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メーヴィスの過去

私とオルグスさんは真っ先にお母様がいらっしゃるローゼンハイム家のお屋敷に転移しました


フェルクリスにお母様のお腹の子供が7つ子であるとお話すると、いつも冷静なフェルクリスもさすがに驚いていました


フェルクリスは私の話を聞いた後、大慌てでイブの構成員に指示を出し…元老院に転移して行きました


「…早速だけど、君の母上にお会いできないかな?」


「はい!」


私達は屋敷の中を進み、お母様の私室のドアをノックしました


…お母様の声で入室の許可が降り、中に入りました


…明らかに家族会議を行った時よりも…凄くお腹が大きくなっています


「はじめましてローゼンハイム夫人、僕はオルグス正教…教皇のオルグスでございます」


オルグスさんはベッドに横になっているお母様に、しゃがみ込んで視線を合わせ…ご挨拶を行いました


「あら…はじめまして教皇オルグス様…こんな体勢で失礼致します、ローゼンハイム家夫人の…メーヴィスですわ!…メイとお呼びください」


お母様…


とても心配で見ていて辛いです


顔色もよくありませんし…不安で心苦しいです…


「メイ様…私は神の天命によるお伺い致しました」


「わざわざ、お越しいただき嬉しゅうございます!」


あぁ…お母様…とてもつらそうなのに無理に笑顔をお見せしてて…


どうしましょう本当に…


「…アイリスは下がってちょうだい、教皇様がお伺いに来る程のお話、とても重要な事なのでしょ?…あなたは適当に魔物でも狩ってなさい!…アンジュ、その子を追い払いなさい」


「はい奥様!…お嬢様、行きましょうか」


お母様付きの侍女…アンジュさんに急かされ、私はお母様の私室から追い出されてしまいました


アンジュは私をサロンに案内すると、お茶とお菓子を出してくれました


「お嬢様、奥様はお嬢様よりもとは言えませんが…お強いお方です!ご心配ございません」


「そ…そうなのですか?…お母様はお強いのですか?」


そういえば…アンジュはお母様が小さい頃から付き従う侍女さんでしたね


…でも心配です


7つ子なんて…出産は生死の危険もあると聞きました


母が亡くなったり…子供が亡くなったり…


とても…それが恐くて仕方ありません…


「…奥様の過去をお話するのは禁じられておりますが…アイリス様だけにお話させていただきます」


アンジュは私を安心させようとしてくれているのでしょう…


お母様の昔についてお話してくれます


「奥様と初めてお会いしましたのは…奥様が3歳の頃でした…私は初めて奥様付きの侍女として任命され、初めてお会いした頃…奥様は僅か3歳でありながら…既に魔法を自由に扱うことができました」


「えぇ!!?そんな事聞いたことがありませんよ!?」


そういえば…お母様の事、全然知りません


…なので、アンジュのお話は凄く興味を惹かれます


まさかお母様がそれほど魔法が使えるなんて知りませんでした…!


「当時…ブラッドリー伯爵令嬢であられました奥様は、その類い稀なる才能を成長させ…僅か10歳で魔法騎士団…今で言う魔術師団に入隊しました」


「じゅ…10歳で魔術師団…?」


お母様…凄すぎませんか!?


魔法や魔力は、15歳でやっと完全な状態に成長します


なので、基本的に低年齢の子供は魔力が不完全な状態ですので魔術師団に入団することは出来ないはずです


ですが、もし10歳でも大人よりも膨大な魔力を持っていたら…魔術師団に入団できるかもしれません…


「当時は混戦の世…大なり小なり戦争が絶えない時代の中…僅か10歳ながら奥様は幾多の戦いに身を置き…幾多の戦いで敵を圧倒的に殲滅して行きました」


ひ…ひぃ…


お母様…本当は恐いお方だったんですね…


10歳の頃から戦争に出てバンバン活躍していたんですね…


「アイリス様の2つなは幾つございますか?」


「え?私はー…ええっと…5つ?」


[血染め姫]… [殺戮令嬢]… [神兵]… [怪物]?


