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新たに加わる懐かしい顔

ヴァーヴァラ、ミニ図鑑、おさらい編


【九尾】


安部隆史の身体に封印された魔獣。

大量の陰の魔力を保持し、悪魔の一種ともされている。

それ故に日本では代々、烏山一族がそれを封印してきたが、ある時封印が外れてしまい、その時居合わせた隆史に封印された。

ちなみに、最後に九尾を封印していた烏山氏は死に際に隆史へ魂の一部を埋め込んだお陰で肉体を再生した。


そして、隆史が全てを消滅させる『龍の息吹(ラスター・カノン)』が賞出来るのは紛れもなく、九尾のお陰である。

当初、隆史は魔力拒否反応により苦しんでいたが、九尾の完全封印にてそれを制した。

だが、この世界で死んだ隆史は逃げる際に九尾を解放した。

故に実質、この世界では九尾は二体存在する事となる。

 数日後、船は中国の漁港に着いた。

 辺りは暗い。真夜中だ。

 そんな中、わずかなランプ灯りだけで積み込み作業が行われていた。

 そして、僕と麻里亞はその脇で聖悪魔教会の者と話をしていた。

「麻里亞様、カノン様の命で保存の利く食材や航海の道具と十分な銃器を用意致しました。」

 男が一人出てきて、麻里亞に紙の束を渡した。

「了解です。一つ聞きますが、この場所は―――。」

「日本軍には割れていません。」

「ならば良いです。」

「―――それで、この方は?」

 男はチラッと僕を一瞥して言うと、麻里亞は微笑んで言った。

「彼こそが我が軍の希望、安部隆史様です。」

「な……!?しかし、隆史様はお亡くなりになったと―――。」

「確かです。確認はきっちりと取りました。」

「分かりました。この件は皆に?」

「伝えても構いません。」

「はっ!おっと、それで増員した船員の件ですが―――。」

「ああ、これですね。」

 麻里亞は紙の一枚を取り出して頷いた。

 確かにそれには増員された船員の名前が書いてあった。

「ええ、それなんですが……一人、奇妙なのがおりまして―――。」

「はい?」

「そいつは本部から増員されたのですが、本人曰く『香りを追ってきました。こっちにいれば会えそうな気がします。』と宣っていまして。」

「はぁ。」

 どんな生物だ。それは。

「それで、今回、増員される際、そいつは熱心に自分を入れてくれ、と言いまして。何でも『こっちに香りがしますから。』と。」

「で、連れてきたんですか?」

「ええ、ヴァンパイアですので力にはなると思いますので。」

 ヴァンパイア?

 何人か心当たりがあるが……誰だ?

「おおい、来い。」

 すると、男は背後に合図した。

 漁港の闇からぬっと誰かが現れた。

「隆史様!」

 それは闇の中を駆けて僕に抱きついた。

「え……?」

 僕は戸惑いながら少しそれと抱擁を交わし、そして引き離して顔を確認した。


「メイ!」


 僕は思わず声を上げてしまった。

「はい!隆史様のために!」

 僕が夜会にいた時にせっせと給仕をしてくれていたヴァンパイアが目の前で昔と変わらないあどけなさで微笑むと敬礼した。

「しかし、何で―――?」

「私もグリゼルダ様の指南を受けて身体を鍛えていたんです。そのグリゼルダ様もお亡くなりになられたのですが……とにかく、隆史様が生きていらして良かったです!」

 メイはニコニコと笑って僕の手を握っていた。

「うーん……まぁ、船で出航してからいろいろ説明するとして―――。」

 僕はメイと握手を済ませると、彼女の肩を掴んで麻里亞をチラッと見た。

 麻里亞は頷くと、男と再度向かい合った。

「日本軍の守り人であった炎の身柄をお願い致します。どうするかはお任せします。」

「分かりました。そろそろ積荷が積み込めたはずですので、早々に出航下さい。巡回をかいくぐっていますが、もう見つかってもおかしくはありません。」

「はい。では、隆史様。」

「分かった。ありがとうございます。何から何まで。」

 僕は男を向いて礼をすると、彼はいえいえ、と笑みを見せた。

「何かあればまた連絡を。」

「はい。」


 積荷を積み終えるのを確認すると、海月たちは迅速に船を港から出した。

 衛兵達に気取られることなく、我々は再び航海に出たのである。


「―――そう、ですか。」

 そして、僕の部屋ではメイに事のあらましを話していた。

「何だか複雑ですね……。」

「まぁ、あまり気にしなくて良いよ。一部の人を除いては僕が生きていたことにするつもりだから。」

 僕が笑顔を繕って言うと、メイも笑顔で頷いた。

「それで確認したいんだけど、僕が死んだ時に生き残った有力な味方は?」

「あ、はい。まず戦乱で生き残ったのはジェニアス様、ルナー様、タイアンル様、ヴァリス様のみでございます。警護として残された隆史様の孫の朱鷺(とき)様が今、聖悪魔教会を取り仕切っております。」

「他には?」

「他に……参加した者は死んでしまいました。心当たりは―――。」

「あ。」

 そこで不意に雪月花が声を上げた。

 一応、彼女も船室でいつもの猫の姿でいたのだ。

「そう言えば、エルフ達は戦乱に参加していませんよ。」

「え?」

「ロキさんはこれ以上は御免だ、と言いまして。李姫さんがたいそう参加したがったと聞いていますが、ラッキーさんが止めたとか何とか。」

「ふむ……なるほど。」

 大和幻想郷の面子は割と生きているのか―――。

 ならば、まずは聖悪魔教会に移ってそこで大和幻想郷の霊獣族やスピナ族、エルフ達に増援を頼めば……うまく行くか?

 しかし、過去の自分はその案件はすでに思いついているはずだ。

「おう、隆史さんよ。」

 と、海月が船室に入ってきて言った。

「航路について相談があるんだが。」

「分かった。」

 僕は頷いて立ち上がると、メイもスッと立ち上がった。

「待っていても良いんだぞ。」

「私は隆史様の従者でありたいのです。武術も心得ております。」

 チラッと僕はメイを一瞥した。

 さっきは暗くてよく分からなかったが、昔と違って少し大人びた顔立ちを持っている。

 だが、幼さも残っており、僕の機嫌を伺うように上目遣いで僕を見ていた。

 ハッとするような女の色気、というのだろうか、そのような物も時々感じさせる。

「ふむ。」

 僕は頷くと、スッと右手を差し出した。

「ならば、忠誠を。」

 すると、メイは途端に嬉しそうな笑みを浮かべた。

 そして、跪くと、僕の右手の甲に唇を押し当てた。

 

「永久に隆史様に忠誠を。」

「良き働きを期待する。」


 その様子を雪月花はむすっとした顔で見ていたのだった。

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