船の上での激闘
ヴァーヴァラ、ミニ図鑑、おさらい編
【青龍眼】
青龍が隆史に授けた魔力を見通す眼。
特に風に関してはよく見え、風の流れさえも見える。
「隆史、私達が相手をしようか?」
蕾がスッと僕の前に出ながら言った。
「いや、女の子に危険な目に遭わせる気はないよ。下がっていて。」
僕は微笑みを見せると、僕は前に進み出た。
そして、炎と対峙する。
「剣を取れ。」
「やだね。」
「何故だ。安部隆史はかなりの剣の腕前と聞いた。」
「剣じゃなくて刀だ。だが、その刀もない。」
「だったらそのまま死ね!」
炎は剣を滑らかな動作で抜くと、僕に突きつけてきた。
それを僕は半身避ける事でそれをかわすと、拳を放った。
だが、それはタンッと地を蹴って飛び退くことでかわされてしまった。
「やるな。」
「貴様こそ。」
僕らは睨め合う。
先に動いたのは炎だった。
地を蹴ると同時に剣をフェンシングの要領で突き出してくる。
僕はそれを見切ると、江崎流剣術の回転斬りつけの要領でかわすと裏拳を彼女の頭に放った。
それはゼルダ直伝の江崎流拳法《衝》であったが―――。
ズンッ!
腹に衝撃が走って僕はひっくり返った。
何とか受け身を取って衝撃を殺しながら倒れるが、急所を突かれたのか、痺れて動けない。
「がはっがはっ!」
激しく咳き込む中、炎は僕の前に来た。
「甘い。江崎流剣術を使うという事はもう知っている。」
「―――き、貴様……知っているのか?」
「当たり前だ。全軍が知っていることだ。さぁ……死ね、亡霊。」
炎は剣を振りかぶり―――。
次の瞬間、それは消えた。
炎は何もない手を見、そして振り返った。
「雑魚が、何のようだ?」
炎の視線の先には可憐な姉妹が立っていた。
「隆史には手を出させません!」
「そうよそうよ!」
咲と蕾だ。
二人とも槍を携えて構えを取っている。
「ふん、相手にする価値もないが、特別に闘ってやる。来い。」
炎はそう言うと同時に腰からもう一振りの剣を抜いた。
「参ります!」
咲は槍を鋭く突き出した。
それを炎は少し脇に飛んで避けると、強く地面を踏み込んで咲に斬りかかる。
咲は槍を引き戻して槍の柄で受けるが、次の瞬間、彼女の身体はふわりと浮かんでいた。
足払い。端から炎はそれが狙いだったらしい。
そして、炎は体勢を崩した咲に剣を振り下ろした。
ガキンッ。
凄まじい音と共に剣が逸れる。
「させないんだからっ!」
今度は蕾だ。
槍の切っ先に炎が宿っている。術が使えるらしい。
「ふん。」
だが、次の瞬間、炎の剣からそれの二倍ほどの炎が吹き出ていた。
蕾は怯んだようだが、それに臆することなく、彼女は突きを放った。
素早い突きに炎は思わず剣でそれを受け止めた。
その瞬間、一瞬の隙が生じる。
「そこ!」
鋭く倒れていた咲が槍を投げた。
それは真っ直ぐ、炎の身体に吸い込まれていった……ように見えた。
「小癪なぁ!」
次の瞬間、彼女の身体から圧倒的な魔力が吹き出た。
それによって咲の放った槍は弾かれる。
「火炎斬!」
そして、炎は凄まじい火炎を放ちながら蕾に迫った。
「くっ!」
蕾は咄嗟に槍で応戦するが、如何せん、槍は近距離線に向かない。
すぐに船の縁まで追いつめられてしまった。
「くうぅ……。」
蕾は槍で炎の剣を受け止めるが、膂力で徐々に上体が海に迫り出されていく。
「よく足掻いたな。だが、もう終わりだ。」
炎は冷たくそう言うと、ぐいっと剣を突き出して蕾を海に突き落とした。
訳ではない。てか。
僕がそうさせない!
バキンッ!
「な!?」
炎は自分の手元にあった剣が砕け散るのを見て驚愕した。
そして、視線は宙を舞う僕に移る。
「蕾、ありがとう。」
僕は着地しながら蕾を傀儡糸で引き寄せて助けていた。
「お陰で腹の傷を癒す事が出来た。」
魔力は少しずつ使う分には支障はない。
故に、魔力を徐々に使って完璧に腹を治していたのだ。
そして、蕾の窮地の瞬間に地を蹴って宙を舞い、炎の剣を江崎流拳法《衝》を応用した衝撃波蹴りでそれを破壊したのだった。
「―――しぶといですね。」
「これでも僕はヴァーヴァラなんでね。」
「―――良いでしょう。そんな異端者の使徒は偽善であり、キリスト教、そしてイギリス正教会こそが真の聖なる者の使徒であると証明してみせましょう!」
そう言うと同時に炎はさらに魔力を高めた。
「喰らうが良い、奈落の異物さえ焼き払う聖なる炎によって。」
そう前置きすると、炎は剣を振りかぶった。
「龍炎斬!」
こりゃ、まずいか?
僕はひくひくと顔を引きつらせながら蕾を庇いながら少し後退する。
青龍眼で読み取ると―――。
げっ、ありゃ、圧縮された魔力で一気に爆ぜるタイプだ。
斬らせなければ被害は小さいが、斬られたら最後、この船と一緒に海の藻屑だ。
だったら、斬らせない!
「ぬんっ!」
「覇ッ!」
パシィッ!
僕は振り下ろされた剣を決死の覚悟で白刃取りした。
「な!?そんな馬鹿な!」
「隆史!」
炎の驚愕の声と蕾の悲鳴。
それを聞きながら僕はぐっと剣を挟んで押し返そうとした。
炎が荒れ狂い、肌を焼くがそんなのは構っていられない。僕は守るだけだ。
「負けん!」
炎は負けじと剣を押す。
くうぅ……こんな時……あいつらがいたら―――!
『御主人様……。』
え?僕は耳を疑った。
今……。
『私はおります。一声お呼び下さい。』
確かに、彼女の声だ。
僕は力を振り絞って彼女の声を呼んだ。
「―――!」
次の瞬間、剣の魔力が爆ぜた。