あと…最近ですと[大聖女]…


うぅ…なんか年頃の女性についた2つ名じゃありませんね…全部不穏な言葉ですね…


一番いいのが[大聖女]ですもの


できれば[可愛い]とか[乙女]

とか可愛いのが欲しかったです…


「奥様の2つ名は10個ございます」


「えぇ!!?2つ名が10個!?どれだけ功績と勲章を持ってるんですか!?」


「…[土葬屋][爆裂女][氷結女][水責め女][殺戮令嬢][血染め姫][天国案内人][戦勝請負人][吐息殺人鬼][毒巻き女]…これら全て奥様に付けられた2つ名でございます…[殺戮令嬢]と[血染め姫]はアイリス様が継承なさったのでしたね?…とにかく、酷いものもありますが…本当に付けられたものでございます」


まさか[血染め姫]と[殺戮令嬢]が世襲制だとは知りませんでした…


最初に2つ名を付けた人も…まさか娘が継承するなんて夢にも思わなかったでしょうね…


私だってあの2つ名は不服なんですけど…最初に付けられたお母様はもっと不服だったでしょう…


「…[血染め姫]と[殺戮令嬢]の2つ名が付けられた時…奥様は大変喜んでおられましたよ」


「酷い2つ名なのに!?」


まさかお母様は喜ぶなんて…ということは、私が世襲した時もお母様は…


「えぇ…アイリス様が継承なされたことを、たいっへん喜んでおられましたよ」


「やっぱり!?」

どれだけ好きなんですか…その2つ名…


私は誰かに世襲して欲しいですよ!


「そして…奥様が15の頃、運命の出会いがございました」


う 運命の出会い…?

私は思わず ゴクリ…と喉を鳴らしてしまいました


お父様がいよいよご登場なさるのですね!


「そうです…ローゼンハイム侯爵現当主の…ご主人様でございます!」


やっぱり!

もしお父様じゃなかったら卒倒してしまいますもの!


…よかったぁ


「ご主人様もその当時、既に【剣聖】として名を馳せたお方でした…2つ名は[神兵]…またアイリス様が継承なさった2つ名でございますね」


そうだったんですね!


…知りませんでした![神兵]はお父様の2つ名だったのですね!


この[神兵]の2つ名は誇りに思わないといけませんね!


「戦場で全身を血染めさせながらも華やかな舞の様に戦う奥様を見たご主人様は…その姿に一目惚れしてしまいました…そして一目惚れしたご主人様は毎日毎日…奥様を口説き…プレゼントを渡し…いく日もいく日も奥様に付きまとっては口説き続けていました」


へ…へぇ~…


お…お父様はストーカーだったのですね…


もっとロマンチックな出会いだと思っていたのですが…へぇ~…


「最初こそ氷の様に冷たかった奥様は、次第にご主人様のアプローチに心の氷はみるみる溶かされ…2年の歳月をかけて…やっと婚約しました」


「お父様らしいと言えばらしいですね…」


お父様…しつこい所ありますもの、お母様と軽い喧嘩をして、お父様をお屋敷に入れなかった時も24時間ずっとお母様に愛を叫び続けていましたものね…


おかげで、ローゼンハイム家が夫婦円満で有名になってしまいましたもの…


「そして…奥様は全ての過去を捨て…ローゼンハイム侯爵夫人として、社交界や女主人として生きる道をお選びになられたのです!…奥様の経歴は全て闇に葬られ、今残る資料はローゼンハイム侯爵夫人としての奥様の経歴のみ…当時を知る方々には、国王陛下によって箝口令が敷かれていらっしゃいます」


なるほど…

それで、お母様の過去を知る人は話したがらないのですね…


お話大好きなファイアライゼン公爵夫人もお母様の過去についてははぐらかされて来ましたし…


お母様の選んだ事を尊重している人達は素敵な方々ですね…

 

「…そして新婚の初夜…ついにご主人様と奥様はベッドで)「待って待って待ってアンジュ!!!そそそそそのお話はいいからっ!もうわかったから!」


「…では、旦那様と奥様が致す度、屋敷が地震の様に震え、壁材のレンガが大量に割れた事はご存知でしたか?」


いいから!そんなの聞きたくないからっ!


ってあの地震…それが原因だったの!?


…じゃなくて!もういいのよ!そういったお話は!!


「…まだまだお話したいのですが、またの機会に致しましょう…お嬢様、ご安心なさいましたか?」


また続きを聞かせる気なのこの人は…


話させるとお兄様から私の誕生まで絶対語り出すのでしょうね…


「気は紛れましたけど…やっぱりお母様は心配です」


7つ子ですもの…お母様のお身体も、これから生まれる子供達も心配です


せめてみんなが無事でしたらいいのですが…


「…あのご主人様と奥様ですよ?常人ではない方々ですよ?エリック様とクレイ様…アイリス様をお生みになられた方々ですよ?大丈夫ですわ」


「…アンジュの私達に対する評価が気になりますけど、教皇様もいらっしゃいますし…大丈夫…きっと…きっと…」


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