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チェンジリング・ヒロインゲーム ~私のハッピーエンドを目指して~  作者: えとう蜜夏


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二十六

「そんな、まだ、パーティは始まったばかりですよ」


「そうです。アーシア様にルーク様、折角ご用意したお茶やお菓子を召し上がってからでも」


 ユリアン様とクリス様にそう懇願されて、私とルークお兄様とユリアン様の三人で用意された席についた。真新しい白いテーブルクロスがかかっていて野外だし爽やかなんだけど私を真ん中に挟んで座られたのでとても気まずい雰囲気。


 他の皆様もそれぞれ用意されたベンチに座って歓談を続けている。親の監視が無いので皆様気楽な感じなの。夜会とかの雰囲気とは違う。


「それしても、何があったのだ、アーシア?」


 突然のお兄様の問いに私はほへっと奇妙な声を上げそうになった。


「何とは? 特にアーシアには何も……」


 ユリアン様が代わりに問い返される。それをふんと鼻で笑うお兄様。


「ユリアン君、君には訊ねてはいないのだか?」


 ルークお兄様はスッと手を伸ばされて私の頭を撫でられた。そこには薄紅色の薔薇の花弁が指に摘ままれていた。


「それは?」


 ユリアン様の不思議そうな声。私はギクリとした。それはだって、あの薔薇園で付いたに違いない。


「これは、レイン子爵家の有名な薔薇園のものだろう」


 ルークお兄様はくいっとそちらに顎を僅かに向けられる。私はお兄様には嘘を吐くことなど出来ず黙って頷いた。ユリアン様が尚も不思議そうにお兄様にお訊ねになる。


「でも、それが何か?」


「確かに、だが、そこには誰といたのかな? ユリアン君の様子から彼ではないね?」


「ルーク様、それは一体どういう?」


 ルークお兄様とユリアン様が不穏な空気を醸し出していた。私は事実だけを話すことにした。


「クリス様とお話をしようとご一緒しておりました」


「アーシア、いつの間に? だが、君は私の隣でいたじゃないか……」


「ユリアン、君には失望したよ。妹を頼むと言っておいたのに」


 益々二人の仲は険悪に。これはあれよね。私のために争わないでっ。ひょっとして、私って、モテてるの? 片方は身内だけど。前世ではそんな経験も無……。あっ、えっ、ごほん、こほん。


「嫌ですわ。お兄様。別にそんな大したことは無く、クリス様からは……」


 実は大した内容だった。クリス様にはお家再興のターゲットにするとか、何とか言われてました。あれ、本気かしら?


 ユリアン様が真っ直ぐにお兄様をご覧になって口を開かれた。


「ルーク様、クリスには婚約者がおります。そういった心配は無用かと」


「はあ?!」


 私はユリアン様の言葉にはしたなくも言葉を漏らせてしまった。ああっ、扇子で慌てて口元を隠したわ。便利ね。扇子って。だけどお兄様はぴくりとこめかみを動かされたわ。ユリアン様は聞こえなかったのか私を見つめるだけでした。流石、貴公子達様ね。


「そう、あちらに見えるアデリーヌ嬢だ。確かに伯爵家のご令嬢だったと」


 ユリアン様が指し示したのは先程お話した彼女だったのだ。


「えっ、彼女が!?」


「どうした。アーシア、知り合いか?」


 ルークお兄様の問いに頷いた。


「学園のお友達です。そんな、でも、クリス様は私をターゲットにすると……」


「何の話だ?」


「子爵家が苦しいから、裕福な女性を花嫁にすると、今日のもそれで女性を集められたと私にお話になられて……。そして私をそのために……」


 言葉を濁したけれどお二人は悟られたようだった。


「そんな、クリスはアーシアを私の婚約者と知っていた筈だが、何という……」


 お兄様はふんとユリアン様の言葉に鼻を鳴らした。


「だから、貴様になぞアーシアを託したのは間違いだったな」


「私、彼女に確かめてきますわ」


「アーシア、私も行こう」


 気まずい雰囲気になってるので、私はそう言って立ち上がった。


「止めなさい。アーシア。無駄だ。それに……」


 ルークお兄様の言葉にも私の足は止まらず、私はアデリーヌ嬢の側に。彼女は一人で佇んでいた。私を見ると微かに微笑みを浮かべてくれた。


「ご存知になったようですわね? この会の目的と私のことに……」


 アデリーヌ様はそれでも、微笑みを浮かべていた。


「仕方がないのです。クリス様はもっと財産の有る方を望まれているのです」


「だが、今もアデリーヌ嬢の家からかなりな援助をしてもらってる筈……」


 ユリアン様がそう付け加えた。ユリアン様とクリス様は仲が宜しいようなのね。


 でも、婚約者の状態で既に援助してもらってるなんて、そこまで、酷いの? それにどういうことなのよ。クリス様!


「何て酷いの! 許せないわ」


「ふふ、でも、私のようなものは、そうでないとクリス様のような素敵な方と婚約とかは出来ませんでしたわ」


 アデリーヌ嬢が静かに微笑んでいた。それは諦めのような……。


「そんな!?」


 私にターゲットを変えたと言ったクリス様のことは流石に彼女に言えなかった。だけどそれも何だか、分かっている様子なのよ。


「こうなったら、クリス様に断然抗議いたしますわ!」


「アーシア!」


「アーシア様」


 ずんずんとクリス様の方に向かって歩いていこうとしたがユリアン様に止められた。


「何を考えてるか、分かる気がするけど止めよう。アーシア。君が口を挟むことはない。後日私からクリスに話しておくよ」


「だって!」


「そうですわ。アーシア様のお手を煩わすつもりはありません。それにいつものことですし、皆さんご存知ですわ」


 そう言われたので私はそれ以上は何も言えず。とぼとぼと人の少ない垣根の方に歩いて行って気を紛らわそうとした。ユリアン様も一緒についてくる。


「ユリアン様も一緒でなくても良いですわ。私も少し考えたいし、ユリアン様も引く手あまたでしょうから。現にお兄様も……」


 私達が離れるとルークお兄様のところにはご令嬢方が集まっていた。ユリアン様はやや苦笑なさった。


「……君が昔、散々追い散らしたから、私のところには誰も来ないな。だからね。私はアーシアのものだし、アーシアは私のものなんだよ」


 そう柔らかい笑みとともにそんなことを仰ってそっと私の手をとったの。私はまじまじとユリアン様を見返した。ええ、顔が熱いです。これは決して日差しのせいではありません。

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