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チェンジリング・ヒロインゲーム ~私のハッピーエンドを目指して~  作者: えとう蜜夏


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二十四

 そして、さらに日は過ぎて、ガーデンパーティ当日、家まで迎えに来てくれたユリアン様に対して、玄関先での挨拶がされていた。それでねぇ。二人の間では何故かバチバチと何かが飛んでいたのよ。


「(大事な)アーシアを頼んだよ(貴様になぞ託すのはやはり心配だ)」


「勿論、心得えております。ルークお義兄さん」


「……(貴様に)兄呼ばわりをされる謂れは、まだ無いようだが? (いや、これからもだ)」


 隣で見ていると何だか二人の内心がだだ漏れのような気がするのは気のせいだろうか。


 私は強張りきった笑みのままユリアン様を促して馬車に押し込むように乗り込んだ。


 それより、私は気になるのよ。クリス様の性別が。早く行って確かめたいの。



 子爵家の中でも名門であるレイン家のガーデンパーティは盛況だった。正式な社交イベントではないもののデビューしている名門子息や令嬢方も参加して華やかな雰囲気を醸し出していた。


 流石にガブちゃんは参加してないみたい。まあ、お兄様ルートとか言ってたし。お兄様はここにこられないからね。それよりも確認したいのは……。


 ユリアン様にエスコートされて子爵家の中庭に着くとそこは素晴らしい花々の咲く庭だった。クリス様は私達に気がつくと直ぐに挨拶にいらした。


「ユリアン様、アーシア様。我が家のパーティにいらして頂いて光栄です」


 そういうとクリス様は洗練された優雅な礼をなさったのでこちらも礼を返した。


「本日はお招きいただいて……」


 今日の私は令嬢のドレス姿だから淑女の礼をしても全然おかしくないわ。今日はガーデンパーティ用に動きやすいデザインだけどね。


 でも、やっぱりコルセットが何気に苦しい! キツイ! 特に今日は侍女に思いっきり締め上げられた。うう、ここのところずっと男装していたから、どうにも苦しい。


 今日のドレスは白を基調としたものでフリルとレースを贅沢に使った逸品。お母さまとお兄様御用達のお店よ。リボンも素敵で可憐な出来映え。鏡で見ると我ながら芸術的な作品に仕上がっています。うちの使用人の技術は卓越しているわ。素晴らしい出来栄えよね! でも今日の頭はドリル巻きなのよ。小ドリルを沢山盛った頭になってるのよ。重いというか痛いというか……。 


 そんな完璧な令嬢姿なのにクリス様からの視線は痛いくらいだったの。――ええ? 今日の私は完璧な令嬢姿の筈ですよ? 男装ではございません。服装コードには何ら問題は無いと思われます。ひょっとして、もしや、クリス様は男性の方がお好みだったのかしら? それは別の問題ですわね。


「……どうぞ、お楽しみください。今日は様々な花で趣向を凝らせております」


 クリス様はふいと私から視線を逸らせると他の方々の挨拶に向かった。


 でも私達もユリアン様の知り合いの方々に囲まれて挨拶することに忙しく、私はクリス様の性別を確かめるチャンスはこなかったのよ。


 やっと一通り挨拶を終えると私はクリス様を探した。そして、クリス様を見つけるとじっとその姿を観察してみた。客人の中を確認するように歩くクリス様は女性のような線の細さの美貌の持ち主で肩までのふわふわのストロベリーブロンドの髪は光を受けて一層煌いている。クリス様もそこだけスポットライトが当たってるような美形。一体、男性か女性かどちらなのかしらね。どちらでも十分美しいから良いんだけど。クリス様の性別次第ではここが異世界なのか乙女ゲームの『ゆるハー』の中かどうか分かるのよね。


 私はやや伏せた視線の先でクリス様の動向を窺い続けた。


「……あの、アーシア様もこちらのパーティに?」


 そんな風にご令嬢のお一人から声がかかった。それは学園で一緒に学んでいる伯爵家の方だった。


「あら、ロンバール伯爵家のアデリーヌ様。あなたもいらしてたのですね」


 彼女はおずおずと肯いた。地味で大人しい女性がこの煌びやかなパーティーに出るのはやや不似合いだった。学園でもそっと後ろ方にいる大人しい女性で私とは積極的にお話はしたことが無いけれどその人柄の良さは雰囲気で分かる。


「ライル伯爵様のユリアン様とご一緒なのですね。ご婚約者ですものね」


 アデリーヌ様は微かに安堵のような微笑みを浮かべていらした。


「ええ……」


 ええっ? お兄様は認めてないけれど他の方はご存じなの? 一体?


「ふふっ。お小さい頃、ユリアン様と仲良くされているのを遠くから拝見しておりましたわ」


 あ、そうなの。あれをご存じなのね……。アーシアの黒歴史をご存知な方がいらした。


「とても仲良くて微笑ましかったですわ」


 アデリーヌ様の話される様子は嫌味とかそういう雰囲気ではなく、本気で思っているようだった。ユリアン様も他の方に話しかけられていて私達の会話は聞こえていないようだった。


 アデリーヌ様のややそばかすの目立つ素朴な顔に穏やかな微笑みを浮かべていた。だから私はにこりとして微笑み返した。


「そうでしたの。お恥ずかしいわ。でも、子どもの頃ですから……」


 私はそう言って言葉を濁した。アデリーヌ様は私との会話の間にちらちらと周囲に視線を送っている。そして……。少し寂しそうな笑みを浮かべた。私は気になってその視線の先を追うと……。そこには……。ユリアン様、ではなくてクリス様がいたのよ。どういうこと? 私が不思議そうにアデリーヌ様を見遣ると慌てたようにしてアデリーヌ様は挨拶をすると離れて行ってしまった。


 私が再びクリス様を探すとクリス様はゆっくりと人々の中を外れて何処かに向かっているようだった。私も自然な感じでその後を追った。

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