補助するわ」


フィリア様の声が天から聞こえてきます


まだ目を閉じているような…よくわからない感触です…

 


「進むの…奥に…奥に行くように意識して」 


言われた通り、奥に進むように意識を集中します


霧がかった場所を歩むように視界が進みます…



すると…突然に私は身体全体が動ける様に感じました


魔力結合は初めてやってみたのですが…案外簡単なんですね


どうやら、お母様の精神世界に入ったみたいです


先程の真っ暗で霧がかった場所じゃなく…真っ白な空に百合の花が咲いた野原広がる空間でした。


本当に上真っ白で綺麗…


私の視界には自分の手足が映り…確信しました


このまま動けるみたいです


ちょっとだけ…私は前に歩いてみます


綺麗な百合の野原を歩いて進む


お母様の精神世界って意外とピュアなのかもしれません


過去話を聞いた後でしたから…もっと黒くて血塗られた空間なのかなと思っていたのですけど…


精神世界はその人が思い浮かべる理想的な空間に疑似化…


オリヴィエさんにそう教えていただきました


辺りを見ながら…私が歩みを続けると、


6人の子供達と…一人だけ異質な格好をした男性がいました


黒く…斬新な服を着た…16歳ほどの男性


その周りには…皆10歳ほどの子供達が遊んでいました


あぁ…この子達は…これから生まれる子供…なの

ですね


「こんにちは」


私は話したいって思いが勝り…思わず声をかけてしまいました


「「「「こんにちはー!」」」」


子供達は私を見つめて嬉しそうに声を合わせて返事してくれます


男性は私の存在を確認した後…「こんにちは…」とお返事をいただきました


「ねぇねぇ…おねえちゃんはママの子?」


「ママ?」


私の足元に来て…小さな女の子が問いかけます


やはり…髪の毛も…目も、幼いながら、お母様にそっくりな子でした


「うん、お姉ちゃんはね…ママの子よ?お姉ちゃんは君達よりも先にお外の世界にいる…ママの子」


「おそとからきたの!?すごーい!ママのせかいにこられるのは…かみさまと…ママのとくべつなひとと…これからママのこになるひとだけなんだよー?」


お口が上手く回っていないのですが…それもまた可愛くて…私は思わず微笑んでしまいます


色濃い血縁の者が魔力結合をすると、鮮明に精神世界に入り込む事ができるとオリヴィエさんは言っていて、半信半疑だったのですが…本当だったのですね


こうして、これから家族になる子供達とお会いできるなんて…素敵ですね


「ねーねー!ママはどんなひとー?こわい?」


小さなエリックお兄様にそっくりな男の子がお母様の人物像を質問してきます


この子達も…不安なんでしょうね


「ううん…ママはやさしくて綺麗で…強い人ですよ?あなた達をすごく愛してくれるの」


「ほんとに!?じゃあ…パパはー?」


お母様のお腹の中にまだいるので繋がっているのでしょう…魔力も精神世界も


そう思うと…なんだか私もここが懐かしい気持ちになってきました


昔…ここにいた気がします


「パパもやさしくて…つよくて…かっこいいのよ?…ママもパパも…お兄様達もやさしくて…つよいわ」


「おにーちゃんもいるんだ!」


6人の子供達は私のお話を夢中に聞いていました


不安…期待…恐怖…色々な感情が子供達から伝わってきます


私は恐怖を感じている子供の傍に行ってしゃがみ込んで聞きます


「こわいの?」


「うん…こわい」


この子は…お父様に似た女の子でした


両ひざを抱えてうつむき…外の世界が恐いのでしょうか


私はその子を抱きしめて…聞きます


「どうしてこわいの?」


「ママと…パパに…すてららるかもって…それがこわい…」


「ママもパパもそんな人じゃないわ…お姉ちゃんもいるから…大丈夫よ?こわくないよ…こわいものはお姉ちゃんが倒してあげるから」


「わかった…やくそく」


「えぇ…やくそくします」


私はその子から離れると、5人の子供達が来て、その子の手を引いて走って行きました


私は立ちが上がり…見守りながら、奇抜な服の男性に声をかけました


「あなたも…これから私の家族になる子?」


「多分…いや…きっと!」


私よりも身長が高い…黒服に黒髪の男の人


すごく…異質だけど、私の弟になると思うと


やっぱり嬉しい気持ちになりますね!


「そう…私がお姉ちゃんよ?よろしくね」


男性の頭を撫でて…嬉しくてにこりと微笑みました


男性は顔を赤らめながら、必死に返事をします


「俺…!神様からここに行けって言われて来ました!転生者です!今は前世の格好のままなんですけど…前世の名前!オオミヤハヤトって言います!…あ!ハヤトが名前でオオミヤが名字です!」


「テンセシャー?…ごめんね…よく分からないわ…お姉ちゃん失格ね」


テンセシャーって何でしょうか…


職業?レンジャーみたいな物なのかしら?


ごめんなさい…分かりません…


「お姉さんは悪くないですよ!俺が意味わかんねえ事言ったから!」


彼の足元がみるみると薄く…消えて行きます


…それは彼がもうじき…このお母様の精神世界から出て、私達のいる外界に生を受ける事した


「また…話せますか?」


「うん、家族になるから…いつでもお話しできるわよ?…また後でね」


私は彼が消滅するのを見届けました


他の子供達も薄くなり始めています


あの子達と一緒に暮らす事を思うと…楽しみで、感動もします


これから…これからいっぱい仲良くしましょうね


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